2024/02/27/火

診療報酬改定

2024年度診療報酬改定(概要編)

執筆・取締役 小松大介

はじめに

2024年度診療報酬改定に伴う答申が厚生労働省から公表されました。
今回は2024年度診療報酬改定の概要について解説します。

診療報酬改定の改定率推移

2024年の診療報酬改定では、診療報酬本体が+0.88%、薬価等が▲1%、全体では▲0.12%となりました。各科の改定率は、医科が+0.52%、歯科が▲0.57%、調剤が+0.16%となっています。

(※1)うち、※2~4を除く改定分 +0.46%
   各科改定率  医科 +0.52%   歯科 +0.57%   調剤 +0.16%
   40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等
   従事する者の賃上げに資する措置分(+0.28%程度)を含む。
(※2) うち、看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種(上記※1を除く)について、
   令和6年度にベア+2.5%、令和7年度にベア+2.0%を実施していくための特例的な
   対応 +0.61%
(※3) うち、入院時の食費基準額の引き上げ(1食当たり30円)の対応
   (うち、患者負担については、原則、1食当たり30円、低所得者については、
   所得区分等に応じて10~20円) +0.06%
(※4) うち、生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化 ▲0.25% 

2024年度診療報酬改定の基本方針の概要

今回の2024年度診療報酬改定では以下4点の基本方針を掲げて改定検討がなされています。

(1)現下の雇用情勢を踏まえた人材確保・働き方改革等の推進
(2)ポスト2025地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXの推進
(3)安心・安全で質の高い医療の推進
(4)効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
参考:厚労省概要資料

特に今回の改定で影響が大きいと思われるポイントには、以下があるかと思います。

・医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組み
・医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進
・患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価
・生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理及び重症化予防の取り組み推進

2024年度診療報酬改定のポイント

共通

●賃上げ
賃上げについては、40歳未満の医師・事務向けに初再診料や入院基本料が引き上げられ、看護師等のその他医療職向けに新規加算(ベースアップ評価料)が設定されました。

●医療DX 
医療DXの実現に向けて電子カルテ情報共有サービス(実現は来年度)の活用による情報連携や各種ICTの活用による看護等の生産性向上が推し進められています。

連携
連携においては、介護保険や障がい者サービス等報酬との一体改定として、医療と介護・施設の連携が強く打ち出されています。介護保健施設は、都道府県との協定締結医療機関と連携して感染対策を推し進め、中小病院等に協力医療機関を依頼し、入院・往診対応強化を求める事となりました。

DPC

DPCでは、小規模病院が今後は参入できない定量的な指標(データ件数 月90件以上)が示されました。機能評価係数Ⅱから保険診療指数が削除、効率性指数は患者構成を踏まえた平均在院日数で評価するため、一部、大きく変化する施設があることが見込まれます。
>>詳細は「2024年度診療報酬改定(急性期入院・DPC編)」

急性期

ICUや急性期病床(7:1)については、今まで以上に厳格化が進む一方で、新たに地域包括医療病棟入院料が設定され、病床転換を加速する方向が強く示される改定となりました。
>>詳細は「2024年度診療報酬改定(急性期入院・DPC編)」

回復期

地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟では、より機能強化をする方向での微修正が行われました。
>>詳細は「2024年度診療報酬改定(回復期・地域包括ケア病棟編)」

慢性期

療養型病棟はこれまでの医療区分✕ADL区分の9区分が細分化され、処置区分を加えて30区分となり、軽度の患者が多かった施設には厳しい改定となりました。

外来

外来医療では、特殊疾患療養管理料から糖尿病、脂質異常症、高血圧が外され、新設の生活習慣病管理料(Ⅱ)に一本化されることとなり、減収となる可能性が高いです。
>>詳細は「2024年度診療報酬改定(外来編)」

在宅

在宅医療は、看取り等の少ない軽度患者に対する施設での頻回訪問を手掛けている医療機関や、かかりつけ等ではない一見さんの緊急往診等に厳しい改定となりました。また在支病や在支診が、一般の夜間対応しない医療機関を支援することがより強く求められるようになっています。
>>詳細は「2024年度診療報酬改定(在宅医療編)」

精神科

精神科は、項目こそ少ないですが、地域包括ケアを手掛けるための専門病棟(精神科地域包括ケア病棟)が新設された事が大きいと思われます。また虐待や不適切な養育が疑われる状況への対応が強化されました。

おわりに

2024年度診療報酬改定は、これまでの流れを踏まえつつ、あらゆる分野に踏み込んだ改定となりました。大きなテーマは、賃上げ、医療DX推進、医療介護連携強化、急性期と慢性期病棟再編、生活習慣病に関する管理料の削減と対応強化、在宅医療の一部締め付けと見ています。本体部分プラス改定となりましたが、個別項目では賃上げは最低でも法定福利費分は持ち出しとなり、病棟の施設基準は厳格化され、新設の連携関係の点数は単体ではなかなか採算を取りづらい物が多く、厳しい改定という印象です。

しかし、それでも各所にわたって2025年以降の医療機関経営の方向性が示された改定となっているため、個別項目だけでなく背景にある意図や今後の政策方針を理解しつつ対応を進めていただけたらと思います。


執筆者

小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。
主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他