2024/02/27/火

診療報酬改定

2024年度診療報酬改定(外来編)

執筆・越路/監修・取締役 小松大介マネージャー

はじめに

2024年度診療報酬改定に伴う答申が厚生労働省から公表されました。
今回は、その中の「外来」について改定のポイントを解説します。

概要

今回の診療報酬改定は全体ではプラス改定での発表となりましたが、外来診療においては各種減算の改定ポイントが見られています。改定ポイントのうち「生活習慣病関連報酬への大幅てこ入れ」、「地域包括診療料・加算の見直し(かかりつけ医機能の評価)」、「小児診療評価の見直し」の3点についてご案内いたします。

テーマ1:生活習慣病関連報酬への大幅てこ入れ

これまでは生活習慣病の診療報酬として「特定疾患療養管理料」を算定することが中心でしたが、主要疾病が対象外となり「生活習慣病管理料」への誘導が行われます。医療機関側の業務負担増&点数減という影響が大きい見込みです。
●特定疾患療養管理料の対象疾患から、「糖尿病」「脂質異常症」「高血圧」が外されます。
●代わりに「生活習慣病管理料(Ⅱ)」が新設されましたが、外来管理加算が併算不可のため実質減算となるのと、療養計画書の作成や患者同意の手間も発生し生産性に影響しないオペレーションや患者説明の仕方などの準備が求められます。

<算定比較例>
改定前:
再診料+外来管理加算+特定疾患療養管理料+処方箋料(通常)+特定疾患処方管理加算(28日以上)
=73点+52点+225点+68点+66点=484

改定後:
再診料+生活習慣病管理料(Ⅱ)+処方箋料(通常)
=75点+333点+60点=468

テーマ2:地域包括診療料・加算の見直し(かかりつけ医機能の評価)


かかりつけ医のケアマネ等との具体的な地域連携や、認知症への取組状況が算定要件に盛り込まれ、地域包括診療料(加算)の診療報酬が微増します。
●算定要件に、介護支援専門員及び相談支援員との相談に応じること等が追加されます。
●担当医のサービス担当者会議や地域ケア会議への参加実績などが施設基準に追加されます。
●担当医が認知症に係る適切な研修を修了していることが望ましいこと、市区町村が実施する認知症施策に協力している実績があることが、地域包括診療料等の要件に追加されます。

地域包括診療加算1:28点(←25点)
地域包括診療加算2:21点(←18点)
認知症地域包括診療加算1:38点(←35点)
認知症地域包括診療加算2:31点(←28点)

テーマ3:小児診療評価の見直し


小児に関しては継続的な診療推進の観点、また抗菌薬適正使用の観点から小児科外来の診療報酬が見直されます(微増)。

●発達障害を疑う児の診察等を行うこと、不適切な養育にも繋がりうる育児不安等の相談に乗ることが「小児かかりつけ診療料」の要件に追加されます。
小児かかりつけ診療料1:初診時652点(←641点)、再診時458点(←448点)
小児かかりつけ診療料2:初診時641点(←630点)、再診時447点(←437点)
※いずれも処方箋交付する場合

●小児抗菌薬適正使用支援加算の対象疾患に、急性中耳炎と急性副鼻腔炎が追加されます。また新型コロナウイルスの検査の取扱いの変更及び処方等に係る評価体系の見直しを踏まえ、「小児科外来診療料」が見直されます。
小児科外来診療料:初診時604点(←599点)、再診時410点(←406点)
※処方箋交付する場合

おわりに

今回の診療報酬改定では、テーマ1でご説明した生活習慣病に関しての診療報酬が大半の内科クリニックにおいて大きな影響があると見込まれます。生活習慣病管理料を算定するための療養計画書作成と患者様同意(=業務量の増加と患者様への丁寧な説明)を診療の中に織り込んでいく方策を、具体的にかつスピーディに考えていく必要があるでしょう。


監修者

小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。
主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他