2024/02/28/水

診療報酬改定

2024年度診療報酬改定(在宅医療編)

執筆・椎野/監修・取締役 小松大介

はじめに

2024年度診療報酬改定に伴う答申が厚生労働省から公表されました。
今回はその中の「在宅医療」について、5つのテーマに分けて解説します。

テーマ1:介護保険施設(介護医療院・老健・特養)への往診体制強化 

(1)「介護保険施設の協力医療機関になることが望ましい」が在支診・在支病の要件に追加(個別改定項目:Ⅱ-2③)。

(2)介護保険施設の協力医療機関となって往診を行った場合、介護保険施設等連携往診加算200点が新設(個別改定項目:Ⅱ-8①)。

テーマ2:不適切事例の抑制・適正化

(1)軽症者を多く診ている場合の在医総管・施設総管の減算:直近3月の訪問診療が2,100回を超える場合、単一建物診療患者数10人以上の区分で60/100に減算(個別改定項目:Ⅱ-8⑨)。

(2)人数の多い施設への在医総管・施設総管の減算:「10人以上」の区分が「10-19人」、「20-49人」、「50人以上」に細分化。「20-49人」、「50人以上」の区分はこれまでより低い点数が設定(個別改定項目:Ⅱ-8⑨)。

(3)在支診・在支病が頻回訪問を行っている場合の訪問診療料の減算:重症者を除く患者の直近3月の平均訪問回数が12を超える場合、同一患者への同月5回目以降の訪問診療は50/100に減算(個別改定項目:Ⅱ-8⑫)。

(4)頻回訪問加算:初回は800点(+200点)、2回目以降の月は300点(-300点)とダウン(個別改定項目:Ⅱ-8⑬)。

(5)かかりつけ患者以外への往診の評価:緊急往診加算、夜間・休日往診加算、深夜加算について、「訪問診療患者」、「連携医療機関の訪問診療患者」、「継続的に診療をしている外来患者」、「連携している介護保険施設入所者」、「それ以外の患者」で区分け。「それ以外の患者」の夜間・休日往診加算、深夜加算が減算(個別改定項目:Ⅱ-8③)。

テーマ3:実際に行われている在宅医療に合わせた評価基準の修正

(1)包括的支援加算の要件の変更(個別改定項目:Ⅱ-8⑪)
•対象患者の範囲について要介護度2以上➡3以上、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱb以上からⅢ以上に見直し。
•対象患者に、「麻薬の投薬を受けている状態」を追加。

(2)非がん患者への麻薬による疼痛管理:「在宅悪性腫瘍等患者指導管理料」が「在宅麻薬等注射指導管理料」に名称変更、対象患者にALS、筋ジストロフィー、心不全、呼吸器疾患の末期患者が追加(個別改定項目:Ⅱ-8⑥)。

(3)在宅ターミナルケア加算・看取り加算の要件緩和:退院時共同指導料を実施していれば、訪問診療開始前に往診で看取り対応となった場合でも、在宅ターミナルケア加算、看取り加算の算定が可能に(個別改定項目:Ⅱ-8⑧)。

(4)在宅での栄養指導の推進:在支診・在支病の要件に、訪問栄養食事指導が可能な体制であることを追加。在支診の場合は自院での採用だけでなく、地域の栄養ケア・ステーションや他院との連携で可(個別改定項目:Ⅱ-8⑩)。

テーマ4:デジタル技術を活用した在宅医療の推進

(1)連携先とICTで情報共有した場合、在宅医療情報連携加算(100点/月)が算定可能(個別改定項目:Ⅱ-8④)。

(2)上記加算を算定している末期がん患者にICTで共有されたACPに関する情報を基に指導を行うと、「在宅がん患者緊急時医療情報連携指導料」(200点/月)が算定可能(個別改定項目:Ⅱ-8⑦)。

テーマ5:在支診・在支病以外の医療機関との24時間連携

(1)在支診以外が24時間の連絡・往診体制を患者毎に整えた場合に算定する在宅療養移行加算について。カンファやICTで情報共有ができていれば在宅療養移行加算2:316点、在宅療養移行加算3:216点が新設(個別改定項目:Ⅱ-8⑤)。

(2)在支診・在支病が、連携する他の在支診・在支病以外の医療機関が訪問診療を提供する患者に対して往診を行った場合に算定する往診時医療情報連携加算:200点が新設、往診料に加算。他の在支診・在支病以外の医療機関と定期カンファレンスやICTで平時からの連携体制を構築していることが要件(個別改定項目:Ⅱ-8②)。

おわりに

今回の診療報酬の改定は、適正化された内容、評価された内容ともに、質を高めるという観点で実態に即したものという印象です。在医総管・施設総管の全体的な減点や単一建物診療患者数の多い区分での減点、包括的支援加算の対象者の絞り込みなどによる減収はありますが、連携先との情報共有、重症患者や終末期患者への対応などを通じて質の向上と増収を目指してください。


監修者

小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。
主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他