2024/02/28/水
診療報酬改定
執筆・椎野/監修・取締役 小松大介
目次
2024年度診療報酬改定に伴う答申が厚生労働省から公表されました。
今回はその中の「訪問看護」において、大きく影響しそうな4つのテーマについて解説します。
(1)<医療保険>多様な働き方を踏まえた評価の拡充(個別改定項目:Ⅰ-5⑤)
・24時間対応体制加算の金額アップ(6,520円:+120円)。
・24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組みの要件(ア又はイを含む2項目以上)を
満たす場合、さらに高い金額を算定(6,800円:+400円)。
ア:夜間対応した翌日の勤務間隔の確保
イ:夜間対応勤務の連続回数2回まで
ウ:夜間対応後の暦日の休日確保
エ:夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫
オ:ICT、AI、IoT等による業務負担軽減
カ:電話担当者への支援体制確保
(2)<医療保険>質の高い在宅医療・訪問看護の確保(個別改定項目:Ⅱ-8⑭)
訪問看護ステーションの管理者は、同一の事業者によって設置された他の事業所、施設等の管理者または従業者としての職務に当たることができる。その場合、その時間帯も、当該ステーションの管理及び指揮命令に生じないこと。兼務する場合、事故発生時等の緊急時に管理者自身が速やかに当該ステーション又はサービス提供現場に駆け付けることのできる体制にする必要がある。
(3)<介護保険>基本報酬 各項目1~7単位増
賃上げを目指して全体的に基本報酬がアップした。
(4)<介護保険>緊急時訪問看護加算:加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)に区分
加算(Ⅰ)は、利用者又は家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できることと、緊急時訪問における看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制の整備が行われていることの両方に適合する場合として新設。
・加算(Ⅰ):ステーションの場合600単位|病院・診療の場合325単位
・加算(Ⅱ):ステーションの場合574単位|病院・診療の場合315単位
(1)<医療保険>運営規定に「虐待の防止のための措置に関する事項」を定めることを義務付け。やむを得ず身体的拘束を行う場合、様態、時間、その際の利用者の心身の状況、理由の記載の義務化(個別改定項目:Ⅱ-8⑮)。
(2)<医療保険>月2回目以降に訪問する場合の訪問看護管理療養費について、療養費1と療養費2に区分け。同一建物居住者の割合が多い場合や、別表7・別表8・精神科訪問看護のGAF尺度の実績が一定水準に満たない場合、評価減(個別改定項目:Ⅱ-8⑯)。
【訪問看護管理療養費1】3,000円(変化なし)
・同一建物居住者7割未満 且つ
・(イ)表第7又は別表第8に該当する患者への訪問看護について相当の実績を有する場合、
又は(ロ)GAF尺度40以下の利用者の数が月5人以上である場合
【訪問看護管理療養費2】2,500円(▲500円)
・同一建物居住者7割以上 又は
・当該割合7割未満で(イ)(ロ)いずれも該当しない場合
(3)<医療保険>機能強化型訪問看護管理療養費1について、「在宅看護等に係る専門の研修を受けた看護師の配置」が要件化(個別改定項目:Ⅱ-8⑯)。
(4)<医療保険>適切な感染管理の下での対応や訪問看護療養費明細書のオンライン請求及び領収証兼明細書の発行を推進する観点から、訪問看護管理療養費(月の初日の訪問)の増点(個別改定項目:Ⅱ-8⑯)。
イ 機能強化型1:12,830円➡13,230円
ロ 機能強化型2:9,800円 ➡10,030円
ハ 機能強化型3:8,470円 ➡8,700円
二 イ~ハ以外:7,440円 ➡7,670円
(5)<介護保険>介護保険サービス全体を通じて、虐待の発生又は再発を防止するための措置が講じられていない場合、基本報酬が減算となる。
高齢者虐待防止措置未実施減算:1/100【新設】
(6)<介護保険>業務継続計画が未策定の場合、基本報酬が減算となる(経過措置期間:令和7年3月31日まで)。
業務継続計画未策定減算:1/100【新設】
(7)<介護保険>緩和ケア、褥瘡ケア若しくは人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師又は特定行為研修を修了した看護師が、指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行った場合に専門管理加算(250単位)を算定できる。
(8)<介護保険>前年度のリハセラピスト(PT、OT、ST)による訪問回数が看護職員の訪問回数を超えている場合、又は緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算のいずれも算定していない場合、リハビリセラピスト訪問時は1回につき8単位減算となる。
(1)<医療保険>居宅同意取得型オンライン資格核に等システムによって診療情報を取得した場合の評価として、訪問看護医療DX情報活用加算(50円)が新設(個別改定項目:Ⅱ-1④)。
(2)<医療保険>(みなし訪看)医師の指示の下、ICTを活用した在宅での看取りに関する研修を受けた医療機関の看護師が情報通信機器を用いて医師の死亡診断を補助した場合、在宅患者訪問看護・指導料の在宅ターミナルケア加算への加算として遠隔死亡診断補助加算(150点)を新設(個別改定項目:Ⅱ-8㉓)。
(3)<介護保険>介護保険でも、遠隔死亡診断補助加算(150単位)が新設。
(1)<医療保険>緊急訪問看護加算、同一月の算定回数に応じて「14日目まで(2,650円)」と「15日目以降(2,000円)」に区分。緊急訪問看護加算を算定する際には、利用者・家族が求めた内容、主治医の指示内容、緊急の指定訪問看護の実施内容を記録することが明確化(個別改定項目:Ⅱ-8⑱)。
(2)<医療保険>退院支援指導加算(1回の時間が90分を超えた場合)、複数回の退院支援指導の合計時間が90分を超える場合も算定可能に(個別改定項目:Ⅱ-8⑲)。
(3)<医療保険>訪問看護基本療養費の乳幼児加算、「超重症児又は準超重症児」、「別表第7に該当」、「別表第8」に該当のいずれかの場合は1,800円[+300円]、それ以外の場合は1,300円[▲200円](個別改定項目:Ⅱ-8⑳)。
(4)<介護保険>初回加算が加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)に区分された。新設された加算(Ⅰ)は病院、診療所から退院した日に初回の指定訪問看護を行った場合に加算する。
初回加算(Ⅰ):退院・退所日に初回の訪問看護→350単位
初回加算(Ⅱ):退院・退所日の翌日以降に初回の訪問看護→300単位
(5)<介護保険>口腔の健康状態を評価し、歯科医療機関及びケアマネージャーに対して評価の結果を情報提供した場合の評価として、口腔連携強化加算(50単位、1月1回)が新設。
(6)<介護保険>医療保険の訪問看護ターミナルケア療養費1にあわせて、ターミナルケア加算が2,000単位から2,500単位に見直し。
訪問看護では、24時間対応体制の確保や働き方改革などの勤務環境の改善に対する評価と、ステーションの機能や利用者の状態に応じた評価が行われました。また、専門管理加算、遠隔死亡診断加算、24時間対応体制加算と緊急時訪問看護加算など、医療保険と介護保険で同内容の評価が整備されています。効率的なサービス提供環境と、利用者ニーズに対応できる体制を整備・維持するためにも、組織体制の強化が重要になるのではないでしょうか。
弊社では診療報酬改定への対応を支援します。もし診療報酬改定に関してお困りごとがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
監修者
小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。
主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他