現場レポート

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2025/08/25/月

医療・ヘルスケア事業の現場から

生活介護事業を中心とした障害者支援施設の支援事例について

【執筆】コンサルタント伊野/【監修】取締役 小松大介

はじめに

障害の種類と障害者数

全国の障害者の総数は現在1160.2万人で、人口の約9.2%に相当します。内訳としては、身体障害者436万人・知的障害者109.4万人・精神障害者614.8万人となっており、障害者数は増加傾向にあります。また、在宅や通所施設で障害福祉サービスを受けている障害者も増加傾向にあります。

【図1:直近の障害者の数】

直近の障害者の数
出所:厚生労働省 社会・援護局 自立支援室 「障害福祉行政の最近の動向(令和6年度診療報酬改定を中心に)」(令和5年9月8日)より

【図2:障害種別推移】

障害種別推移
出所:厚生労働省「身体障害児・者実態調査」(~平成18年)、厚生労働省「生活のしづらさなどに関する調査」 (平成23年~)

>>障害福祉サービスの詳細や障害者支援施設については以下の記事をご覧ください。 https://mediva.co.jp/report/consultant-blog/15511/

近年ニーズが増加傾向にある「生活介護」

障害者は、障害者総合支援法で定められた支援やサポートを行うサービスを受けることができます。サービスは、個々の障害の程度、及び考慮すべき項目(例:社会活動・介護者・居住状況など)に基づいて、個別に支給決定が行われる「障害福祉サービス」と、利用者の状況に応じて柔軟に実施できる「地域生活支援事業」に分けられます。

生活介護とは、常に介護を必要とする人に昼間に入浴・排泄・食事の介護などを行うと共に、創作的活動や生産活動の機会を提供する、障害福祉サービスの1つです。例えば常時介護が必要な利用者の場合は日中活動の生活介護と、住まいの場として施設入所支援を組み合わせて利用もでき、地域生活に移行した場合でも、日中生活介護の利用続行が可能です。

【図3:生活介護の詳細】

生活介護の詳細
出所:厚生労働省 社会・援護局 障害保険福祉部 「生活介護に係る報酬・基準について《論点》」(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第37回(R5.9.27) 資料3)より

生活介護施設の増加の背景

日本では少子高齢化が加速していますが、高齢化と共に障害者の高齢化及び重度化が進行しています。こうした背景から、生活介護施設の重要性が益々高まっており、生活介護施設は近年増加傾向にあります。

  1. 障害者の高齢化の進行

多くの年齢階級で利用者が増加していますが、特に50歳以上の割合が増加傾向にあり、全体の40%以上を占めています。

生活介護施設の利用者数の推移(年齢階級別)
出所:厚生労働省 社会・援護局 障害保険福祉部 「生活介護に係る報酬・基準について《論点》」(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第37回(R5.9.27) 資料3)より

  1. 障害者の重度化の進行

区分5、及び区分6の利用者は全体の70%以上を占めています。利用者数に占める割合は増加しており、重度化が年々進行していることが窺えます。

生活介護施設の利用者数の推移(障害者支援区分別)
出所:厚生労働省 社会・援護局 障害保険福祉部 「生活介護に係る報酬・基準について《論点》」(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第37回(R5.9.27) 資料3)より

  1. 生活介護施設の増減状況

直近の社会福祉施設の事業所数の増減状況について、障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)の中で生活介護は短期入所に次いで増加率が高くなっています。

障害福祉サービス事業所数
  1. サービス及びニーズの多様化

障害の種類や程度は多岐にわたるため、個々のニーズに合うサービス提供が課題となっており、その中でも住み慣れた場所での暮らしや、家族との暮らしなどを重視する人が増加しています。こうしたニーズに応える上で、生活介護施設は身近な選択肢として、近年需要が増えています。

また、「障害者の日常及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第104号)」が施行され、国の政策として障害者が地域で生活しやすい体制を整備する具体的な動きが進んでいます。

地域共生社会(イメージ)
出所:厚生労働省ホームページ「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第104号)の概要」より

支援先の社会福祉法人における事例

支援先の社会福祉法人では、生活介護事業(2施設)・グループホーム・短期入所・放課後等デイサービス施設を運営しています。ここからは支援先での事例を取り上げながら、生活介護事業を運営するうえでの課題の把握と整理、及び今後の方向性について検討/立案した内容をご紹介します。

課題の把握と整理、今後の方向性

現在法人が抱える課題の把握と整理を行うために、職員ヒアリングと法人の内部環境・外部環境の調査を実施しました。課題を「組織風土・生産性向上・業務改善」に整理した上で、今後の方向性を次のように提言しました。

  1. 外部環境としては、法人が所在している自治体の障害者数は増加が続く見込みであり、事業には拡大の余地あり
  2. 内部環境としては、職員一人当たりの売上が全国平均と比較して低いことや、人件費率が高い一方で給与は全国平均と比較して低いことが特徴として挙げられ、収入増加・費用削減等の生産性向上の検討が必要
  3. 創業理念は職員に浸透している一方、事業が一定程度拡大した現在、停滞感や縮小均衡を感じている職員も存在。過去行われていた理念等を有志職員で議論する場の復活や、現在の事業規模に合ったマネジメントの在り方の検討を行い、組織風土の土台固めを行うことが必要
  4. 組織風土の土台固めや生産性向上策を短期的に講じた上で、中長期的に、採用・広報戦略や給与体系の見直し等に取り組んでいくことが望ましい

今後の取り組み方針、及び具体的な取り組み

今後の方向性を定めた上で、具体的な取り組み方針について検討し、課題ごとに立案した内容をまとめ提言しました。経営層から現場職員まで法人が一丸となってアクションを起こしやすいよう、それぞれの課題に対して具体的な提案を行いました。

  • 組織風土:「従来のやり方に囚われず、法人内外の多くの意見を聞くこと」などの基本方針を据え、2年程度先までの段階的な目標を設定
  • 生産性向上:短期的には、食事にかかる費用の見直しや加算の確実な取得に取り組むことを検討
  • 業務改善:人員が限られる中で必要な部署に手厚い配置を行えるよう、配置基準を大きく上回る配置となっている事業・部署や、配置基準のない事業・部署(管理部門を含む)を中心に業務改善を図り、人員配置を見直すことを検討

~具体的な提案内容~

[組織風土]

  • 1on1ミーティングの導入
  • 面談でのティーチングとコーチングの使い分け


[生産性向上]

  • 食費の見直し
    ※例:費用内訳の精査、調理/提供方法の変更(拠点毎の実施→法人まとめての実施)、食材等の共同購買、食品ロス削減、メニュー見直し
  • 算定可能な加算を把握し、法人として加算取得に向けた取り組み(=法人が目指す支援内容)を議論すること
  • 配置基準を上回る配置人数の適正化、及び事業間で差がある残業代の見直し


[業務改善]

  • 間接業務の見直し
    ※例:簡素化・廃止の検討、委託やボランティア活用、ICT等活用、システム活用
  • 事務部門の業務見直し
    ※例:勤怠/給与システムの導入、ペーパーレス化推進


おわりに

障害者が地域で生活しやすい体制を整備する国としての政策の動きや、利用者のニーズの拡大により、今後も生活介護の需要は増加していくと考えられます。事例紹介で取り上げた内容以外でも、生活介護事業を運営する上で今後対策を進めたい項目として下記が挙げられます。

  1. 地域との連携

支援先の法人では「地域の中で」がキーワードとなっており、地域との強い結びつきが施設の強みとなっています。具体的には、町内の組長会議、地域の祭りや運動会、近隣の河川や公園の清掃といった活動に積極的に参加しています。地域との繋がりを強化することで、利用者の獲得のみならず、協力してくれるボランティアや周辺企業を獲得する上でもメリットが大きいと言えます。

  1. 施設の多機能化(複数サービスの展開)

支援先の法人では、生活介護事業2施設の他に、グループホームや短期入所、放課後等デイサービスを運営しています。複数サービスの展開は利用者の年齢等によって生じる様々なニーズに対応できるので、利用者を途切れさせないメリットがあります。

今回ご紹介した支援先の事例では、今いる職員を大切にする視点で、法人の手元にある資源を有効活用することを検討しました。競合する施設やあらゆるコストが増えていくことが今後予想される厳しい環境の中、既存の職員が存分に力を発揮できるよう事業所の環境を整えることは、安定した事業運営への第一歩であると言えます。

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監修者

小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他

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