現場レポート

2024/07/19/金

医療業界の基礎解説

病院における業務改善の具体的な施策と役立つツール

【監修】取締役 小松大介

人手不足や業務量の増加により、病院で働くスタッフの負担が年々大きくなっています。業務改善をしなければ、医療サービスの質の低下や医療従事者の離職といった問題の発生率が高まるでしょう。
そこで今回は具体的な改善方法や業務改善に役立つツールなどについてご紹介します。職場環境をよりよくしたいと考えている方は参考にしてみてください。

病院において業務改善が必要な理由

病院で業務改善が必要な理由は、以下の3つです。

人件費増大による経営圧迫

厚生労働省委託の調査によると、病院の経費の約6割は人件費です。
現場の状況によっては、想定しているよりも多くの人材を雇用せざるを得ない場合もあるでしょう。仮に収入が増えない中で人件比率が高まれば、経営圧迫のリスクも高まります。

業務改善により無駄な業務を省いて効率的な業務プロセスを確立できれば、労働時間の短縮、人件費の削減につながります。

医師・看護師の人手不足による労働負担の増加

医療業界は近年、慢性的な人手不足の問題を抱えています。

人手不足の状況は有効求人倍率から読み取れます。令和6年の医師の有効求人倍率は、3.38倍(※1)、令和4年の看護師の有効求人倍率は、2.20倍(※2)でした。医師・看護師ともに高い倍率となっていることから、人手不足だと推察することができます。

また、今後は少子高齢化が進む影響により医療従事者の労働人口はさらに減っていくと懸念されています。限られた人材で医療サービスを提供し続けていくには、業務改善は重要な取り組みといえるでしょう。

(※1)厚生労働省管轄ハローワーク|職業別の有効求人倍率
(※2)厚生労働省|看護師等(看護職員)の確保を巡る状況

医療職全体の業務過多

医療技術の進歩に伴って医療職に求められる業務が多様・複雑になり、全体の業務が増えている傾向にあります。
たとえば、以下のような内容が挙げられます。

  • 感染症対策の対応
  • 新しい医療機器の扱い方習得
  • 対応範囲拡大による事務作業の増加
  • より高度で専門的な知識と技術の習得
  • 説明業務(申し送り、カンファレンス)の増加 

新たな業務が増えたことにより、書類作成や情報入力などの事務作業に多くの時間を割かれ、直接患者と接する業務に支障をきたす状況も生じています。直接業務の時間を適切に確保することで医療サービスの質の向上につながるため、業務改善は必須と言えるでしょう。

病院における業務改善方法

ここからは、病院の業務改善方法について解説します。

業務を見える化する

まず取り組むべきなのは業務の見える化です。業務を可視化することで、現在の問題点や非効率な部分を特定できるからです。
見える化する際には、以下のポイントをおさえておきましょう。

  • 負担の大きい業務は何か
  • 業務に追われる時間帯はいつか
  • 誰がどのような業務にどの程度の時間をかけているのか など

弊社が独自開発した業務調査アプリ「MIERU」を活用すれば、簡単に自院の業務量を把握できます。見える化を行う中で手詰まりを感じた場合は、利用を検討してみてください。https://mediva.co.jp/news/products/12478

※「MIERU」はコンサルティングサービスの一部として提供し、“業務量の調査のみ”のご依頼はお受けしておりません。ご了承ください。

 業務内容を見直す

見える化したら業務内容を見直し、課題を洗い出していきます。可視化した業務は「不要な業務や効率化できる業務はないか」「外部に委託できる業務はないか」などの観点で振り分け、職員の声にも耳を傾けながら課題を特定していきましょう。

また、すべての課題を一度に改善するのは難しいため、優先順位をつける必要があります。緊急性や重要度の高い順番に振り分け、段階的に取り組んでいきましょう。

業務をマニュアル化する

事務作業や定期的に行う業務などのルーティンワークは、マニュアルを作成するのがおすすめです。以下のようなメリットがあるからです。

  • 業務の引き継ぎミスを防げる
  • 医療サービスの品質を一定に保てる
  • 経験の浅いスタッフの教育ツールとして活用できる

また、新しい業務が追加される度にマニュアルを追加できれば、教育の負担も減らすことができるでしょう。

DX化を推進させる

DX化の推進も業務改善に欠かせない取り組みの一つです。DX化とは、デジタル技術を活用して医療ニーズに素早く対応する取り組みのことです。また、組織全体を変革し、ほかの病院より優位に立つ組織づくりの狙いもあります。
たとえば、病院におけるDX化は以下のような例が挙げられます。

  • 事務作業のデジタル化
  • オンライン予約・問診・診察
  • 業務用スマートフォンの活用 など

DXを進めるには、PC・スマートフォンなどの端末代やソフトウェアやクラウドサービスのライセンス料など初期投資がかかります。しかし、長期的に見れば、人件費の削減やスタッフの生産性向上につながるため、計画的に導入していくとよいでしょう。

以下の記事ではDX化について詳細を解説していますので、ぜひご覧ください。

関連記事:病院での医療DX化の方法とは?その効果や政府の施策について

病院で業務改善を進めるためのツール

最後に、業務改善に役立つツールを紹介します。

  1. オンライン予約システム
  2. 電子カルテ・医療書類のデジタル化
  3. バックオフィス業務効率化サービス
  4. インカムシステム
  5. ロボット配膳

上記のようなツールをうまく活用すれば、スタッフの負担軽減や医療の質の向上を実現できるでしょう。自院の課題にあわせて、最適なツールの導入を検討してみてください。

1.オンライン予約システム

オンライン予約システムは、患者がインターネット上で診察の予約が取れるツールです。画面の案内に従って必要事項を入力するだけで、簡単に予約が完了します。

電話対応や紙の予約帳への記入が不要になり、書き間違いによるミスなども防ぐことができます。結果、業務の負担が大幅に軽減され、人件費の削減にもつながるでしょう。

2.電子カルテ・医療書類のデジタル化

紙カルテや医療書類などの紙業務をデジタル化するツールもあります。電子カルテや書類をデジタル化することで、書類の保管スペースが不要になる、スタッフ間の情報共有がしやすくなるなどのメリットが生まれます。

電子入力や情報の一元管理により、業務負担の軽減や労働時間の短縮につながるでしょう。

3.バックオフィス業務効率化サービス

バックオフィス業務効率化サービスを導入すれば、経理や人事の業務負担を軽減できます。
バックオフィスのおもな業務として、勤怠管理や経理業務、請求書関連業務などが挙げられます。

医療業界ではこれらの業務をアナログな方法で管理している場合も多いため、これらの業務を効率化できれば正確なデータ管理が可能になるほか、業務の自動化により人件費の削減効果も見込めるでしょう。

4.ベッドセンサー

ベッドセンサーは、患者の動きをモニタリングし、必要に応じて看護師に通知するシステムです。多くの病院で導入されているのが、ベッドからの起き上がりや離床を検知する圧力センサーです。転倒や徘徊のリスクを早期に察知して、事故の防止に役立てられます。

看護師の定期的な巡回の負担を軽減できるため、看護師の定着率アップ につながるでしょう。

5.インカムシステム

インカムシステムとは、無線通信を利用したコミュニケーションツールです。インカムを導入すれば、離れた場所にいるスタッフとリアルタイムで会話ができ、以下のようなメリットが生まれるでしょう。

  • 伝え漏れを減らせる
  • 職員を探す必要がなくなる
  • 緊急時にすぐにスタッフを呼べる
  • 細かい声掛けでチームワークが高まる
  • 離れた場所からも若手の教育が可能になる

場所に関係なく必要な情報を共有できるため、業務の効率化を図れます。

6.ロボット配膳

配膳業務の自動化を実現するロボット配膳も、将来的に業務を手助けしてくれるツールの一つになるでしょう。
スペースの確保や安全性の課題から現在はまだ試作段階ですが、技術が進めば病院内で活躍する日もそう遠くないはずです。

食事や飲み物の配膳を機械に任せられるようになると、スタッフの業務負担が大幅に軽減されます。そのぶん、患者のケアにより多くの時間を割けるようになるため、医療サービスの質が向上するでしょう。

まとめ

業務改善は病院にとって喫緊の課題です。まずは業務の見える化から始め、優先度の高い課題から順に対策していきましょう。
「業務改善になかなか時間が割けない…」「自院にあった業務改善ツールの選定が難しい…」という場合には、ぜひメディヴァにご相談ください。

以下の記事では、弊社が提供できるサービスについて紹介しています。
関連サービス:病院業務改善/DXコンサルティング

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監修者

小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。
主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他