現場レポート

2024/06/21/金

医療業界の基礎解説

課題が多い介護業界のDX化を、効果的に進めるためのポイント

【監修】取締役 小松大介

デジタル技術やAIの発展により、介護業界においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)化の波が押し寄せています。DXは、特に深刻化する人手不足の問題や、介護業界の業務量の多さを改善する有効な手段として注目されています。
しかし、DX化を成功させるためには、利用目的や内容を十分に理解し、自分の組織に適した形で導入を検討しなくてはなりません。
本記事では、介護業界がDXを推進する際に直面しうる課題や、効果的に進めるための手順を解説していきます。

介護DXとは?

介護DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して介護業務のプロセスを変革し、業務効率化や提供サービスの質向上を目指す取り組みのことです。

〈介護業界におけるDX化例〉

導入システムやツール見込める効果
ICTシステム・記録や報告、スケジュール管理などの事務作業の自動化・効率化
・情報の一元管理による情報共有の円滑化
見守りセンサー 睡眠センサー・24時間管理のバイタル・離床センサーによる夜間見回りの負担軽減
・利用者の行動・睡眠パターンを把握することによる適切なケアの提供
インカム・スタッフ間の情報連携の円滑化
・無駄な移動や対応を減らすことによる業務効率化

上記のように、導入するシステムやツールによって介護職員の業務負荷を軽減できます。慢性的な人手不足や、業務過多・長時間労働による離職率の高さなどの課題を解決するために、DXは有効な手段といえるでしょう。

介護DX化のメリット

人手不足の問題をカバーできる

人手不足に対する解決策の一つとして、DX化は大きな可能性を秘めています。
例えば、ICTシステムを導入し、介護記録や報告書などの書類作成をデジタル化できれば、手書きに要していた時間と労力を大幅に減らせます。また、タブレット端末などを活用して情報を同時に共有・修正できるため、人手不足による情報共有不足や認識のずれなどを防ぐこともできるでしょう。

職員のモチベーション低下を防ぐ

介護DX化により、負担となっている業務を効率化できれば、職員の労働意欲の低下を防ぐことが期待できます。
例えば、見守りセンサーなどのシステムを設置すれば、利用者の動きや状態を自動で検知できるようになり、夜勤時の見回り業務の負担が軽減されるでしょう。
また、介護記録や健康チェックといった事務の業務をデジタル化できれば、業務時間を短縮でき、ワークライフバランスの改善にもつながります。

介護サービスの質向上につながる

 DX化により業務の効率化が進むことで、介護職員は利用者のケアにより多くの時間を割けるようになります。一人ひとりと向き合う時間が増えれば、きめ細やかなコミュニケーションが可能となり、利用者の満足度も高まるでしょう。
また、ICTシステムを導入すれば、利用者の健康状態や生活状況などの記録をデータ化し一元管理できます。これにより、利用者の現状を的確に把握したうえで、適切なケアプランの作成やサービスの提供が実現できます。

介護業界のDX化が難しい理由

介護業界のDX化は注目されつつも、なかなか実施に踏み込めない施設が多い理由としては主に以下の2つが考えられます。

職員のITリテラシーを上げるのが難しい

介護DX化を進めるには、デジタル機器の操作やシステム運用のマニュアルを覚えなくてはなりません。今まで使っていない機器やシステムを使いこなすには時間がかかりますし、普段からPCやタブレットに慣れていない職員にとっては、導入に抵抗を感じる場合もあります。

この課題を解決するためには、職員のITリテラシー向上のための教育体制の整備が欠かせません。定期的な研修や勉強会を開催したり、IT に精通した職員を確保してサポート体制を構築したりするなど、対策を考える必要があるでしょう。

デジタル機器等の導入コストがかかる

DX化に向けたデジタル機器等の導入は、大きな投資となります。ソフトウェアやシステムの導入費用に加え、それらを運用するための機器(タブレット、パソコン、スマートフォンなど)の購入費用もかかります。

施設の規模や職員数によっても費用は異なりますが、予算に余裕がない施設にとってはコストの負担が足かせとなり、導入に二の足を踏む場合が少なくありません。
そのような場合は、国や自治体が提供する補助金や助成金制度を活用しながら、初期投資の負担を軽減していくのが有効な手段となります。

介護施設におけるDX化の手順

ここからは、介護施設でDX化を進めるための手順を紹介します。

1.業務を見える化する

まず自施設の現状を客観的に分析し、解決すべき課題を明確にする作業が大切です。
課題の洗い出しには、現場の声を積極的に取り入れる姿勢が欠かせません。アンケートやヒアリングを行い、職員一人ひとりの意見を丁寧に収集しましょう。また、誰がどのような業務にどの程度の時間をかけているか業務量調査を行い定量的に見える化することも重要です。
弊社ではDXコンサルティングサービスの一環として、独自開発の業務量調査アプリ「MIERU]を活用し、業務量の見える化を行い、課題の洗い出しを実施しています。
>詳しいサービス内容についてはこちら をご覧ください。

2.解決したい課題を洗い出す

職員アンケートやヒアリングまたは定量調査により表出した課題に優先順位をつけ、DX化によって解決すべき課題を絞り込んでいきます。優先順位付けを適切に行うことで、限られたリソースを最大限に活用でき、効果的にDX化を進められます。

3.利用するシステムを選定する

優先度の高い課題に対して、最適なシステムやツールを選定していくのが次のステップです。システム選定の際には、以下のような視点で判断していきましょう。

  • 使いやすさや操作性に優れているか
  • 課題解決に必要な機能を満たしているか
  • 導入コストに見合った効果が期待できるか

選定したシステムやツールを導入する際には、職員への丁寧な説明と教育が不可欠です。職員が確実に理解できるよう、サポート係となる担当者を決めたり、わかりやすいマニュアルを作成したりして準備を進めましょう。

4.効果検証を行う

DX化の取り組みは、システムやツールの導入だけで完結するものではありません。導入前と導入後の効果検証を行い、その結果をもとに継続的な改善を図る必要があります。おもに、以下のような観点で効果検証を行うとよいでしょう。

  • ミスがどれくらい減ったか
  • どれくらい業務時間が短縮されたか
  • 利用者満足度はどれくらい向上したか

システム活用における新たな課題や改善点が明らかになった場合には、設定の変更や運用ルールの見直し、追加の教育や支援など、状況に応じた適切な対応が求められます。
このように、効果検証を実施して改善を繰り返せば、より高い効果を得られるでしょう。

介護DXの事例

ベッドシートセンサーをフロア全床に導入した支援先の有料老人ホームでは、夜間の入眠状況を一元管理することで、リアルタイムでの状態把握が可能となりました。これにより、定期的に各居室を巡視していた業務が不要となり、身体的な負担の軽減だけでなく、安全な見守りを実現。また、睡眠状況に合わせた排泄ケアや声かけを行うことで、ケアの質の向上にも寄与しています。

その他、DX健康管理による離職問題の解決事例を以下ページでご紹介しています。業務面以外でのDXの推進事例として、ぜひご覧ください。
https://mediva.co.jp/report/case-study/12811

まとめ

介護業界が抱える人手不足や業務の複雑化といった課題を解決するために、DX化の重要性が増しています。しかし、システムやツールを導入することがDXではありません。
DXとは、単にICTを便利に使うことや、情報をデジタル化して利活用するだけではなく、新しいテクノロジーを駆使し、考え方を変え、全く新しいやり方を設計・実行し、今までにない付加価値や効率性を生み出すことされています。

介護分野においても、既存のルールや慣習にとらわれず、新しいテクノロジーを活用して新たな方法を考え実行していくこと、文化を変えていくことが生産性向上に繋がるのではないでしょうか。ただ、適切に現状の課題を洗い出し、介護施設の課題や特性に合わせたシステムを選ぶ知識が求められるため、DX化をためらう施設も少なくありません。メディヴァでは、医療や介護の領域に特化した知見を活かし、DX化に向けた課題抽出から実行支援まで一貫して行います。DX化を進める際には、ぜひお気軽にご相談ください。

まずは相談する


監修者

小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。
主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他

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