現場レポート

2024/06/23/日

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

医療介護コンサルティング ーメディヴァへの道―

メディヴァが6月23日で創業24周年!を迎えたため、今回は個人的なお話です。

たまに聞かれる質問として、「何故、グローバルな戦略コンサルティング会社マッキンゼーを辞めてメディヴァを創業したのですか?」、「今の方がいいですか?」があります。
今日はまとめてお答えします! 

 Q「何故、マッキンゼーを辞めて、あえてメディヴァを創ったのか?」

マッキンゼーには、ハーバード・ビジネス・スクールの時インターンとしてNY事務所で働いたご縁で入社しました。私費留学で、2年目の資金目途が立たず、「前借りできるよ!」という言葉に釣られました(笑)。意外と長く務めたのは、結構面白かったから。
プロジェクトは3か月くらいの単位で、クライアントもテーマも変わります。新しい学びもあり、チャレンジングで、さながら遊園地みたい。あちこちのライドを体験しているうちに日が暮れる、、。そういう感じです。
コンサルの「問題解決」が性に合っていたというのもあると思います。5年でパートナーになりました。 

一転したのは、息子を出産した時です。診療所に掛かり、病院に転院し、出産。別に何か大きな問題があったわけではないですが、ビックリすることだらけでした。
企業クライアントにとって「お客様視点」は当たり前です。ところが、医療機関には「患者さん視点」というのが全くない。どんなに患者を待たせても誰も何も言わない。「その日は仕事があって、、」と予約日の変更をお願いすると、「じゃ、担当医変わるわよ」と言って、顔にカルテを投げてくる女医さんがいる。大変な業界だな、、と思いました。
更に患者さんが不幸なだけでなく、お医者さんも、看護師さんも、皆忙しそうで、誰一人幸せそうでない。しかも病院は儲かってない。国は医療費で破綻すると言っている、、。何だ、これ? 

この課題を「問題解決」できないだろうか?生まれてきた息子のためにも、より良い社会を残せるんじゃない?と思ったのがきっかけになって、産休後、ヘルスケアの仕事もやることにしました。ただ、マッキンゼーのヘルスケアのクライアントは、基本的には製薬会社と医療機器メーカーです。当たり前で、マッキンゼーのフィー(数千万~億円)を払える病院はそうありません。
ちょっとやりたいことと違うんだけどな、、、と思い、医療機器メーカーと卸の複数からフィーを集めて「顧客である病院の経営改善を学ぶ」というプロジェクトを組成しました。対象となる病院は北関東の日赤病院です。

数か月の分析ののち提言レポートをまとめました。経済的なインパクトは見込めることが分かり、好評だったのですが、なんか不燃感が。戦略コンサルの仕事はレポートを提出するまででお終いです。提言した内容を病院はやり切れるのだろうか?気になるなか、プロジェクトは終了しました。
またもう一つ気になることがありました。提言内容は制度や診療報酬に合致することが前提で、それを越えたものは受け入れられないので、革新的なアイディアがあっても、初めから除外して考えなくてはいけません。こういうモヤモヤとした思いで数年を過ごし、最後には「やっぱり違う枠組みでやろう」と辞めることを決めました。 

こうしてスタートしたのがメディヴァです。
まずモヤモヤ感を解決する枠組みを考えました。「この業界何か変じゃない?」とヒアリングして回った時に出会った野間口先生、遠矢先生達が一緒に起業することになり、メディヴァと同時にクリニックを立ち上げました。開設に当たっては亀田総合病院の亀田信介先生、省吾先生からは、「ノウハウとお金を出してあげる」とサポートいただきました。

メディヴァのビジネスモデルは「現場を持ったコンサルタント」です。
現場があると現実感のある提言が作れます。現場で運営を経験すると、実行をハンズオンでお手伝いをする力もつきます。自分の現場だと革新的な取り組みを実証することができます。
創業時に作った用賀アーバンクリニックでは、徹底してお客様(患者さん)視点に立ち、当時としては最先端のテクノロジーを使い、セキュアなインターネットを通して患者さんがいつでもどこでも自分のカルテにアクセスできるシステムを作りました。また近隣病院とカルテや画像を共有しました。   

 Q「今の方がいいですか?」

「現場を持ったコンサルタント」は医療・介護界では画期的でした。その後、メディヴァは、国内外にクリニック13カ所、病院5カ所、リハビリ・デイサービス6カ所、かんたき(看護小規模多機能型居宅介護)1カ所を作り、在宅医療、女性向けの健診、認知症ケア、コミュニティホスピタルの先駆者として実証をしてきました。その経験はハンズオン型のコンサルティングに活きています。始める時は正直ドキドキしましたが、今ではマッキンゼーを辞め、あえてメディヴァを創って良かったと自信をもって言えます。 

メディヴァの創業物語がハーバードビジネススクールの冊子でカバーストリーとして取り上げられたときの表紙写真。

追伸
来年は25周年です。「何かイベントやります?」と社員に聞かれたので「大石さんのリタイアお祝い、どう?」と聞いたら「100歳まで働いてください」と返されました。
しばらくは、このまま「現場を持ったコンサルタント」を続けることになりそうです。