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2026/02/26/木

診療報酬改定

令和8年度(2026年度)診療報酬改定②|「包括期・慢性期」入院医療の機能分化と質の追求

— 2040年を見据えた「治し、支える医療」の実現に向けて —

【執筆】シニアマネージャー草野 康弘

はじめに

令和8年度診療報酬改定コラムの第2弾では、「包括期・慢性期」の入院医療に焦点を当てます。
高齢化がさらに進む2040年を見据え、急性期を脫した患者や、日常的なケアが必要な高齢者の救急を受け入れる病棟は、「治し、支える医療」を実現する要としてその役割がますます重要になっています。

令和6年度から令和8年度にかけて、包括期・慢性期領域の制度は大きく洗練されてきました。本コラムでは、5つの重要論点に整理して解説します。

今改定のキーワード:

  • 地域包括医療病棟の細分化
  • 後方支援機能の強化
  • アウトカム評価の拡大
  • 療養病棟の厳格化
  • 包括期充実体制加算新設

01  地域包括医療病棟の再編――新設から細分化へ

令和6年度改定:新たな病棟類型の創設
高齢者の救急患者(誤嚥性肺炎や尿路感染症などの中等症)を対象に、急性期の治療と並行して早期からリハビリ・栄養管理・退院支援を包括的に行う「地域包括医療病棟」が新たに創設されました。
背景には、介護施設等からの軽症高齢者救急の約7割が、高度急性期病院など医療資源投入量の多い病院に入院しているという実態があります。急性期病棟の役割を明確に分化させ、患者の状態に応じた適切な受け皿を整備する流れが本格化しました。

令和8年度改定:現場の実態に即した細分化
実際の運用状況を踏まえ、より現場の実態に合わせた見直しが行われました。
予定入院か緊急入院か、手術の有無、また急性期病棟の併設状況に応じて、入院料が入院料1~3に細かく区分されました。

さらに特徴的なのは、平均在院日数やADL低下割合の基準が、85歳以上の患者割合に応じて緩和・調整される仕組みが導入された点です。超高齢患者の特性を踏まえた現実的な評価へと舞い修正されています。

ポイント
地域包括医療病棟は「創設」から「成熟」のフェーズへ。自院の患者構成に応じた入院料区分の選択が経営上の重要な判断ポイントになります。


02  地域包括ケア病棟の役割強化――後方支援と一体的ケア

令和6年度改定:入院期間に応じた評価体系の見直し
入院期間に応じた評価体系(40日以内ぁ41日以降で点数に差をつける等)への見直しが行われました。

令和8年度改定:「後方支援」機能の拡充
自宅や介護施設で療養する患者の「後方支援」としての役割がさらに強化されました。
在宅患者等を受け入れた際の「在宅患者支援病床初期加算」の対象が、従来の救急搬送された場合から、緊急入院した場合全般へと拡大されました。これにより、急変時の受け皿としての役割が、より幅広く評価されるようになります。

多職種連携による一体的ケアの推進
入院早期からの生活機能維持を目指し、「リハビリテーション・栄養・口腔連携加算(30点)」が新設されました。リハビリと栄養管理を一体的に取り組むという方向性は、改定のたびに強化されており、地域包括ケア病棟として積極的に取り組むべき領域です。

ポイント
後方支援機能の強化と多職種連携による一体的ケアは、地域包括ケア病棟が取り組むべき最優先事項です。


03  回復期リハビリテーション病棟のアウトカム評価拡大

令和6年度改定:FIM測定の要件化
リハビリの実績を測る「FIM(機能的自立度評価表)」の定期的測定が要件化されたほか、体制強化加算が廃止されるなどの見直しが行われました。

令和8年度改定:「成果」を重視する姿勢の強化
リハビリの効果(アウトカム)を重視する姿勢がさらに強まりました。これまでリハビリテーション実績指数の要件がなかった入院料2・4にも、新たに実績指数の要件が導入されました。
また、質の高い取組(高い実績指数、退院前訪問指導、排尿自立支援等)を行っている病棟を評価する「回復期リハビリテーション強化体制加算(80点)」が新設されました。

ポイント
「リハビリを提供したか」ではなく「リハビリでどのような成果を出したか」が問われる時代へ。実績指数の管理と向上が不可欠です。

04  療養病棟の医療必要度の厳格化

令和6年度改定:医療区分の大幅見直し
医療区分の評価体系が、従来の3分類から、疾患・状態(3分類)と処置等(3分類)を掛け合わせたより詳細な分類(27分類等)へと大きく見直され、中心静脈栄養の評価も厳格化されました。

令和8年度改定:重症患者受入れの推進と要件引き上げ
より医療の必要性が高い患者の受け入れを推進するため、評価の見直しが行われました。
悪性腫瘍以外の疾患(末期心不全、呼吸器疾患、腎不全など)で緩和ケアを受ける患者や、重症の医療的ケア児などが、高い医療区分(医療区分2・3)に引き上げられました。

その一方で、最も手厚い「療養病棟入院料2」において求められる「医療区分2・3の患者割合」の要件が、5割から6割へと引き上げられました。より重症な患者を診る機能が、これまで以上に厳格に求められるようになっています。

ポイント
重症患者割合5割→6割は、今後さらに引き上げられる可能性もあります。療養病棟の経営においては、重症患者の受入体制強化が待ったなしの誾題です。


05  包括期全体を底上げする新たな評価

令和8年度改定では、包括期全体の質を底上げする新たな評価が設けられました。

包括期充実体制加算の新設
地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟において、在宅医療や介護施設の後方支援に十分な実績を持つ200床未満の病院を評価する「包括期充実体制加算(80点)」が新設されました。

入退院支援加算の強化
退院後の生活を見据えた支援を強化するため、地域包括医療病棟・回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟における「入退院支援加算1」の点数が1,000点に設定されました。
やるべきことにしっかりと取り組んでいる医療機関が正当に評価されるという流れは、今回の改定でも一貫しています。

ポイント
200床未満の中小病院にとって、地域での後方支援実績を積み上げることが、新たな加算取得のチャンスにつながります。


令和6年度 vs 令和8年度 改定比較

テーマ令和6年度改定令和8年度改定(今回)
地域包括医療病棟新設(高齢者救急の包括的受入れ)入院料1~3に細分化、85歳以上割合に応じた基準緩和
地域包括ケア病棟入院期間に応じた評価体系見直し後方支援対象拡大、リハ・栄養・口腔連携加算新設
回復期リハ病棟FIM測定要件化、体制強化加算廃止入院料2・4に実績指数要件導入、強化体制加算新設(80点)
療養病棟医療区分27分類化、中心静脈栄養厳格化緩和ケア対象拡大、重症患者割合5割→6割へ引上げ
包括期全体包括期充実体制加算新設(80点)、入退院支援加算1(1,000点)


まとめ ― 今後に向けて

今回の令和8年度改定は、包括期・慢性期の入院医療において、「機能分化」と「質の追求」という2つの方向性を明確に打ち出した内容となりました。
地域包括医療病棟の細分化、回復期リハビリテーション病棟のアウトカム評価拡大、療養病棟の重症患者割合引き上げなど、いずれも「どのような患者を、どのような質で診ているか」が問われる内容です。
特に、重症患者割合や実績指数の要件は、今後の改定で段階的に引き上げられる可能性があります。早い段階から体制整備に着手し、将来の基準引き上げに備えておくことが重要です。

メディヴァでは、今回の改定内容を踏まえた経営シミュレーションや病棟機能の見直し支援を行っております。自院への影響分析やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者

草野 康弘
東京都出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業。在学時は医療者と一般市民が相互理解を得るためのヘルスコミュニケーションについてフィールドワークを中心に研究を行う。 大学卒業後、外資系医療機器メーカーでの新規市場開拓営業に従事した後、2014年1月よりメディヴァに参画。病院の経営企画職等の現場実務を経て、医療機関の事業再生を専門としてプロジェクトマネジメントに従事。現在は患者視点の医療を実現すべく、全国の中小病院をコミュニティ・ホスピタルに変革することをミッションとして取り組んでいる。