2026/02/09/月
大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」
相変わらず寒いですね。寒いの嫌いです。冬眠したいです。
でも、雪も降らない東京で文句言っていたら、バチがあたりますね。
しかも、私は先週、南国に行っていました!
(それで文句言ったら、本当にバチあたりです)
PMACカンファレンスというのに呼ばれて、タイに行きました。
Prince Mahidol Award Conferenceの略で、100年くらい前のシャムにいたマヒドル(マヒドン)王子の財団が毎年開催しています。
マヒドン王子は軍人を経て、ハーバードに留学し医師になり、タイの近代医療と公衆衛生を築いた人で「タイの医療の父」と呼ばれています。有名なマヒドン大学(タイ医学部の最高峰)は、この人が生み出しました。残念ながら、38歳で亡くなり、王位に就くことはありませんでした。
1991年にタイで王子の誕生100周年が祝われ、Prince Mahidol Awardが創設されました。PMACは授賞式を兼ねた学会です。
12月末に突然メールが来て「旅費を出すから、喋ってほしい」とのこと。
カンファレンスのテーマは、「人口構成が世界中で変わる中、各国はどう対応すべきか?」で、高齢社会のフロントランナーである日本からも参加してほしいとのこと。
私をどこで見つけたのか?は疑問だったのですが、JICAの方からのご推薦だったようです。
暖かいタイに行けるなら、旅費が出るなら、と気軽にOKしました。
ちょっとウキウキ気分。
ところが、「タイに行くよ」と仕事で出会ったタイ人やパートナー会社のマレーシア人にメールすると、「PMACに招かれたとはとても名誉なこと」、「万難を排して聞きに行く」と言われ、一気にハードルが上がりました。
どうも参加する人たちは、ほぼ全員、学者さん。PhDを持ってないのは私だけ?
日本からは、元厚労大臣の武見敬三先生も呼ばれています。
タイからは王族も参加するとのこと、、、。(オープニングスピーチは王女様、、、。)
参加者は、タイだけでなく、東南アジア、南アジア、アフリカ、中南米と世界各国から来るそうです。
今更、ビビッて辞めるわけにもいかず、せめて日本を代表しようと、和服をパッキングしました。
さて、、、私の演題は「日本モデルに学ぶ ―超高齢化した健康的な社会を目指してー」というもの。
前半は日本の高齢化の課題を喋り、医療保険と介護保険の制度を説明し、後半で今後の方向性として地域包括ケアシステム、在宅医療、ICTや認知症デザイン、健康寿命の延伸等について触れました。
海外のカンファレンスで、あまり深刻な暗い話をしても盛り下がる(国の評判も下がる)ので、出来る限り明るく未来を語りました。
※ご興味のある方は下記からダウンロードください
The Japan Model_Mediva (FINAL)PDF.pdf (2.53MB)
https://mediva.gigapod.jp/fc93a844b19fca222a5993d017d279cca8914ec8c
その後、ディスカッションに突入。
カンファレンス全体のテーマですが、各国は「old before rich」(国が富む前に高齢化が到来した)に苦しんでいます。
アジアの殆どの国は、日本を追い抜くスピードで高齢化しています。
一方、多くの国には医療保険制度すらありません。貧困層は、公立病院で最低限の医療しか受けられません。亡くなる前に病院に運び込むことが、一生一度の親孝行のような国も多くあります。介護保険など全く存在しえません。
物価が日本より下手すれば高いのではないかと思われるタイでも、半数以上の人は非正規労働、零細事業者、自営業者、農業や手工業の労働者で、最近まで医療保険はありませんでした。
「日本はrich before oldだから整備できたのではないか?」という質問も出ました。
これに対しては「日本も1945年に敗戦し、焼土から立ち上がった」と反論。
1961年に医療保険制度が出来た時、まだ日本はそれほどrichではありませんでした。
当時の実質GDPは現在の15%でした。
日本は医療保険制度、年金制度、介護保険制度等を作ることにより、人々が安心して働けるセイフティーネットを張り、それが間接的に豊かな中間層を創り上げた、と私は思っています。「safety net before rich and old」です。
ただ、日本の医療保険制度は出来てから60年以上、介護保険制度も25年経っています。
その間の医療技術、ICT技術などの進歩が凄まじく、それに併せた根本的な刷新を行わないと、古びた制度共に日本のセイフティーネットは滅びてしまうかもしれません。
今回話をしたような新しい技術や、コンセプト、医療の多くはまだ実証段階です。日本はこれらをどんどんブラッシュアップして、社会インフラにして取り入れていく必要があります。今、制度のない国は、固定電話が無かった国が一気にスマホ社会に跳んだように、一気に超高齢化に対抗できるようになるかもしれない。そういう話もしました。
とりあえず講演もディスカションも非常にウケて、ほっとしました。
和服もウケました。(実はかなり手抜きして着ています。)
登壇のお礼として、手のひらより大きな金貨のようなものを頂きました。
残念ながら金ではありません(笑)。でも、大事にします!

