2025/09/09/火
大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」
皆様、こんにちは。8月も終わったというのに、相変わらず暑いですね。
我が家はワンコを飼っていますが、朝7時を過ぎると緑の公園でも暑すぎて、ワンコが歩かないので、仕方なく5時半に起きて散歩させています。おかげで寝不足です。早く涼しくなってくれないと、もたないです、、、。
さて、今回は『イシューからはじめよ』で有名な安宅和人さん*による、『「風の谷」という希望 ―残すに値する未来をつくるー』という本について書きます。
*慶應義塾大学SFC教授、LINEヤフー(株)のシニアストラテジスト
(本当はこの原稿は8月末までに書かなくてはいけなかったのが、「読書感想文宿題」が、夏休みの終わりに間に合いませんでした、、、汗。)
「風の谷」本を既に買われている方はいらっしゃるかもしれません。私は安宅さんから頂きました。
受け取って、まず驚いたのは本の厚さ。約1000ページ。5センチあります。(計りました。)
郵便箱には入らず、宅配ロッカーに入っていました、、、。
安宅さんは、前職マッキンゼー時代、私のチームにいました。そのご縁で奥さんはメディヴァにいます。奥さんから「ずっーと籠って書いている」と聞いていたので、「この超大作を執筆してたんだ、、、」と驚きながらも納得しました。
執筆に至る前から安宅さん本人からも、「風の谷」プロジェクトを手掛けている旨、断片的に聞いてはいました。本によると7年半に亘り、色々な分野の人が100人以上関わり、討議した成果だそうです。
世界中で人は都市にどんどん集中し、自然が豊かな、歴史のある集落が捨てられていく。
「都市集中」は人類の必然なのか?それ以外に、人類の未来はないのか?都市にしか住めなくなった未来を子供たち、その次の世代やそのまた次の世代に残したいのか?
ということを安宅さんは問うています。
安宅さんが「風の谷」という言葉で象徴している「人が本当は住みたい、持続性のある過疎空間」には3つの要素ある、とのこと。
この3つの「三絶」がある過疎空間は、都市にはない魅力を持ち続けます。
ただ、世界各地の事例を見ても「三絶」を全て充たした完全な「風の谷」モデルは存在しないそうです。なので、本にはこの3つを作るための要素を分解し、詳しい図解や例とともにも書き下しています。
例えば、「絶景」の例には、日本では棚田や、私も訪れたことのあるイングランド北西部の湖水地帯が挙げられています。
「絶景」たりえるには、単に景色が良いのではなく、自然と建築物のバランスが良い。また傾斜や多様なスケールの空間が調和しています。また、全く人の手が入っていないのではなく、畑や牧草地帯のように、土地の性質や特徴に即して利用されています。文化や歴史が継承されていることも大事です。
一方で、日本には多くの「絶景」を阻害する要因があります。
一番身近な例でいうと、送電線と鉄塔。では、「絶景」の場所は、電気を止めるのか?というと、そうではなく、脱グリッドを本の後半に説明される方式で提唱しています。
本の後半では、上述の電気(エネルギー)を始め、人が生活のために必要な要素について「風の谷」流の考え方、方式について、「人間と自然の調和(森、地域、田園)」、「インフラ(道、水、ごみ)」、「エネルギー」、「ヘルスケア」、「人(教育、人づくり)」、「食と農」6つの章が展開されます。
それぞれの章はとても面白かったです
例えば「道」。
道のスペックは想定交通量によって決まっています。5区分あり、1日あたりの交通量が500台、1500台、4000台、2万台と分類されます。
ただ、車の台数以外に道への負荷が影響するのは、車の重量です。総重量22.5トンの12本タイヤの大型トラックが1.5トンの4本タイヤの乗用車と比べて、道に掛かる負荷は1875倍だそうです。大型トラックが1台通ることによって、乗用車1800倍の負荷が掛かります。
大型トラックが通らない地域における道のスペックは大幅に見直すことが可能です。
道はそもそも役割によってroadとstreetに分けられ、前者は「つなぐ道」、後者は「つながる道」です。舗装道路の整備費用が1kmあたり数億円かかるなか、「つながる道」はスペックを大幅に見直し、未舗装でもいいのかもしれない。
また舗装するにしても、数十年でボロボロになるアスファルトではなく、ローマ時代から続く道のように石を敷いたものであれば、傷んでも味が出るし、比較的簡単に修理することが可能です。
「ヘルスケア」については、個人的な読後感で言うと、もうちょっと書いて欲しかったです。
PPK(ピンピンコロリ)と中核都市との連携やドクターヘリの活用、PPK実現のための歯や足の健康、社会的処方等々、正しいけれど驚きはなく。(医療職系の人の感想は割りと似た感じでした。)
ゼロベースで考えると、今の制度や医療界の文化を離れて、風の谷なりの健康医療やテクノロジーの使い方など、もっと書いて欲しいことはあったんだけど、、と思いながら読んでいました。
もしかすると、安宅さんだからもっと驚くようなことを書いて欲しい、と勝手に思っていただけなのかもしれません。
「風の谷」は、一般的な「地方創生論」や「村おこし」・「リゾート開発」ではなく、考え方であり、人としての生き方を提唱しています。
人間はもっと技術の力を使えば、自然と共に豊かに、人間らしく過ごすことができる空間を生み出すことができます。ただ、その時には機能性、効率性を重視し、「都市化」を前提とした考え方や仕組みをゼロベースで見直さなくてはいけないことを伝えていると感じました。
本にはチャートや写真もふんだんに使われています。
5センチ、1000ページの本でしたが、読みやすく、その章から読み始めても興味深く、私は8月の3連休を「風の谷」とともに過ごしました。
一方、あまりの厚さに圧倒されて、「まだ読んでない」、「読めないと思うから買ってない」という方も周りに多々いました。「風の谷」の関係者や安宅さんの知り合いが参加したシンポジウムがあったのですが、集った人たちですら「まだ読んでない」と仰っていました。
なんとなく斜め読みする、気になる章から、もしくは気になる章だけ読む、ということでもいいと思います。完全に賛同するかどうかは人それぞれと思いますが、必ず考える糧になると思います。
実は本に私のチャートや、メディヴァの小松(取締役)の引用も入っていました!それらを探して読み進めて頂くのも面白いかもしれません。是非お手に取ってみてください。古典として残るべき本と思います。