現場レポート

2025/07/03/木

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

万博で学ぶ、世界と日本の底力

皆さん、こんにちは。暑いですね。
30℃を超える真夏日が続いていますが、まだ梅雨は明けてないとのこと。

この暑い中、大阪・関西万博に行ってきました。
実は、余り期待はしていませんでした。
経済産業省が万博の近くの会場でカンファレンスを開催し、パネルのスピーカ―に招かれたので、ついでです。

そもそもミャクミャクが発表された時、「心底怖い」、「夜中に子供が見たら泣くわ」と。
春に地元、大阪の旧友たちに会った時、誰も行くとは言いません。経済的、社会的に地盤沈下が進む大阪に万博を誘致して、「コケたら終わるわ~」と批判的。
実は大阪から離れれば離れるほど、万博熱は高く、海外からは万博を目掛けて各国の大臣級が視察団を率いて来日しています。インドネシア、インド、スコットランド、デンマーク等々からイベントへお誘いを頂きます。

経産省のセミナーに出るなら、同じ週に開催されるデンマークとスコットランドのイベントに合わせて行ってみようか、ということになりました。
以下は、経産省のカンファレンスと両国のイベント報告です。

経産省のGHeC カンファレンス(Global Healthcare Challenge;https://ghec2025.jp)はジェトロとの共催で、大阪南港のグランドプリンスホテル大阪ベイで6月25日、26日に開催されました。健康課題解決や新たなイノベーションの創出を目指したヘルスケア分野の国際的なシンポジウムとビジネスコンテストで、世界中からスピーカー、パネリストが招かれました。

私は2日目の26日の午前中に登壇しました。司会は衆議院の塩崎彰久議員、他の登壇者はEpidarex Capital(ベンチャーキャピタル)のA.Sinclair Dunlop氏、HekaBio(医薬品導入専門コンサル)のRobert E. Claar氏、UCSD大学で日本ビジネスを教えるUlrike Schaede教授です。セッションのテーマは「What’s Next for Japan?:Globalizing Japanese Health Tech Ecosystem(日本のヘルステックのグローバル化)」でした。討論は英語です。

パネルでは、塩崎議員の興味分野であるバイオテックや医薬品が中心でしたが、日本がヘルスケア分野でJapan as Number 1のポジションを築くことができるか?そのためには何が必要か?がディスカッションされました。
医薬品の分野は医療機器やSaMDとは異なりますが、いずれであっても日本にはせっかくデータもサイエンスもあるのに、それをグローバルに展開するだけの力がなく、どうすれば良いかが話されました。必要なのは、野心をもった起業家、ヘルスケアという特殊な分野で事業伴走ができ、かつ大きな金額を動かせる専門的なVCが必要という意見が出ました。また規制緩和ともに、日本全体の自信を取り戻すべき、との話もありました。

パネリストも面白い人ばかりで、とても楽しかったですが、塩崎議員が驚くほど英語が上手なのが一番印象に残りました。非常に快活な人で、お父様とはだいぶ印象が違います(笑?)。

午後はそのまま30分くらい電車を乗り継ぎ、万博会場のデンマークイベントに。北欧5か国は共同でスカンジナビア館に出展しています。比較的空いている日で、VIPパスを頂いたので、すんなり入れます。まずは大屋根リングが目に入り、「おー、これかー」と見上げてしげしげ観察。ちょっと感動。

思った以上に会場が広く、スカンジナビア館が見つからない。じっと地図を見て、ようやく見つけてカンカン照りのなかをたどり着きました。ちょうど第一セッションが終わったところで、昼ご飯が配られました。きれいな木の弁当箱で、中は山盛りのスモークサーモンとイクラご飯。弁当箱はリユースされるらしいです。

昼からは、デンマークの社会保障制度の元に集められたデータの活用可能性、ITやAIの活用事例など、非常に興味深い内容でした。最後のセッションは耳が聞こえにくいなど、患者代表の方から、技術開発や社会参加について。とてもデンマークらしいセッションでした。

スコットランドのイベントは、その週の月曜日にまず東京のイギリス大使館であり、私は保健福祉担当大臣(内閣官僚)他、数名が登壇するパネルの司会を務めました。スコットランドにはNHS(国民皆保険制度)のデータがあるので、それが活用できることをウリに、企業誘致をしていました。

大使館イベントは、ジュリア・ロングボトム大使も出席し、盛大な会でした。大使館と公邸は皇居の前の素晴らしい立地にあり、緑の芝生が広がり、キルトを着た男性がバッグパイプを演奏し、紅茶やウィスキーが振舞われました。北九州市の武内市長、日本生命・ニチイ学館の清水会長、東急不動産の丹下取締役等も参加していました。

スコットランドのイベント第二弾は万博会場のイギリス館で行われました。内容はほぼ同じですが、以前からメディヴァが一緒に仕事をしているスターリング大学認知症開発センターのレスリー・パーマー教授も登壇し、メディヴァとの関係性に触れ「国境を越えた取組みの成功の鍵は、お互いの信頼」と言ってくださったのは大変嬉しかったです。

デンマークもイギリスも、皆保険制度のデータが国の大事な資源であると認識し、それをテコに海外パートナーや投資の誘致を目指しています。日本もせっかくの医療介護、健診のデータなどなど莫大なものがあるのに関わらず、テコに出来ておらず、外にもPRも出来ていないのは勿体なさすぎます。GHeCの議題であったグローバル企業を育てるためにも、データの活用と国としての自信が大事だと、両国のプレゼンを聞いて強く思いました。

イギリス館では、パビリオンのツアーもあり、ウィスキーに加え、赤白のワイン、ジンも振舞われ、大変美味しく頂きました。バルコニーから見る夕方から夜の大屋根リングが美しく、風も気持ちよく、ナイトショーも観れて、ちょっと飲み過ぎたかもしれません。

万博そのものはデンマーク館の後、涼しくなった16時から22時くらいまで。予約は取ってなかったので、月の石も、澤先生の再生医療心臓も、イタリアの彫刻も見ていません。コモンズやフリーに入れる館を回りました。

でも結論から言うと、めちゃくちゃ楽しく、心底、行って良かったです!
何が良かったか?一番良かったのは、コモンズ。マイナーな国々(失礼!)が共同で展示しています。何の統一感もなく、文化祭のノリ。
パキスタンの展示は、ピンクの岩塩の塊。巨大な岩塩が積み重なっているだけの展示。触るとひんやりします。舐めてみたい衝動を抑えるのが大変でした。
東ティモールの展示は、コピ・ルアク(ジャコウネコがコーヒー豆を食べた糞から取れるコーヒー)の取れたて現物!

コンゴ、南スーダン、ギニア等々のアフリカの国々はカラフルな写真に溢れていました。タジキスタンも面白そう、モンゴルやラオスは懐かしい。サントメ・プリンシペやブルキナファソってどこ??

コートジボワールは改めて「cote d‘ivoire」であるとの表記を見て、「国名って象牙海岸、そのままやん」と象牙だけでなく、奴隷がここから船積みされた歴史を感じました。コートジボワールだけでなく、アフリカの国々の多くは奴隷の子孫を呼び戻し、努力して産業を興していることをアピールしていました。展示を見ると、いかに西洋の諸国が現地の文化を破壊してきたか、を強く感じます。

単独パビリオンとしては、予約が要らず、割とすいていたUAE、カタール、アゼルバイジャンなどを回りました。中央アジア、中東も面白いですね。
カタールって、半島なので海があるって知っていました?石油で国が潤う前は、命がけの真珠獲りが主な産業だったようです。UAEでは、国中に広がる砂漠のあちこちから採取した砂が飾られていました。場所によって、砂の色って違うんですね。驚き、です。

晩の8時から始まるライトショーは1000機のドローンを使い、圧巻。最後に、東と西のゲートはあちらという表示が空中に出るのも親切。
万博は期待値の1000倍は楽しく、いろいろな展示を巡り、是非現地に行ってみたい、という思いを強くしました。会社なんかやっている場合じゃないわ、さっさと引退して世界巡りしなくちゃ、アフリカも中央アジアも中東も行かなくちゃ、という思いを強くしました。

最後にミャクミャクの前でご機嫌で自撮りし、「ミャクミャク、馬鹿にしてごめん!」と謝りました。
大阪にいたら年パス買うのに。あー、残念。10月13日の閉会までに、また行きたいです!