2024/10/22/火
大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」
海外出張の話が続きましたが、10月初旬にはニセコ町に行ってきました。
メディヴァが行う地方行政向けコンサルティングの一環です。とは言いつつ、ニセコ町も周辺の町村も残念ながら、まだクライアントではありません。
「健康まちづくりフォーラム」という官民連携アクティビティがあります。
東急不動産が運営する生涯健康社会推進機構と一般社団法人構想日本が主催しています。地方の基礎自治体と企業とマッチングし、双方の力を合わせて、町と住民を元気にしよう。そのためにはお互いを知って、何が出来るか考えよう。この活動をフォーラムでは冗談交じりに「明るい癒着」と呼んでいます。
メディヴァは過去何度かフォーラムに出席し、色々な町の首長や職員と面識を頂きました。
お手伝いに至った例としては、茨城県行方市があり、地元の唯一の病院が病棟を閉めた後、地域は何を目指すかという課題に取り組みました。
今回は、ニセコ、倶知安、蘭越、真狩、留寿都、喜茂別、京極の7町村の首長と、30カ所の企業が集まりました。
まずは2班に分かれて羊蹄山エリアの地域課題に対し、企業が自社の商品サービスを説明し、解決の可能性を探る4時間のディスカッションです。
メディヴァからは、まずは課題の整理です。
地域全体では定常的な医療アクセスを確保しにくい問題があります。人口あたりの医師数は北海道全体より更に少ないですが、高齢化は進んでいて、今後病床は削減される傾向にあります。このため、ハードに頼りすぎないコンパクトかつ柔軟な医療提供体制が望まれます。
地域全体で、多くの人がすでに生活習慣病を発症していることが疑われ、医療アクセスが難しい中、重症化のリスクが高い状態にあります。
個別の町でみると、例えば倶知安町は男女ともに空腹時血糖が国の水準を超え、がん・腎不全の死亡率が高くなっています。
蘭越町は空腹時血糖・血圧ともに高く、虚血性心疾患、脳血管疾患、COPD、肺がんなどの死亡率が高くなっています。
真狩村は老衰での死亡も多いですが、虚血性心疾患、腎不全、肺・膵臓・子宮がんの死亡率も高くなっています。
いずれも近隣での受診は難しく、例えば糖尿病の患者さんが治療を受けるために、倶知安町では4分の1、蘭越町では3分の2,真狩村では93%が町村外に行っています。
こういう地域では、勿論、救急、産科などへの対応も重要ですが、疾病を早期に発見し、軽症の間に専門的な治療を受けて悪化させないことも大事です。
メディヴァは、規制緩和で可能となったオンライン診療や「医師非常駐の診療所」制度を使った、ハコモノに頼らない地域医療の底上げを提案しました。
オンライン診療は、各地域に医療資源が存在する場合は、組み合わせて使うことができます。例えば、
更に本当に無医村になってしまった場合は、「医師非常駐の診療所」制度を活用し、医療機関を開設することも検討できます。
同制度は規制改革推進会議で討議して、実現にこぎ着けたものです。
通常、医療機関は常勤の「管理者」(=院長)を置かなくてはなりません。「管理者」は開院している時間の7割はその場にいなくてはならないと決まっています。例えば平日のみ開いている診療所でしたら、週に3.5日は特定の人がそこにいなくてはなりません。これが実はへき地に医師を呼び寄せる大きなハードルになっていました。
多くのお医者さんは、医師を志す中でへき地に行って役に立ちたい、と思ったことはあるそうです。ただ、実際そういう地域に行くとなると、医師としての研鑽が遅れる、家族が嫌がる、子供の教育問題がある等々、現実が立ちはだかります。
「医師非常駐の診療所」は、特定の医師をずっとある場に拘束せず、ローテーションを組むことを可能とした制度です。例えば、月の初めの週はA先生、次の週はB先生という形も可能です。
メディヴァは今、複数大学の総合診療医局と共同してコミュニティ&コミュニティホスピタル構想を進めています。大学医局としてはへき地支援は責務であり、教育的効果も高いので興味を持ってくれています。メディヴァが橋渡しをし、「医師非常駐の診療所」を開設し、医師が現地にいないときは、オンライン診療で繋ぎます。
各首長さんとのディスカションは初回でもあり、これらの構想そのものを即採用というわけではないですが、非常に興味を持ってくださいました。今後もお話は継続する予定です。
さて、このようにして1日の非常に密度の濃いディスカションが終わり、夜は宴会に突入!首長さん、役所の職員さん、企業さん、経産省の地方局の方、地元のベンチャーの方々等が集まり、地域の食材とお酒で乾杯!その後も熱いディスカッションは続きました。
今回、特に美味しかったのは、八海醸造グループのニセコ蒸留所が作っているクラフトジン「OHORO」。2024年にイギリスの国際的品評会で世界最高賞に輝いています。ジン好きとしては、外せません。勿論、自分へのお土産も買って帰りました。
かなり実りの多い、羊蹄山麓出張初日でしたが、実は次の日が更に凄かった!
これについては、次号「夏ニセコ『後期中年』コンドミニアム計画」でお伝えします。
是非、読んでみて下さい。