2024/08/27/火
大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」
8月の初めに、モンゴルに出張しました。人生初モンゴル。
小さいころから「はだか馬に乗ってモンゴルの草原を駆けて、弓を射る」ことを夢見ていた私にとっては、憧れの地です。
ただ、残念ながら、はだか馬には乗らず、弓も射ず、AI健診センターNURAのモンゴル2号店の開設式に出席してきました。
次の日は、1号店で健診を受けてきました。
AI健診センターNURAは富士フイルムが、インドの医療グループとの合弁で始めたものです。
まずはインドに4カ所作り、その後、モンゴル、ベトナムへ展開。メディヴァも当初コンサルタントとして関わっていました。
モンゴルはフランチャイズで、同国2番目の財閥が運営しています。
昨年の9月にモンゴル1号店をオープンして、瞬く間に1万5000人が受診。
あまりの盛況ぶりに2倍の大きさのものを今回開設。合計年間6万人を受け入れる予定だそうです。
モンゴルは日本の国土の4倍以上ある土地に人口300万人しか住んでいません。その中で6万人はすごいことです。
この財閥はバータルサイハンさんという方と奥さんのフランさんが一代で築きました。
バータルサイハンさんは、モンゴルの中でも僻地の出身で、子供時代はゲルに住んでいたそう。
国で1、2番の成績を取って日本への留学生に選抜されたので、日本語がとてもお上手。事業は富士フイルムの写真の代理店から始めました。
他の財閥同様、不動産、金融なども手掛けていますが、珍しいのはGOBIというブランドのカシミア製品やKFCなどのB toC事業も手がけています。
B to Cマーケティング力を活かし、SNSやcelebrityを駆使し、あっという間に健診文化を作り上げました。
NURAのfacebookは、30万人もフォローワーがいます。ウランバートルに着いて、ガイドに「NURA」と言うと皆が知っていて、驚きました。
1号店を受診しましたが、とても混んでいて、さらに驚きました。
・検査機器は富士フイルムの低線量CTをはじめ、信頼性の高い日本の機器を中心に取りそろえる
・AIが読影し、それを医師がチェックするので健診開始から結果説明まで2時間で終わる
・検査結果は、健康意識の低い人にも分かりやすいよう、総合診療医が画像やグラフで説明
・苦しい胃カメラは、呼気法によるピロリ菌検査に置き換え
・前の日にご飯食べてもよく、検査数値はそれを前提にカリプレーション
・日本的「おもてなし」を前面に出して、受付やサービススタッフだけでなく、医師までが丁寧に対応
これらは、元々のNURAのコンセプトですが、B to C事業を成功させてきただけあって、さすがの運営でした。
モンゴルをはじめ、まだ健診や画像診断が一般的でない国では、医師の技量よりAIに頼る方が良い結果を生む、とのこと。
健診はあくまでもスクリーニングで、問題がありそうなら提携先の大病院に紹介します。
モンゴルは心臓や肝臓の病気が多いので、早めに問題を見つけて生活習慣改善に目を向けてもらいます。
ブータンの国王夫妻も受診に来られ、ウズベキスタン、カザフスタンなどの旧ソ連圏の国からのお声が掛かっているそうです。
インバウンド患者数に伸び悩む日本の医療界も、学ぶことは大いにあるように感じました。
ところで、モンゴル馬ですが、鞍をつけてですが、乗りました。
ウランバートルから1時間も車で走ると、そこはもう草原です。緑の中に、ゲルが点々と建っています。
都心は人口がどんどん増え、殺人的に渋滞し、大変な混雑です。都会に住んでいる人も、抜け出して、自分のゲルに泊まりに行くそう。
もう少し走ると、ゲルもまばらで馬、羊、カシミア山羊、駱駝、ヤクが飼われています。
モンゴル馬は小さく、遊牧民のお兄さんの言うことを良く聞きます。一緒に少し走ってみました。
モンゴル語は難しい、英語は全く通じない、地下鉄は無い、タクシーがほぼ無い、ウーバーも無い、交通渋滞がひどい、WiFiも地方に行くと繋がらない、と出張や旅行で訪れるにはなかなか厳しい国ですが、景色と馬と人がとてつもなく魅力的でした。
いずれ、はだか馬に乗って走れるよう、また訪れたいものです。(誰か一緒に行きませんか?)