2026/10/02/金
医療・ヘルスケア事業の現場から
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【執筆】コンサルタント笠原/【監修】代表取締役社長 大石佳能子
目次
現在、住宅型有料老人ホームに併設する訪問看護ステーションは、これまでのビジネスモデルを見直さなければならない転換期を迎えています。その背景には、大きく分けて、26年度診療報酬改定と27年度介護報酬改定に伴う有料老人ホーム制度の見直しという2つの変化があります。
昨今、一部の報道でも取り上げられたように、同一建物への過剰な訪問による過度な収益モデルが問題視されていました。そのため26年度診療報酬改定では、こうした収益モデルにメスが入りました。従来の出来高算定の厳格化に加え、包括型訪問看護療養費が新設されましたが、どちらを選択しても、「短時間・高頻度」で訪問するモデルは成り立ちにくくなっています。
※基本療養費Ⅱや難病複数回訪問加算より減算タイミングが早く、夜間から早朝にかけての頻回訪問をより適正化させたいという意図があると考えられます。
高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーション向けに、訪問回数ではなく、1日あたりの訪問時間数による評価がされるようになりました。
これまで住まいやサービス種類が複雑なことによるサービス選択の難しさや、ケアプラン作成の際に、住宅型有料老人ホームの併設事業者等への誘導や過剰サービス提供のおそれが指摘されていました。加えて、「住宅型」は「介護付き」と比べて規制や人員基準が緩く、提供されるサービスの品質にばらつきがあることが課題とされていました。
そこで、介護報酬改定に伴い有料老人ホーム制度が見直され、全体の質の底上げと安心できる利用環境を実現するため、以下の2つの対策(一部のみ掲載)が進められます。
規制強化や質の底上げが求められる中で、「地域に選ばれる施設」であり続けるためには、今後施行される法令を遵守した適切な人員配置や質の高いケア環境の維持が必要になってきます。
持続可能な経営基盤を再構築するためには、保険外の適正な収益源を確保する売上向上施策と、提供サービスのムダを省く費用削減施策の両輪で取り組むことも求められます。以下に、具体的な施策の一例を紹介します。
これまで多くの住宅型有料老人ホームでは、関連法人からの介護・医療保険収入を前提とする一方、競合他社との価格競争もあり、入居費(家賃や管理費など)を低額に設定する施設が多くありました。しかし、今回の制度改正により、囲い込みへの規制や住宅型有料老人ホームの運営基準の厳格化が進められ、以前のように保険収入を中心とした運営を継続することが難しくなることが予想されます。
こうした法改正に準じた適切な人員・サービス体制を維持するために、低価格競争から脱却し、施設運営のベースとなる入居費を適正な価格へと見直すことや、利用者の希望に応じた自費サービス(リハビリ、買い物代行・通院付添等の生活支援サービス、研修を修了したスタッフによる傾聴サービス等)の開始や拡充の検討を進めている事業所も出てきています。
今後は厳格化された法令を遵守した運営に加え、より質の高いケア環境を提供できる施設としての付加価値を打ち出すことが必要になると考えられます。
次に、費用削減施策として、26年度の診療報酬改定で新設された包括型訪問看護療養費を選択した支援先の訪問看護ステーションにおける取り組みを紹介します。
減収の影響を抑えるためには、これまでの訪問時間と回数を見直し、サービス量を適正化することで、人件費を抑えることが必要となったため、AIを活用した訪問ルート最適化を行いました。
具体的には、疾患ごとに一定のアルゴリズムを用いて標準訪問時間を決め、各ケアの所要時間は、現場と相談しながら決定。疾患名×容態を選べば、最低限必要な訪問回数・所要時間・ケア内容が決まる仕組みとしました。
そこに、経管栄養やリハビリといった利用者特有の個別プランを上乗せすることで、過剰なサービス提供を防ぎ、事業所全体で必要となるケアの総訪問時間の適正化を図りました。
今回の診療報酬改定では、訪問時間や日数に応じた条件が設けられ、訪問すればするほど売上が伸びるビジネスモデルは難しくなりました。
ただし、売上向上施策や費用削減施策を組み合わせることで、継続的な運営は十分に可能と考えられます。
一方で、今回の改定に伴って訪問看護の回数を減らすなど、サービス提供を縮小する施設が増えた場合、本当に必要な量の訪問看護を受けられなくなる可能性もあり、政策上の課題になってくると思われます。
今後も案件等を通じて、今回の改定が患者・家族視点のものになっているか、その影響を見極めながら、政策動向を追っていきたいと思います。
本件について、ご相談やご質問がございましたら、ぜひ一度お問い合わせください。
監修
大石 佳能子
大阪大学法学部卒、ハーバード・ビジネス・スクールMBA、マッキンゼー・アンド・カンパニー(日本、米国)のパートナーを経て、メディヴァを設立。
医療法人社団プラタナス総事務長。江崎グリコ(株)、マルホ(株)など各社の社外取締役、公益社団法人経済同友会幹事、一般社団法人 Medical Excellence JAPAN副理事長。
また、大阪大学運営方針会議委員、福島県立医科大学経営審議会学外委員や慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科委員、ハーバード・ビジネス・スクールの日本諮問委員を務める。
政府関係では、規制改革推進会議専門委員、東京都医療DX推進協議会委員の他、経済産業省、内閣官房等の有識者会合の各委員を歴任。