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2026/10/02/金

医療・ヘルスケア事業の現場から

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診療報酬・制度改定を乗り越える!住宅型有料老人ホームに併設する訪問看護の経営再構築にむけた在り方

【執筆】コンサルタント笠原/【監修】代表取締役社長 大石佳能子

はじめに:併設型訪問看護ステーションを取り巻く2つの変化

現在、住宅型有料老人ホームに併設する訪問看護ステーションは、これまでのビジネスモデルを見直さなければならない転換期を迎えています。その背景には、大きく分けて、26年度診療報酬改定と27年度介護報酬改定に伴う有料老人ホーム制度の見直しという2つの変化があります。

1.診療報酬改定により、実態に即したサービスの提供へ

昨今、一部の報道でも取り上げられたように、同一建物への過剰な訪問による過度な収益モデルが問題視されていました。そのため26年度診療報酬改定では、こうした収益モデルにメスが入りました。従来の出来高算定の厳格化に加え、包括型訪問看護療養費が新設されましたが、どちらを選択しても、「短時間・高頻度」で訪問するモデルは成り立ちにくくなっています。

出来高算定で主に厳格化された内容
  • 人数区分の細分化
    改定により、同一建物・同日訪問人数の区分が細分化されました。訪問人数が多い区分ほど減算が強化されており、特に50名以上担当している建物を訪問する場合には、大きな影響があります。
    • 基本療養費Ⅱや難病等複数回訪問加算は、同一建物での3人以上の訪問については従来は同一区分でしたが、改定後は10人以上の区分が3区分に細分化されています。
    • 夜間・早朝訪問看護加算/深夜訪問看護加算は、同一建物での訪問人数に規定はありませんでしたが、改定後は5区分に細分化されています。
  • 一か月あたりの訪問日数による金額の逓減
    改定により、同日訪問人数に応じて金額が逓減される仕組みが導入されました。
    • 基本療養費Ⅱや難病複数回訪問加算では、月の訪問日数が21日目以降は減算されます。
    • 夜間・早朝訪問看護加算/深夜訪問看護加算では、月の訪問日数が16日目以降は減算されます。

※基本療養費Ⅱや難病複数回訪問加算より減算タイミングが早く、夜間から早朝にかけての頻回訪問をより適正化させたいという意図があると考えられます。

  • 20分未満の訪問の扱い
    適切な訪問時間として30分以上を標準とし、20分未満の訪問は、基本療養費Ⅱ・その他加算の算定が不可となりました。
包括型訪問看護療養費の新設(定額制)

高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーション向けに、訪問回数ではなく、1日あたりの訪問時間数による評価がされるようになりました。

  • 出来高算定よりも算定要件が多い
    1日の訪問時間が60分以上である場合は、1日3回以上の訪問が必要になる等の要件が設けられています。

2.介護報酬改定による有料老人ホームの品質の底上げ

これまで住まいやサービス種類が複雑なことによるサービス選択の難しさや、ケアプラン作成の際に、住宅型有料老人ホームの併設事業者等への誘導や過剰サービス提供のおそれが指摘されていました。加えて、「住宅型」は「介護付き」と比べて規制や人員基準が緩く、提供されるサービスの品質にばらつきがあることが課題とされていました。
そこで、介護報酬改定に伴い有料老人ホーム制度が見直され、全体の質の底上げと安心できる利用環境を実現するため、以下の2つの対策(一部のみ掲載)が進められます。

  • 囲い込み対策の強化による過剰なサービス提供や不当な誘導の防止
    • 事業所間の独立性の確保
      特定の介護サービス事業者の利用を入居要件とすることの禁止や、ケアマネの独立性確保に向けた方針策定・公表等の導入
    • 新たな相談支援類型の導入
      ホームと対等な立場でケアプラン作成や地域生活相談を行う登録施設介護支援を創設
  • 住宅型と介護付きの制度上の均衡確保による安全・品質の向上
    • 基準・規制の整備
      運営・人員基準や利用者保護に関する規制を新たに導入

規制強化や質の底上げが求められる中で、「地域に選ばれる施設」であり続けるためには、今後施行される法令を遵守した適切な人員配置や質の高いケア環境の維持が必要になってきます。
持続可能な経営基盤を再構築するためには、保険外の適正な収益源を確保する売上向上施策と、提供サービスのムダを省く費用削減施策の両輪で取り組むことも求められます。以下に、具体的な施策の一例を紹介します。

売上向上施策

入居費の値上げや自費サービスの上乗せ

これまで多くの住宅型有料老人ホームでは、関連法人からの介護・医療保険収入を前提とする一方、競合他社との価格競争もあり、入居費(家賃や管理費など)を低額に設定する施設が多くありました。しかし、今回の制度改正により、囲い込みへの規制や住宅型有料老人ホームの運営基準の厳格化が進められ、以前のように保険収入を中心とした運営を継続することが難しくなることが予想されます。

こうした法改正に準じた適切な人員・サービス体制を維持するために、低価格競争から脱却し、施設運営のベースとなる入居費を適正な価格へと見直すことや、利用者の希望に応じた自費サービス(リハビリ、買い物代行・通院付添等の生活支援サービス、研修を修了したスタッフによる傾聴サービス等)の開始や拡充の検討を進めている事業所も出てきています。

今後は厳格化された法令を遵守した運営に加え、より質の高いケア環境を提供できる施設としての付加価値を打ち出すことが必要になると考えられます。

費用削減施策

次に、費用削減施策として、26年度の診療報酬改定で新設された包括型訪問看護療養費を選択した支援先の訪問看護ステーションにおける取り組みを紹介します。

減収の影響を抑えるためには、これまでの訪問時間と回数を見直し、サービス量を適正化することで、人件費を抑えることが必要となったため、AIを活用した訪問ルート最適化を行いました。

  • 疾患・容態別の標準訪問時間の設定
    まずはAIに業務時間を学習させるため、訪問時間・回数の基準を明確にし、1日あたりの事業所全体での総訪問時間を可視化することとしました。

具体的には、疾患ごとに一定のアルゴリズムを用いて標準訪問時間を決め、各ケアの所要時間は、現場と相談しながら決定。疾患名×容態を選べば、最低限必要な訪問回数・所要時間・ケア内容が決まる仕組みとしました。
そこに、経管栄養やリハビリといった利用者特有の個別プランを上乗せすることで、過剰なサービス提供を防ぎ、事業所全体で必要となるケアの総訪問時間の適正化を図りました。

  • AIを活用した1日の訪問ルート(業務スケジュール)の自動出力
    1日あたりの入居者別の総訪問時間など、いくつかの項目をAIに学習させ、一度、疾患名×容態の標準訪問時間を設定すれば、訪問ルート表を自動出力できる仕組みを構築しました。
    その結果、これまで管理者が行っていた、訪問時間やスケジュールの調整業務が削減され、AIの出力に要する5分程度で訪問ルートを作成できるようになりました。

まとめ

今回の診療報酬改定では、訪問時間や日数に応じた条件が設けられ、訪問すればするほど売上が伸びるビジネスモデルは難しくなりました。
ただし、売上向上施策や費用削減施策を組み合わせることで、継続的な運営は十分に可能と考えられます。
一方で、今回の改定に伴って訪問看護の回数を減らすなど、サービス提供を縮小する施設が増えた場合、本当に必要な量の訪問看護を受けられなくなる可能性もあり、政策上の課題になってくると思われます。

今後も案件等を通じて、今回の改定が患者・家族視点のものになっているか、その影響を見極めながら、政策動向を追っていきたいと思います。
本件について、ご相談やご質問がございましたら、ぜひ一度お問い合わせください。

まずは相談する


監修

大石 佳能子
大阪大学法学部卒、ハーバード・ビジネス・スクールMBA、マッキンゼー・アンド・カンパニー(日本、米国)のパートナーを経て、メディヴァを設立。
医療法人社団プラタナス総事務長。江崎グリコ(株)、マルホ(株)など各社の社外取締役、公益社団法人経済同友会幹事、一般社団法人 Medical Excellence JAPAN副理事長。
また、大阪大学運営方針会議委員、福島県立医科大学経営審議会学外委員や慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科委員、ハーバード・ビジネス・スクールの日本諮問委員を務める。
政府関係では、規制改革推進会議専門委員、東京都医療DX推進協議会委員の他、経済産業省、内閣官房等の有識者会合の各委員を歴任。

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