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2026/07/27/月

医療・ヘルスケア事業の現場から

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検索行動の変化とクリニックのSNS運用

【執筆】コンサルタント酒井/【監修】取締役 小松大介

なぜ今、クリニックのSNS運用が重要なのか

患者がクリニックを探す方法は、大きな転換期を迎えています。かつては「地域名+診療科」でWeb検索し、ホームページを確認する方法が中心でした。しかし現在は、Google検索に加え、GoogleマップやInstagramなどを横断しながら、受診先の候補を探す行動が一般的になっています。

さらに近年は、検索結果を一件ずつ確認するだけでなく、生成AIに症状や希望条件を文章で相談し、必要な情報や選択肢を整理してもらう検索行動も広がっています。Googleでも「AI Overviews」や「AI Mode」の導入が進み、患者が医療機関を見つける経路は、これまで以上に多様化しています。

こうした中で注目されるのが、一定の条件を満たすInstagramの投稿やリールが、Googleなどの検索結果に表示されるようになったことです。これまで主にフォロワーへ届けていた投稿が、地域名や症状、診療内容を検索した患者にも届く可能性が生まれました。SNSは今や、自院を見つけてもらうための重要な接点です。

SNSを「お知らせの場」ではなく「受診前の判断材料」として捉える

多くのクリニックでは、SNSを休診日や予防接種開始のお知らせなど、ホームページを補足する情報発信の場として運用しがちです。しかし患者が求めているのは、単なる事務連絡だけではありません。「自分の症状を相談してもよいか」「安心して受診できそうか」を判断するための情報を探しています。

見られているのは、診療内容や診療時間だけではありません。院内の雰囲気、医師やスタッフの話し方や人柄、患者への向き合い方、説明の分かりやすさ、院内の清潔感なども重要な判断材料です。投稿や動画を通じて受診時の様子を具体的にイメージできれば、患者の不安や心理的なハードルを和らげられます。

SNSは、患者が来院前にクリニックの雰囲気や考え方に触れる「受診前の疑似体験の場」です。「ここなら相談できそう」「自分に合いそう」と感じてもらうことが、受診先として選ばれる動機につながります。

SNSで関心を持ち、Googleマップの口コミで確認する

SNSでクリニックに安心感を持った患者が、そのまま受診を決めるとは限りません。多くの患者は、SNSをきっかけに関心を持った後、Googleマップの口コミを確認し、実際に受診した人の体験と照らし合わせながら判断します。SNSがクリニック自身による情報発信であるのに対し、口コミは第三者の視点から受診時の様子を知る材料になるためです。

SNSで丁寧な診療方針を発信していても、口コミに説明不足やスタッフ対応への不満が多ければ、発信内容との違いに不安を持たれます。一方、日頃から院内の様子や診療への考え方を具体的に発信していれば、一部の低評価だけでなく、複数の情報を踏まえて判断してもらいやすくなります。

SNSは受診前の期待や安心感を育む場であり、口コミは実際の患者体験を確認する場です。SNSでの発信内容と、患者への対応に一貫性を持たせることで、ネット上で得た関心を実際の受診へとつなげやすくなります。

患者の不安を減らす発信内容と媒体の使い分け

クリニックが発信すべきなのは、派手な宣伝ではなく、患者の「受診前の不安」を解消する情報です。対応する症状、診療内容、初診の流れ、予約方法、検査手順、よくある質問などを分かりやすく伝えることで、患者は受診時のイメージを持ちやすくなります。医師の考え方やスタッフ、院内の様子も安心感につながります。

また媒体は、目的に応じて使い分けることが重要です。

  • Instagram
    メリット:写真や動画で院内の雰囲気や人柄を伝えやすく、Google検索から見つかる可能性もある。
    デメリット:制作に手間がかかり、詳しい説明には向きにくい。
  • X(旧Twitter)
    メリット:休診や予約状況など、即時性の高い情報発信に向く。
    デメリット:投稿が流れやすく、誤解や批判を招くリスクがある。
  • LINE公式アカウント
    メリット:予約案内や定期受診のリマインドなど、既存患者の行動を促しやすい。
    デメリット:未登録の新規患者には届けられない。

SNSで関心と安心感を生み、詳しい情報はホームページへ、予約や再受診はLINEへつなぐなど、各媒体の役割を明確にすることが重要となります。

なぜ医療機関のSNS運用は続かないのか

医療機関のSNS運用が続かない大きな理由は、通常業務の合間に「片手間」で始めてしまうことです。院長や特定のスタッフに負担が集中すると、診療や事務が忙しくなるにつれて更新は後回しになりますし、毎回新しい企画を考えようとすると、ネタ切れや制作負担が生じます。担当者の異動や退職によってノウハウが失われ、アカウントが放置されるケースも少なくありません。

さらに医療機関には、医療広告ガイドラインへの配慮、個人情報の保護、医療情報の正確性が求められます。確認担当や承認手順が曖昧なままだと、担当者は誤解や炎上、ルール違反を恐れて発信をためらい、確認作業そのものも負担になります。

SNS運用が続かないのは、担当者の熱意が足りないからではありません。発信テーマ、役割分担、確認手順といった仕組みがないまま、個人のマンパワーに依存していることが根本的な原因です。

無理なく続けるための仕組みと実践事例

SNSを無理なく継続し、集患につなげるには、「背伸びをしない運用」と「小さな仕組み化」が重要です。毎回ゼロから企画を考えるのではなく、発信テーマの型をある程度決めておくことで、通常業務との両立がしやすくなります。

支援先の内科系クリニックでは、「季節に応じた健康情報」「クリニックや設備の紹介」「医師の学会活動」などを中心に発信しています。最近では、医師が自身の減量に向けてトレーニングする様子も紹介し、専門性だけでなく、医師の人柄や親しみやすさが伝わる投稿にも取り組んでいます。

Googleマップの口コミにも一件ずつ丁寧に返信しています。好意的な口コミには、単にお礼を述べるだけでなく、スタッフ一同が喜んでいることや、日頃心掛けている点を評価してもらえたことへの感謝を具体的に伝えます。厳しい評価には、不快な思いをさせたことへのお詫びに加え、可能な範囲で理由や改善策を示しています。ただし、返信によって受診の事実や診療内容などの個人情報を明らかにしない配慮も必要です。

こうした取り組みを重ね、現在は45件の口コミで評価4.7となっています。ホームページへのアクセスも好調で、新患の約半数がホームページを見て来院を決めています。

おわりに

クリニックのSNS運用で大切なのは、投稿数や見栄えを競うことではなく、患者に必要な情報を分かりやすく、誠実に届け続けることです。

最初から完璧な運用を目指す必要はありません。まずは自院が伝えるべきことを整理し、担当者や確認方法を決め、無理なく続けられる形で始めることが第一歩です。

一つひとつの発信や口コミへの対応は小さな取り組みに見えても、その積み重ねが患者との接点を増やし、クリニックへの信頼を育てます。自院らしい情報発信を着実に続けることが、これからの時代に選ばれるクリニックづくりにつながります。

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監修者
小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他

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