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2026/05/01/金

医療・ヘルスケア事業の現場から

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リハ特化型デイサービスの構造分析と改善戦略

【執筆】コンサルタント伊野/【監修】執行役員 柿木哲也

はじめに

リハビリに特化したデイサービスは、高齢者の自立支援、介護予防を担う重要なサービスです。特に退院後の生活期リハビリを必要とする高齢者にとって、通所リハビリは生活機能の維持や向上に直結します。支援先のある法人では、グループ内に医療資源である病院を持ちながら、デイサービスの稼働率が伸び悩むという課題を抱えていました。このレポートでは、その背景にある構造的問題を整理し、改善に向けた取り組みを具体例として挙げながらその戦略をお示しいたします。

医療と介護の連携不全

今回紹介するデイサービス施設は、病院など複数の施設を抱える法人Aのグループ法人に属しています。理事長は法人Aの理事長でもあり、組織としての結びつきは強く、現施設長は法人Aの病院のリハビリ科からの出向者であり、人材交流も行われています。表面的には、医療と介護の連携がスムーズに進むための条件が揃っているように見えます。

ところが、退院支援カンファレンスやMSW(医療ソーシャルワーカー)のルートの中に同施設はほぼ存在しておらず、退院者の流入がほとんどない状況でした。退院直後はリハビリ需要が最も高い時期であり、ここを取りこぼすことは稼働率に大きな影響を与えます。

稼働を阻害するボトルネック

法人Aの病院内にある「心理的距離」

法人Aの病院内部では「別法人の別組織」という相手の事や相手の顔が分からない不安が根強くあり、退院後の利用先として積極的に紹介されていませんでした。特にリハビリ科のPT(理学療法士)からの推薦が少なく、退院支援のルートに組み込まれていない状況が続いていました。PTは患者の状態を最も理解している専門職であり、利用先の選定に大きな影響力を持ちます。しかし、病院内で同施設の強みやサービス内容が十分に共有されておらず、積極的な紹介につながっていませんでした。「別組織だから」「情報がないから」という理由で紹介が進まない状況は、グループ法人としては大きな損失になっていると考えられます。

本来、退院後の生活期リハビリの受け皿として最も相性が良いはずのデイサービスが、病院側の選択肢に入っていなかったのです。この「心理的距離」が、連携不全の本質であると考えられます。

成長を止める組織構造

①紹介元の偏り

現在の利用者獲得は、馴染みのケアマネジャーからの紹介に依存しています。紹介元が固定化すると、新規利用者の増加が頭打ちになり、稼働率の伸びしろが限定されます。また、ケアマネの異動や退職など外部要因に左右されやすく、安定した利用者確保が難しくなります。

②稼働を上げきれない運営体制

リハ特化型であるがゆえに、PTが1人の利用者に掛ける時間が長く、結果として受け入れ人数の制限につながりました。さらに、当初レクリエーション利用者の受け入れを積極的に行っていなかったため、利用者の間口が狭くなっていることも稼働低迷の要因の1つでした。介護職員がリハビリ提供に関与できていない点も、PTの負担を増やし、稼働率向上の妨げとなっていました。

改善戦略:稼働率向上に向けた4つのアプローチ

ここからは、現状の構造的課題を解消し、事業の成長につなげるために、具体的な改善策をお示しいたします。

①退院予定者の確保:法人Aの病院との顔の見える関係作り

まず最優先すべきは、法人Aの病院との関係を改善することです。

「病院内での同施設の役割・サービス内容を再共有」「退院支援カンファレンスへの参加」「PT・MSWとの情報交換の定例化」「病院内でのパンフレット設置や説明会の実施」、これらを通じて、病院側に「退院後の第一選択肢」として認識してもらうことが重要です。退院直後の利用者を確保できれば、稼働率は安定し、リハ特化型としての強みを最大限に発揮できます。これらを円滑に行うために、施設間で顔の見える関係作りが重要です。

②医療機関へのアプローチ拡大

グループ内連携だけに依存するのはリスクが高いと考えられます。近隣の整形外科クリニックやリハビリテーション科のある医療機関、地域包括支援センターなど、外部医療機関との関係構築を進めることで、紹介元の多様化が可能になります。医療機関からの紹介は、利用者の状態が比較的安定しており、継続利用につながりやすいというメリットもあります。

③紹介元の拡大:ケアマネ・家族へのアプローチ

馴染みのケアマネ以外にも積極的に訪問し、関係構築を図る必要があると考えられます。また、利用者や家族向けの体験会や説明会を開催し、サービス内容を直接伝えることで、紹介の幅を広げることができます。地域イベントへの参加やSNS・広報誌による情報発信も有効です。紹介元が多様化すれば、利用者獲得の安定性が増し、稼働率向上につながります。

④PTへの業務集中を避ける運営改革

PTの負担を軽減し、受け入れ人数を増やすための体制改革が必要です。

  1. 介護職員の活用
    介護職員が生活リハビリやレクリエーションを担当し、PTは専門的リハビリに集中します。これにより、PTの時間を効率的に使うことができます。
  2. レクリエーション利用者の受け入れ
    リハ特化にこだわりすぎず、軽度者や運動習慣づくりを目的とした利用者も受け入れることで、利用者層を広げることができます。
  3. サービスの多様化
    個別リハだけでなく、集団運動や介護予防プログラムなど、多様なサービスを提供することで、幅広いニーズに対応できます。

まとめ:構造を変えれば、デイサービスは成長できる

今回の分析から明らかになったのは、「グループ法人間の交流の希薄さ」「紹介ルートの偏り」「運営体制の硬直化」という「構造的な問題」が稼働率の伸び悩みを生んでいるという点です。
しかし、「病院と顔の見える関係づくり」「外部医療機関との関係構築」「紹介元の多様化」「PT負担の軽減とサービスの多様化」といった改善策を実行することで、構造を変えることができると考えられます。
今回取り上げた支援先では、お示しした改善策のうち、「紹介元の多様化」及び「PT負担の軽減とサービスの多様化」について取り組みを始めました。「PT負担の軽減とサービスの多様化」の部分では、今まで午前・午後共に定員の6~7割程の利用だったところが、8~9割程埋められるようになり、一定の成果が出始めています。

リハ特化型デイサービスは、地域の高齢者の生活を支える重要なインフラです。その価値を最大化するためには、医療と介護の境界を越えた連携と、柔軟な運営体制の構築が不可欠です。今回の取り組みをお示しすることで、同施設と同じような課題を抱える施設の改善に寄与することができれば幸いです。

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監修者

柿木 哲也
東京都出身。横浜市立大学商学部卒業。富士重工業(現SUBARU)にてスバル車の 商品企画、国内及び海外販売を担当する。その後、米コンサルティング会社ベリングポイント(現PWCコンサルティング)の戦略・業務グループにて、各種プロ ジェクトに従事。2008年1月よりメディヴァに参画。 一般病院、精神科病院の事業デューデリジェンス、新規事業計画策定、経営再生 計画策定、再生実務、診療所の開業及び経営支援など幅広い支援を行っている。

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