現場レポート

2025/07/14/月

医療・ヘルスケア事業の現場から

病棟看護業務の業務改善の検討方法について

【執筆】コンサルタント西田/【監修】取締役 小松大介

看護業務量の増加が与える影響について 

看護師数確保を目的として、何らかの離職防止への取り組みを実施している医療機関は多いと思います。
看護師が離職する代表的な要因として、人間関係や不規則な勤務形態によるストレスが考えられますが、2022年の労働実態調査によると、これらに加え、人手不足による一人当たりの業務負荷(量)の増加が、大きなストレス要因となっていることが読み取れます。

看護職員の労働実態調査(ストレス要因)
出所:日本医療労働組合連合会,2022年看護職員の労働実態調査「報告集」より

看護職員の労働実態調査(十分な看護ができない理由)
出所:日本医療労働組合連合会,2022年看護職員の労働実態調査「報告集」より

また、同調査の「十分な看護が提供できない主な理由」としては、「人員が少なく業務が過密」や「看護業務以外のその他の業務が多すぎる」という回答が多くを占めていたと報告されています。
これらの調査結果から、看護師一人当たりの業務量の増加は、働く側の精神面に影響するだけでなく、医療サービスを受ける患者側にも、十分な看護が提供されないなどの影響が出ることが推察できます。

一人当たりの業務量軽減への対策は、人員を増やすか、看護業務内容を見直すかに大別されます。しかし、前者は人件費との兼ね合いや、近年の人材採用が困難な状況も鑑みると、容易にはできません。そのため、後者の業務内容を見直すことを、医療現場では積極的に進めていく必要性があります。

筆者は急性期病院の病棟などで勤務していた経験もあり、支援先からの訪問調査の要請を受け業務改善に関わりました。今回は「病棟での業務効率化(業務改善)の進め方」の一例を、支援先での事例を交えてご紹介します。

現状把握と課題、改善の方向性の検討例

(1)業務改善のフレームワーク「ECRS」 

業務改善の方向性の決め方として、一般的にECRSという方法があります。ECRSは業務を効率化する上での、排除(Eliminate:取り除く)・結合(Combine:繋げる)・入れ替え(Rearrange:交換)・簡素化(Simplify:単純にする)の4つの要素の略称です。改善の効果としては、一番目の排除(Eliminate:取り除く)が最も大きいといわれていますが、完全に排除が困難な場合は、ECRSの順に対策の方向性を変えていく必要があります。各施設の状況や、医療安全及び倫理的な面も鑑みて、検討してください。

(2)病棟における看護業務内容の全体像の把握

看護業務を直接業務と間接業務に分類すると、看護業務の全体像が把握しやすいです。完全に切り分けられない業務項目もあると思いますが、以下のように項目別に列挙して、実際の業務を把握できる状態にしておくと、どこに問題が発生しているのかについて整理しやすいです。

直接業務:保清ケア(清拭、更衣、入浴など)、検温(バイタルサイン測定や観察など)。
間接業務:薬剤管理業務、記録・事務的な入力。

(3)調査方法について

調査方法については、大きく分けて定性調査と定量調査があります。

 調査方法
定性調査ヒアリング、現場見学、アンケート調査など
定量調査タイムスタディ、MIERU(弊社開発)


弊社開発アプリのMIERUでは、各業務に費やす時間を簡単に測定できるようになっており、業務量の可視化に役立ちます。詳しくは以下をご参照ください。
https://mediva.co.jp/news/products/12478/

※「MIERU」はコンサルティングサービスの一部として提供し、“業務量の調査のみ”のご依頼はお受けしておりません。

両方または、いずれかの方法で自施設の問題と課題の所在を明らかにし、前述したECRSの概念を用いて改善の方向性を検討してください。

事例内容

ある現場ではヒアリングを通して、看護師が離職する要因として業務量の多さが上がっていました。そのため、看護師の採用と同時に、現場の業務改善の方向性を決めていくことになりました。以下で検討・立案した対策案を簡単にご紹介いたします。

現場のヒアリングや現地見学などを通して調査すると、主に間接業務面での問題が散見される状況でした。それぞれの問題点の原因は、人員不足による一人当たり業務量の増加、院内の業務範囲やルールが改定されておらず、臨床の状況に適応したものになっていないことが考えられました。

ここでは、ヒアリングや現地調査から見えてきた、代表的な問題点3つを記載します。

  • 入退院件数の増加による間接業務の増加。
  • 持参薬管理業務が煩雑。
  • 看護記録(特に叙述記録)の記載に時間がかかっている。

それぞれの問題と業務内容についてECRSの概念を基にして改善の方向性と対策を立案した内容を以下のように簡単に表にいたしました。

項目E(排除)C(結合)R(交換)S(簡素化)改善の方向性対策
オリエンテーションや事務的作業オリエンテーションや事務的作業の削減事務員などへの業務移管
持参薬の管理業務持参薬の管理業務の削減薬剤部への業務移管
看護記録(叙述記録)×看護記録の簡略化院内看護記録ルールの見直し

例えば、入院時のオリエンテーションや事務的作業については、ECRSで検討するとE(排除)、または、簡素化することも可能ではあると思います。このような場合、改善効果や院内のリソースなどを考慮した上で、どの方向性が現実的に妥当なのかを考えていく必要があります。今回の事例ではそれらを考慮した上で、「オリエンテーションや事務的作業の削減」と方向性を決め、他職種への業務移管という対策を立案しました。

また、上記の場合、他職種との連携も必要となるため、看護部のみの課題としてではなく、病院全体の課題として認識していただけるように提言しました。

このように、ECRSでの分別と得られる効果や院内のリソース、医療安全の面等、多角的に検討することで、方向性や現実的な改善対策を立案できると考えます。

おわりに

看護業務の効率化の必要性は、年々高くなってきています。ご紹介した方法などで、改めて自施設の看護業務の見直しをしてみてはいかがでしょうか。実際に医療機関の看護部のみで実施することは、なかなかハードルが高いことも多いと思います。業務の効率化は、部署のみの課題ではなく、病院全体の課題と認識して、経営陣に現場の意見を届けることも必要になってくるでしょう。看護業務の効率化の支援でご相談がある場合は、弊社までご連絡ください。

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監修者

小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他

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