2023/04/07/金
医療・ヘルスケア事業の現場から
コンサルタント 山本桂子
最近弊社には、病院様から「健診センターを作って本格的に取り組みたい」もしくは「健診事業があまりうまくいっていないので業務改善したい」という問い合わせが多くなっています。
世の中で、予防医療が重視されてきていることに加え、健康経営が企業の健全性を測る尺度の一つとして注目され、企業が従業員の健診受診を重要視するようになってきたこと、健診が、自らの努力で大きな収益を上げる可能性を秘めた部門であることに医療機関側が気づいてきたことなどの理由により、病院内の健診部門が注目されてきているようです。そのため、これまで細々と行っていた健診事業を収益の柱として育てたい、地域に充実した予防医療を提供したいと考える医療機関が増えているようです。
健診に注力しようと考えた場合、どのような事に取り組めばよいのでしょうか?
検討すべきこととして
の3つが考えられます。
以下、一つずつ説明していきます。
目次
まず考えなければならないのが、「どんな健診施設(ターゲットと価格帯)を目指すのか?」です。 健診施設のタイプとしては、大きく分けて3つあります。
それぞれ単価が異なり(目安として定健1万円、生活習慣病予防2~2.5万円、ドック5万円)、必要な設備も違ってきます。 どれを選択するかの一つの目安は立地(背景市場)です。
などが考えられます。 人間ドックについては、自治体が補助を行っているところもあります。 立地に加えて、自院の設備やキャパも重要です。施設の中で、健診部門のレイアウトがどこまで可能かを検討します。
生活習慣病予防健診、人間ドックでは、外来との導線を分けることが望ましく、特に協会けんぽでは、実施機関に対して「健診の受付、待合室の表示が明確にされているとともに、健診部門と一般診療部門が、壁やパーテーション等により物理的に分離されている又は時間帯の調整などの適切な方法により区分され、健診に必要な更衣室を有していること」を求めています。
また人間ドックなど高級路線を考える場合は、女性向けには別ラインを作るなどの配慮も必要になってきます。 それらの条件を考えながら、自院がどの健診に主軸を置くのが適切かを決定します。
とはいえ、どれか一つに絞るというのは現実的ではないので、例えば生活習慣病予防健診を中心に据えつつ、定健などの事業所健診も空いた時間で可能な限り受け入れることを検討すべきでしょう。
機器が充実しているのであれば、人間ドックと生活習慣病予防健診に脳ドックなどの専門検査を実施するなどが考えられます。それによって自院が所有する高度な医療機器であるCT、MRI等活用の場にもなります。
機器の全てを健診部門専用として利用できるのであればよいのですが、通常は診療科と持ち合いになるので、受診者と患者の導線や機器のやりくりを検討する必要があります。そのためには、外来及び検査部門の理解と協力が不可欠です。
ドック中心なら、胃カメラは必須ですし、生活習慣病予防健診でも、胃カメラと胃透視をどのように組み合わせるかが重要になります。X線や心電図やエコーの各検査については、外来検査とどのように機器を融通しあうかが、健診数を増やしていくための肝になります。
また健診には繁忙期と閑散期があり、1日においても午前に業務が集中するので、看護師などを外来と共有する形で上手に配分することで効率化を図る必要もあります。
病院として、収益を伸ばしていく部門として健診を高く位置付け、全スタッフの協力を得られる体制を作ることが成功の大きなカギとなります。
健診の受診者数を増やすためには広報と営業の力が求められます。 医療機関によってはこれまで営業などしたことがないというところもあるかもしれません。しかし健診の場合、どの医療機関で健診を受けるかを受診者自らが選択するという側面が大きく、選ばれるための努力が必要になっています。 方法としては、
などが考えられます。 これ以外にも、健診を事業的に成功させるためには、短時間に1件でも多くの健診をこなすための予約の取り方、現場の回し方やそれをサポートする効果的なシステムの導入等、技術的に工夫すべき点がいろいろあります。
また最近は高級ドック、スマート脳ドック、心臓ドック、ロコモ対応など新しい健診の事例がいくつも出てきていますので、それらを上手に取り入れていくことで、利益の上積みを図ることが可能になります。
自分たちの努力で件数や売り上げを大きく伸ばす可能性のある部門である健診部門。一度自院の健診に対する取り組みを見直してみませんか?