2023/04/03/月

医療・ヘルスケア事業の現場から

収益向上は組織整備から  

コンサルタント 小嶋武仁

我々のコンサルタントの業務は、顧客である医療機関からの依頼に基づき決まります。  顧客からの依頼は多種多様ですが、中でも「収益の向上」は、多くの相談を受けております。私たちはこのような相談を受ける際に一過性の業績向上ではなく、「収益を上げ続ける組織」を作るご支援を大切にしています。これまでのコンサルティング経験を通じ、収益の向上が必要な局面に至った原因を突き詰めると、組織的な問題点に行き当たる事例を多く経験したためです。 

1. はじめに|管理職(リーダー)により大きく変化する組織

管理職によってその組織の構成員の成果やその部署の浮沈が決まると言っても過言ではありません。年功序列や年齢といった要素だけで管理職にすると、組織自体が機能しなくなります。組織の理念を理解し、管理職として組織の構成員に進むべき方向を明確に指し示す事が出来なければいけません。外部から経歴(経験)だけで管理職採用しても上手く行かないケースも多く、人財の育成も一朝一夕に行くものではない事も留意すべきでしょう。良くも悪くも管理職の任用(昇格・採用)は慎重に考えなければいけません。  
気負ってしまっているのか管理職になった時間が短いからか、何でも一人でこなそうとする方や逆に全てにおいて部下任せといった方は後々に苦労されているケースが散見されます。一方、部下の指向性に逆らわず、部下の長所を引き出していくリーダーの元には、自発的に業務に取り組む方が育ちやすい傾向があるように見受けます。  

   

2. 縦の連携|トップダウンとボトムアップ

組織の大小、歴史の長い短いに関わらず、どんな組織であれ、組織運用の仕方はリーダーによって変わってきます。  

初期、草創期の組織では、合議で納得性の高い一定の答えを出していたら思うように発展しないとの考えから、強烈な個性によるワンマンコントロールが行われている事例を多くお見掛けします。  

次に比較的安定期の組織ですが、安定期とは、リーダーが過度に介入しなくても一定のレベルにまではいく状態になっている組織です。但し、この場合は病院上層部の正しいリーダーシップがなければ、組織が正しい方向に進むことはありません。  

どちらも一長一短なわけですが、現状以上に発展しようとするならば、全員参加型の所謂ボトムアップされた組織形態を通じた組織の活性化が大切だと考えています。そう考える背景は医療や介護サービスは人財がいないと成立しませんが、より良い人財に留まり続けて頂くためには、リーダーから最前線の職員が日々の仕事を通じ自己実現や参画意識を感じられる状態が必要だと考えるためです。リーダーに関しても、その組織のフェーズに合わせて対応する事が求められますが、ボトムアップ型を基本スタンスとして、部下が迷った場合に決断し導けるリーダーが求められているように見受けます。  

1990年代後半から老若男女問わず、組織への拘りは終身雇用を謡っていた時代ほど強くはありません。特に医療業界は人財の流動化は顕著で、特にコメディカルの人達は引手あまた状態です。慢性的な人手不足の医療業界で、組織が面白くない、楽しくないと感じると、自分達の自己実現や参画意識を持てないと次の職場を求めて辞めてしまします。  

これからの時代、全員参画を通じた組織活性化がより必要と考えています。  

3. 横の連携|病院内の組織運営

次に病院組織の特徴として挙げられるのは、強烈な縦割り組織という事です。  

医療機関に勤務する人財の多くは国家資格を保持しており、医師は医師、看護師は看護師という部門別の縦割りになっており横の連絡はあまり密ではありません。連携を強固にするために、どのように横の連携を図るかは非常に大事なポイントです。  

医師は業界でのヒエラルキーのトップと位置付けられる場合が多いですが、医師がそのような考えに基づき言動してしまうと、その組織は上手く行きません。コメディカル・事務方の役割を尊重しもっと活性化する事が、ここ最近の診療報酬改定でも非常に重要視されています。病院に限らず事業会社でも重要であり、上から目線の命令ではなく、コーチング手法で、各人各々が、仕事上でどういうことを求め どういうことに迷っているか?を見極めて細やかな、指導ではなくコーチングにする事によって、その人に合った事を提案していくということになります。  

コーチングは、ギリシャ神話に「人を勇気づけ励ますもの」として登場しますが、簡単に言えば、ある課題に対して 部下に答えを教えるのではなく”気付き”を促す並走型の方法です。時間はかかりますが、部下のモチベーションを高く保つことになります。例えば私がお手伝いした中ですと、ある健診センターで、新人3名を受け持ちました。課題を共にクリアしていく毎に、彼らには自信が生まれ我々の間には、信頼関係が生まれました。自然と収益も上がり、最終的には年間収益が2倍となった事例がありました。    

4. 最後に  

今迄収益向上の為のアプローチ手法として、テクニックではなく組織風土をどの様に作っていくか?という事を述べてきました。 

 私は「より良い風土」と「適度な経営管理」が土台にあり、「正しい経営戦略」を立てることで組織は正しい方向に動くと考えています。   また組織を動かすのは人であり、人は「良い仕事をして褒められたい気持ちがあると考えています。  

可能な限りの最大限で、人が走りやすい環境を作り出すことが、 継続的に収益向上を図る大前提と考えています。  

病院経営に強いメディヴァの医療コンサルティングについて