2023/08/31/木
事例紹介
コンサルタント 小坂優介
課題:
病床数300床以上、職員数350名以上の比較的大規模な病院で長年、情報伝達の漏れやミスがあった。
解決策:
チャットツールを導入することで、これまでPHSやメール・電子カルテ等で行っていた情報共有を効率化。
結果:
●組織の末端まで情報がいきわたるようになった
●口頭よりも正確な情報伝達ができるようになった
●簡単な調整のために、わざわざ会議や電話をしなくてよくなった
●関係者へ一斉に情報共有できるようになった
医療機関ではPHSやメール、電子カルテ等で情報共有をしていることが多いのではないでしょうか?今回の支援先の病院は職員数が350名以上と比較的規模が大きく、長年「情報が伝わるべき職員に伝わらない」という課題を抱えていました。
例えば全職員に向けてお知らせをしたい場合、全部署にメールを一斉送信し、各部署内でメール文を印刷して掲示、または口頭で申し送りしていました。そのため、情報伝達の漏れが生じていましたし、スピードも欠けていました。特に看護職はシフト制で出勤日時が不規則なため、確実な情報伝達が難しい状況でした。
情報伝達の課題を解決するために、医療機関でいち早くビジネスチャットツール(今回の事例ではLINE WORKS)の導入を決断。前例が少ないこともあり、次の3ステップで導入を進めました。
Step1. 経営陣だけで数か月トライアル
経営陣によるトライアルを行い、十分に使えそうかを判断しました。またこの時点で、漏れなく情報を行きわたらせることを目的として“非常勤も含め全職員のアカウントを作成する”という方針を決めました。
Step2.一部の職員が試験的に運用
メールアドレスを持っている部署や担当者のアカウントを作成し、日常業務の連絡をLINE WORKSで行うように促しました。まずは事務部内で試験的に開始し、落ち着いたところで看護部やコメディカルの各部署での運用へ拡大。想定より早く定着できました。
Step3.全職員のアカウントを作成
ここでようやく全職員への導入を開始。事務方の職員を中心に「導入チーム」を結成し、運用上の役割分担、ガイドラインの作成・修正、導入の進捗共有などを随時行いました。また、「導入チーム」が積極的にLINE WORKSを使って情報発信することで、職員の使用への心理的ハードルを下げることを目指しました。
個人情報の取り扱い
機微な個人情報をクラウドサービスであるLINE WORKSに上げて良いのか、という疑問が度々投げかけられました。当初は患者氏名を送るのは禁止し、イニシャルで運用していましたが、患者を取り違えるリスクがあったため、最終的には「業務上必要最低限の範囲では送信可能」というルールを定めました。
未登録職員の存在
業務用端末を持っていない職員については私用のスマホ等に導入してもらう必要がありましたが、なかなか全職員の登録が進みませんでした。
当初は「私用端末に入れたくない」というような理由を想定していましたが、実際は「必要性を感じない」「面倒だ」「登録の仕方がわからない」といった消極的な理由が原因でした。そこで未登録者には個別に導入の必要性を説明することで、多くの職員が登録してくれるようになりました。
LINE WORKSによって、組織の末端まで正確な情報がいきわたるようになりました。また簡単な調整ならチャットでできるようになり、業務の質もスピードも向上。
実務面のメリットとしては、関係者へ一斉に情報共有できる点が大きく、代表的な事例では以下の2点があります。
1.感染が疑われる職員の出勤可否決定の迅速化
コロナ禍では感染疑いの職員が発生した場合、PCR検査を経て陽性/陰性を判定し、出勤可否を検討するフローになっていました。ただ、部署間の情報共有が不完全であったため、職員が検査を受けに来ても準備ができていない、出勤可否を判断する感染委員会に検査結果が伝わっていない、といったことが相次ぎました。
そこで検査に関わる全部署が入ったグループを作成し、全ての指示・連絡をグループ内で行うようにしたところ、情報伝達のミスがなくなり、出勤可否の判断がスムーズになりました。
2.訴訟リスクのあったトラブルの火消し
ある時、訴訟に発展しかねない事例が発生しました。このような場合には、関係者が漏れなく状況を共有し、迅速に対応することが重要です。そこで、患者さんご家族とやり取りした内容、顧問弁護士との打ち合わせ内容、病院として決めた方針など、全ての情報を関係する病棟スタッフ、ワーカー、事務員、経営陣を集めたグループに集約することで、問題が大きくなる前に解決できました。