現場レポート

アーカイブ

2026/02/13/金

寄稿:白衣のバックパッカー放浪記

白衣のバックパッカー放浪記 vol.49/ローマ後編

カトリック総本山

列に並ぶこと50分、サン・ピエトロ大聖堂の中に入ることができた。サン・ピエトロは聖ペテロのことでキリストの最初期の弟子。ペテロのお墓の上にこの聖堂が建立されたとされている。そして実は教皇はペテロの後継者という位置付けとのこと1)。「それでヴァチカンに教皇が住んでいるのか」と、キリスト教の歴史的背景を知るとともに自分の知識のなさを痛感することで、見える世界が広がる感覚を得る。

ヴァチカンが独立国として認められたのは1929年と、思っていたよりも新しい。内包国家としてイタリアに国の全部が囲まれている。面白いのはヴァチカンを守っているのはスイスの傭兵でサンマリノとは異なっている点だ。これはヴァチカンが攻め入られた時にローマ教皇を体を張って守ったのがスイスの傭兵だったことに由来し、今でも続いている。命をかけてくれる人に今でも守護を任せているのはなんとなく人間らしいなと思う1)

聖堂の中は「大聖堂」という呼び名にふさわしい贅沢な空間が確保されていた。今までもカトリック系の教会に立ち寄ってきたが、この場所が教会の原液なのだと足を踏み入れただけで分かる。各地の教会は、この部分を切り取ったり、模したりしながら建てたのではないかと思えるほど中身が濃い。120年程かけて建設され、ラファエロやミケランジェロといった名前だけは聞いたことのある芸術家が携わっている。

どうやってこんなものを建てたのかと調べてみると、やはり建築には国家予算を超えるほどのお金が必要になったらしい。どうやって資金を集めたかと言えば「免罪符」という、買えば天国に行けるという札を売って資金を作ったらしい。この仕組みに怒ったルターという人がキリスト教のもう一つの宗派であるプロテスタントを作ったようだ。

なんだか株式に似ているなと思う。違うのは購入後に返ってくるものが「天国」か「資本」か。後にオランダ東インド会社が創造した株式がこの免罪符に着想を得ているかどうかは分からなかったが、今の自分たちに難しい、でも実現したいことがある時、人は自分以外の助けを求める他ないのかなと思った。ビジネスとしても原価が安そうで利益率は高かったことが推測される。

さらに当時の人たちにとって「天国に行ける」ことが確約されることに意味があったことも感じ取れる。「現代において必ず天国に行ける札があったとして、一体誰が購入するのだろうか」と思う一方で、「じゃあなんで自分は神社でお賽銭を入れているのだろうか」とも思う。

周りに助けてもらったり、何かを信じたりすることで心が動く。人のエンジンはそんなふうに駆動していくイメージが頭に浮かんだ。大聖堂の外に出ると、入った時と変わらない長い列が目に入る。時代や産業に変化があっても人々が何かを信じたい気持ちは変わりない。その思いがここに入るまでの列の長さとなっているように見えた。

サン・ピエトロ大聖堂の内部、このような構造がいくつも広がっている

ローマのパスタ

みなさんはローマ三大パスタをご存じだろうか?カチョエぺぺ(チーズと胡椒のパスタ)、アマトリチャーナ(トマトベース)、そしてカルボナーラ。ローマのパスタといえばこの3つが常識となっている。イタリア人に「世界で一番美味しい料理」を聞けばイタリアンだと答える。そしてほとんどの人が「日本食もなかなかやるけどね」と付け足してくれる。それ自体は「なかなか」嬉しい。

中学校で習ったミートソースを家で再び作ったとき、普段はあまり褒めない父が褒めてくれたことがあってから、健気な私はパスタ作りをかなりの頻度で行ってきた。専門医研修のため一度、活動休止に追い込まれたが、イタリア人が運営する動画で再燃し、今やパスタ作りは趣味を超えて営みに近いレベルにある(と思う)。旅を続けると外食に飽きることもあり、自炊の時もパスタを作る。ほとんどの都市においてパスタ乾麺の値段だけは高騰知らずで、スーパーで見かけるたびに「心の友よ」とつぶやきたくなる。

そんな私にとってローマ三大パスタは必ず食べなくてはならないもので、私の巡礼はむしろこっち側にあった。もちろん自分でも作ったことはあるし、食べに出かけたこともある。しかし本場がどのようなものなのかを知っておくことは、この文脈で単語を選ぶなら「QOLを上げる」行為となろう。

どこで食べたら良いか分からなかったので、まず全てのパスタをそれぞれの有名店で食べようと企て、1店舗ずつ実行していく。共通点はどの店もかなり量が多いこと、そして麺がめちゃくちゃ太い。前編で述べたように風邪を引いていたので味がよく分からない上に、いつもより食事の量が入らないのでこれはかなりキツかった。旅中に風邪を一度は引くような気がしていたが、なかなかしぶとくて後述するコロッセオに行かずにドミトリーで寝ていた方がいいのではないかと思ったほどだ。「なぜこんな時に風邪など引くのか」と思うが、体調に負ける訳にもいかず巡礼はワクワクとした観光というよりはスポーツに近い状況になっていた。

そして全ての店を回り終えた日の夕方に、フラっと立ち寄った店で三大パスタの3種盛りなるものを発見した。「最初からこれでよかったのでは?」と思わずにはいられない。あまりパスタに興味がないが、全てを食べたい人は観光地近くのレストランに入ることをオススメする。

さて、そうは言っても有名店での思い出もあるので、それを少し書こうと思う。カルボナーラ発祥と呼ばれる店。旅行中はeSIMなので電話予約できず、開店2時間くらい前に伺って予約をしておく。開店後に並んだのではかなり待つらしく、体調を鑑みるととてもではないが並べない。そこで事前予約を行うこととした。当然予約をしているので開店時間とともに入店し、着席する。もちろん注文はカルボナーラ。出てきたカルボナーラを見て驚く。卵に火が通ってボソボソしていたのだ。

イタリアのカルボナーラは日本と違って生クリームは使わず、卵とチーズでベースを作る。さらに言うとパスタを少し冷ましてから、残った余熱でベースを馴染ませることで卵がボソボソしないように仕上げる。むしろ日本ではボソボソは失敗扱いだ。

しかし、目の前の本場のものは滑らかとは言い難いソースだ。想像と現実の違いにかなり戸惑う。噂によるとローマのカルボナーラはめちゃくちゃしょっぱいはずなのだが、鼻詰まりで味気もない。国が変われば失敗は本場になる。もしカルボナーラを作って日本でいう失敗をしてしまっても「本場はこうなんだよ」と自信を持ってほしい。

実際に食べたカルボナーラ

コロッセオ

ローマ観光の正攻法は分からないが、おそらくローマパスと言うものを事前に買っておくとよい。このパスがあればいろんなところに並ばずに入れて、地下鉄にも乗りやすいようだ。当日など到底手に入らない売れ行きなので、数ヶ月前には確保しておくべき代物らしい。しかし当然のように持っていないので、ネットでその都度予約しなくてはならない。最近のヨーロッパ人気観光都市はネット予約で入場規制を行うことが多いと気づいていたはずなのに、到着後にいつもチケットを探して「売り切れてるやん!」とか「時間が微妙だな〜」と一喜一憂している。

ローマと言ってもとても広いので地下鉄でコロッセオ駅へ向かった。剣闘士が戦った闘技場。地図帳とかには必ず写真が乗っていて、カタカナで記載されていた皇帝たちの名前は覚えていなくても、コロッセオだけは記憶にある人も多いはず。到着すると東京ドームのようにお出迎えをしてくれる。誰がどう見てもコロッセオなのだが、写真では伝わらない迫力がある。建物のデカさはいつも心拍数を上げる気がする。

購入が遅くなったチケットではドームでいうところの芝生エリアには入ることはできず、観客席から内部を眺めることに限定されていた。だが、中に入るまでの順路はライブ会場に入るような高揚感があった。いざ中に入るとさらに広い空間が広がる。囲っているからエリアを限定しているはずなのに、それによって返って大きいことが分かるという矛盾。こんなところで戦っていたなんて、本当に「戦場」であり「見せ物」だったんだなと感じる。

コロッセオは写真で見ても分かるが、建物がところどころ欠けているように見える。戦争や経年劣化かと思いきや、実はコロッセオが廃れた時にサン・ピエトロ大聖堂の建材として石がここから切り取られて使われているためらしい。当時は本当に大聖堂を立てるのに必死だったのだなと強く感じる1)

ローマと一言でいうけれど、遺産の1つひとつが歴史という線で繋がれている。当時の人は今そこにはいないけど、建物がリプレゼントとなってそのことを教えてくれる。「イタリアに行くならローマに行きなさい」確かにここにくれば遥昔から続く人々の営みを感じることができる。それが観光の醍醐味なのだと改めて感じさせてくれた。旅はイタリア半島を越え、フランスへと続く。

コロッセオ内部、下にいる人たちはチケットを事前に買える人々

次回は2月27日(金)、内容はニース・モナコ編です。

【参考文献】
1)旅するように学ぶ世界遺産『ヴァティカン市国』~聖地、パワースポット編①~ – YouTube. (n.d.). Retrieved February 12, 2026, from https://www.youtube.com/watch?v=-1fS4GoPyMU


白衣のバックパッカーのSNS