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2022/10/19/水

コラム

主賓スピーチから学んだ大事なこと

15年ほど前のことですが、社員の結婚披露宴に主賓として招かれました。当然、主賓の挨拶をすることになります。

私にとって初めての経験でしたが、真っ先に思ったことは、これは絶対に失敗してはいけない、しっかり準備をしなくては!ということです。
まず準備の始めとして、自分がそれまでに出席した披露宴での主賓挨拶を思い返しました。主賓の皆さんはどのような話をしていたのか?

・ご両家、本人への祝意
・招いてもらったことのお礼
・時節の挨拶
・自分の紹介(本人との関係=大概は会社の上司)
・会社の紹介
・本人の紹介(エピソードを交えて褒める)
・結びの言葉(結婚生活のアドバイスなどを交える)

、、、だいたいこんな感じがほとんどだったと思います。ネットで構成例を調べても出てきます。

テンプレートに当てはめつつ、内容を考えましたが、より実感のあるところを掴もうと思い、全社発信メールで皆さんに体験などを尋ねることにしました。

・これまで聞いた主賓の挨拶の良かった実例
・同、ダメだった実例
・あなたが結婚生活のアドバイスをするとしたら?
・〇〇さんについて印象に残っているエピソード

といったメールでのアンケートでした。

当時のメールを検索して掘り起こしましたが、この当時はまだ社員も少なく、気軽に全社員向けのメール発信や返信が飛び交っていたことを懐かしく思い出しました。今も多少その雰囲気は残っているように思いますが、社員数が当時の10倍近くになっていますので、やはり変わっているところはあると思います。

それはともかく、集まった内容はどれも「なるほど」というものでした。

【良い例】
・褒め方が具体的
・単調に褒めるのでなく、Before・Afterのように真実味のある内容
・資質だけを褒めるのでなく努力を讃える
・長すぎない

【ダメな例】
・口調が偉そう
・自分や会社の自慢をする
・型にはまり切った文例通りのもの
・本人や誰かを貶める/イジるような内容
・変に笑いを取ろうとしてスベる
・とにかく長い

「参考になる」と思うとともにプレッシャーも感じました。特に、ダメな例を見て、こうなったらマズい、、、というプレッシャーです。

また、おめでたい席では忌み言葉のように、言ってはいけない単語や避けるべき表現もあると言われているので、それもプレッシャーです。

無難な構成でありつつ、ありきたりにならず独自性、具体性があるように。そして、一番は長すぎず、聞いている人が飽きないように。もちろん、祝福の気持ちが出来るだけ伝わるように。。
といったことを考えながら、かなり時間をかけてスピーチを推敲しました。油断すると内容を詰め込みすぎたり冗長になったりして、長くならないように、内容を削るのに苦労したことをよく覚えています。

披露宴が始まり、挨拶が終わるまでは心臓がバクバクでしたが、なんとか役目を果たすことができ、ホッとしましたが、そのあと、相手方(新郎側)の主賓の方に挨拶へ伺ったときのことです。

その方は、仕事柄これまで何十回も主賓の挨拶を経験しているとのことでしたが、私に話してくれた内容に衝撃を受けました。

私から、話が長くならないように苦労したことを話すと、
主賓の挨拶はいくら長くてもいいんですよ。長ければ長いほうがいいくらいです。」
と仰るではありませんか。

「主賓の挨拶は誰に向けて話すと思いますか?

 それは新郎新婦のご両親です。ご両親は社会に出てからのわが子の様子、会社での様子をご存知ないことがほとんどですから、どんなことであってもいくらでも聞きたいんです。」

「長くならないように、というのは同僚や友人の出席者が言うことであって、そんなのは気にしなくてもいいんですよ。」

とのことで、私にとって目から鱗でした。

思い返してみれば、主賓挨拶の準備を始めたときから私が考えていたことは、誰に対して何を果たすのか?という一番大事なことが不明瞭でした。

ご本人たちへの祝意が伝わるように、との漠然とした思いはありましたが、

皆さんの意見が「長くないように」ということであれば、それに合わせようとし、「独自性があるように」と思ったのは、もしかしたら自分のためだったかもしれません。結婚のアドバイスに至っては、危うく、アンケートでもらったコメントから引用して自分の実態とはかけ離れた話をするところでした(さすがに途中で削除しました)。

それ以来、どんなスピーチをするときも、誰に何を伝えたい? / どんな思いを持ってもらいたい? と常に考えるようになりました。それによって、場合によっては一般的な定説とは逆の行動をとることもありますが、その場合も確信を持って行えるようになりました。

また、自分の中の漠然とした、スピーチは短くなくてはいけない、という強迫観念も薄れ、相手や目的の設定次第では長くなることも有り得るという考えに変わりました。もちろん、短くても充分に伝わる、長くても分かりやすく飽きない、というほうがベターであり、そのための工夫は怠ってはいけないと思っています。

さらに、この体験から思ったことは、いつも採用の仕事や面接のときに思ってきたことが、このときは実践できていなかった、ということです。

例えば面接のときに、失敗しないように、型から外れないよう、テンプレートにはまった模範解答を用意して、そこに終始する方に対しては、ご自分の本当の思いや、ご自分の得意、不得意、価値観、志向性などを自分の言葉で伝えられたほうが良いと話してきました。

募集広告やブログ、WEBサイトの文章などでも、自分たちが入社して欲しいと思う人の立場に立って呼びかけなければいけないと考え、実践してきたつもりであったのですが、このときは知らず知らずに、実践できていませんでした。

自分では思っているつもりでも、気付かずに違う考えで対応していることもあり、常に意識して確認、実践を心掛けなければ、考え方が血肉となっていかないことを実感しました。

それ以来、採用の仕事でも、その意識はより高まりました。どの場面であっても、発信する内容、面接での会話など、目的を意識してそのために心を込めて言葉や伝える内容を選ぶ気持ちが一層強くなりました。

いずれにしても、かなり緊張し、右往左往しましたが、今の自分を形作る貴重な体験です。(岩崎克治)