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2025/03/27/木

コラム

人を出来るだけ正確に理解するにはどうすれば良いか? 〜その一つの考え方〜

メディヴァの面接を受けた人からは「普通の面接と違う」と言われることがよくあります。そこで、私が面接で何を目指しているかをご説明して、少しでも戸惑いを減らすことができればと思っています。

言うまでもないですが、採用においては応募者の方をしっかり理解することが必要です。
その上で、入社して活躍していただけるかどうか、長い目で見たときにお互いにとってプラスになるかどうかを判断することになります。

しかし一口に人を理解すると言っても人間には様々な面があり、理解は簡単ではありません。
私も採用を始めた当初は試行錯誤の連続でした。経験を積むうちに思い至ったのは、重要な切り口をいくつか設定して、その切り口ごとに確かめていくことです。例えば、私が若い頃にいたマッキンゼーが考案した、企業を分析するフレームワークを援用する方法です。

そのフレームワークはマッキンゼーの7Sです。
企業を捉えるために重要な側面を7つ挙げたもので、具体的には以下の7つになります。
上の3つを「ソフトS」、下の4つを「ハードS」と分類することもあります。

Shared value(共有理念)
Style(スタイル、カルチャー)
Staff(人員構成)

Strategy(戦略)
Structure (組織構造)
System(企業運営の仕組み)
Skill(スキル)

企業を理解するフレームワークですから、そのまま個人に適用するわけにはいきませんが、複雑な企業を理解するために性質や次元の異なる複数の切り口を設定するというアイディアは有効でしょうし、内容を見ると実はかなり人間に当てはめることも可能なものだと思います。

以下に一つずつ簡潔に、企業の場合と個人に当てはめた場合の考え方を書いてみます。

Shared value(共有理念)
 企業において社員が共有する理念、価値観です。メディヴァで言えば「患者視点の医療変革」です。「無人島に街を」というのもそれに近いものだと思います。

 個人の場合は共有(Shared)ではないでしょうが、自分の中心に置く価値観があり、それがその人を理解するためにとても重要であるということは間違いありません。その人が人生で重きを置いていること、どこを目指しているのか?おそらくその人は、キャリア形成においても普段の仕事においてもそれを追いかけ、何かを判断するときにも、そのことを基準におくと思うからです。

 また、価値観より少し狭いですがキャリア観も重要です。長期間にわたって仕事をどう位置付け、何を目指すのか、社会人としてどうなっていきたいのかといった部分です。

Style(スタイル、カルチャー)
 企業には良くも悪くも「社風」や物事へ取り組むスタイルがあります。きちんとした社風、少し緩い社風、大きなチャレンジを好む、堅実を好む、などなど。社風が何によって形成、維持されるのかはさまざまかもしれませんが、それが存在することは確かです。

 個人にも人それぞれにキャラクターやスタイルがあります。性格というのもそれに近いと思います。その中でも採用において重要なのは、物事を達成しようと取り組むときのスタイルだと思います。その特徴によって向いている仕事も異なるでしょうし、メディヴァに合うかどうかにも影響があると思います。
 また、これらの一部に含まれるかもしれませんが、対人面のスタイルやストレス耐性など、個別に重要な面を切り取って理解することも有効だと思います。

Staff(人員構成)
 これは企業においては、どのような役割の社員がどれほどいるのかという人材の内容と配分ですが、個人の場合には一人なのでそのままは当てはまりません。

 私は、個人に適用する場合には人は仕事の顔だけではなく様々な面を持つことに着目します。例えば、趣味で何かのコミュニティーに属しているのか、そこでの役割はどのようなものなのか、家族としての顔はどのようなものか?といったことです。もちろん、メインの仕事での顔が土台となりますが、それに加えて複数の役割やそこでの活動の特性などを知ることは意外とその人の理解につながることが多いと感じます。

Strategy(戦略)
 ここからはハードSになります。ソフトSが内面に関わるものであるのに対して、ハードSは形の違いが目に見えやすく、変える時も明確に変えることが可能な部分であろうと思います。

 戦略は企業の場合であれば、企業の目的を達成するための長期に渡る作戦と資源配分などですが、個人でもほぼ同じような意味で、その人が具体的にキャリアで目指す目標と、それをどうやって達成するかという考え方、計画、資源配分などです。
 
 キャリア戦略という言葉も世の中で目にするようになりましたが、個人としてキャリアに明確な戦略を持っている人は多くありませんし、それが必須だとも言い切れないと思います。しかし、朧げにでも、どこに資源(時間や努力)を配分して、どういった道筋で目指すところに辿り着きたいかのイメージはあったほうがプラスだろうと思います。人を理解するときには明確なものがなくても、無意識にせよ結果的にその方がどのような戦略を持っているのだろうと、朧げなものを含めて確認します。

Structure (組織構造)
 企業であれば、組織の作り方は非常に見えやすく、重要性もわかりやすいものですが、個人だとどうでしょうか。組織構造を個人に応用するとして、その人への理解をより深めるものは何かあるでしょうか?
 私の考えは、個人を超えて家族や友人関係、同僚などとの関係性や、協力関係、お互いの活かし方などがそれに当てはまると思います。人は社会において一人だけで生きて仕事をしているのではないので、その人を中心とした「組織」をイメージするとより理解が深まると思います。

System(企業運営の仕組み)
 企業におけるsystemとは、ITシステムということではなく広義の意味でのシステム、運営の仕組みということになります。ITもツールとしては含みますが、会議体や意思決定の仕組み、権限の配分の仕方など、組織がどのように動く仕組みになっているかということです。

 個人にとってのsystemに当てはめるものは、その人が情報収集をしたり、意思決定して物事を実行するときの方法というイメージで捉えています。何かを決めるときにどこからどんな情報を集めて、どのように情報を処理して判断して意思決定をするか?実行するときにはどうか?自分で進めるのか、チームワークで進めるのか、周りの人の考えをどう扱うのか?そういった仕事の進め方の仕組みのようなものです。

Skill(スキル)
 これは企業でも個人でもわかりやすいものです。個人に備わったスキルは割と捉え方がシンプルだろうと思います。ただ、個人のスキルであっても、生来の能力から発しているものか、経験値なのか、努力によって鍛えられたのか、など一つのスキルであっても性質の異なるものがあり、それが仕事の場面での違いを生み出すのであれば、違いを把握する必要があるでしょう。

世界観
もう一つ、7Sには当てはまらないですが、私が有用だと思っている側面があります。
それは「世界観」です。大袈裟な言葉ですが、自分が生きている社会をどのような世界だと見ているか?ということです。何を目指すべきで、どんなルールがあり、どう対処すれば生きていけるか、といった道具立ての一式といったイメージです。

わかりやすい世界観をいくつか挙げると、
・弱肉強食の世界。力を持つ人が生き残る。
・RPGのような世界。決まったルールでより多くのスコアを稼いでクリアする。
・スポーツの勝ち負けのような世界。厳密なルールがあり違反すると退場。最後に誰かが勝ち残る。
・性善説的な世界で、善意が報われる世界。
他にも、正義がいつかは勝つ世界、鬼ごっこのように脅威から逃げ回る世界、など、断片的で分かりやすい世界観でよければ無数に考えられます。(逆に、世の中の物事を全て網羅して、完全にルールや道具立てが揃っているような世界観はそうそう作れるものではないですが)

複数の人が同じ世の中、同時代に生きていても、実は世界に対する見え方は人によって違うことが多いのではないか?と感じることがあります。そして、その人なりに世界をどのように理解しているかが推測できると、その人が何に向かって、何をルールと思い、何を頑張っているのかを理解しやすくなります。
ーー
いかがでしょうか。

企業を理解するための側面を7つに分類したフレームワーク(プラスもう一つ)を、若干の無理矢理も含めて個人の理解に応用する考え方を紹介しました。このフレームワークを使うのが唯一絶対という訳ではまったくありません。大事なことは、複雑で捉え所がないものを理解する助けとしてフレームワークを活用するというところで、マッキンゼーの7s以外にも、もっと有効なフレームワークが存在するだろうと思います。

ー実際の面接での対話をどのように行うか?ー

フレームワークといった固い言葉が出てくると、項目に沿った事務的な面接を行っていると想像されるかもしれませんが、そうではありません。こういったフレームワークによって重要な側面を出来るだけ偏らないように理解することを意識することで、漫然と印象だけで理解したり、たまたま会話のなかで出てきたポイントだけで判断することは避けることが目的であり、面接自体は人が普通に行う対話の形で進みます。

このようなフレームワークを使った上で、さらに、各項目の中にはどのような内容があり、それに対してどのような類型(タイプ)があるのかなどを考えていくことになります。例えば、キャリアの戦略(strategy)には主なもので何種類くらいの類型があり、それぞれどのような内容なのか?といったようなことです。

そのフレームワークと、そこに入るべき中身があるとして、その人が実際にどうなのかをどうやって理解するのか?ということになりますが、これは先述のように対話の中で理解していきます。一つの対話の流れを作り、その中で質問と答えを繰り返すことで、その背景にあるものを推測する形が多くなります。

対話の流れというのは、例えばこれまでの進路やキャリア上の選択に沿って、そのとき何を考えて、なぜその選択をしたのかということをお聞きしていき、答えに対してさらに深く背景や理由を質問していく、という形などです。

そういった流れを作るのが難しい場合もありますが、その場合は直接的に尋ねることもあります。例えば「○○に取り組むときに、どのようなやり方を取りますか?」「人と一緒に仕事をするときに、どのような立ち位置、役割をすることが多いですか?」など、確かめたいことを直接的に聞きます。

最終的に、企業を7Sで分析するときに「この企業は、何を目指して、どのようなスタイルで、どんなリソースを持っていて、それらをどう使って、そのような戦略で?」といった理解をするのと同様に、その人が「何を目指して、どのようなスタイルで、どんなリソースを持っていて、それらをどう使って、そのような戦略で?」というような理解を得ることを目指します。

こう書くと、気持ちの部分を度外視してドライに理解するというように聞こえるかもしれませんが、むしろ逆で、その人の価値観やスタイルはもちろん、戦略やスキルなどであっても、理屈だけではなく気持ちの部分に大きく左右されますし、なぜか分からないけどこれが好きだとか憧れるといったようなことの方がより重要な場合も多々あります。

人間は機械やソフトウエアと違って非常にアナログでバリエーションも多く、無限の個性やスタイルがあり、そこが興味深いと思っています。さらには、企業も人間の集まりなので、やはり無味乾燥ではなく、人間が有機的に絡まって動くものだと思っています。

ーフレームワークから離れた視点も重要ー

ここまで書いたのは分析的な手法として、要素に分解することで多面的に人を理解するということですが、もう一つの視点として「すべて一体化として、一つのイメージとしてみた時にどんな人であるのか?」と問いかける視点も合わせて使います。例えばその人を単語一つで表現したときに、どのような言葉が一番ピッタリくるのか?ということでしょうか。その方は「⚪︎⚪︎の人」と言い表せるか?ということです。分析したものをもう一回統合してみて、一言で言えるかどうか?ということになるかもしません。例を上げてみると、「情熱の人」「思考の人」「達成の人」「愛着の人」「固い人」「柔らかい人」「突破する人」「ぶつかる人」「独善の人」「空回る人」「粘りの人」などなど。

既存の言葉だとしっくりこない場合には、擬音語的な言葉で感覚的にイメージを探ることもあります。「スイスイ」「ふにゃふにゃ」「ギクシャク」「シャキシャキ」「ビュンビュン」、、、

せっかく分解したものをもう一度ひとつの言葉にすると、また一面だけを捉えることにならないか?と思われるかもしれませんが、そうではないと思っています。一言で表すのは、分解したものを再び一体として統合して見るということだと思っています。このように、焦点を部分に合わせたり、全体をぼやっとみたり、ビシッとクリアに言い切ってみたり、さまざまな見方でその人の理解として一番しっくりする姿を探っていきます。

ー最後にー
人を分析的に理解するということは、人を人として見ていないのか?と誤解もされそうです。ここまでにも何度か同様なことを書きましたが、私としては最も気にしているポイントです。いつも心がけているのは、人を簡単なステレオタイプの類型に無理に押し込めて理解したり、その方にとって重要なポイントを見過ごして良いなどとは思っていません。しっかり理解したうえでお互いに一緒にやりたいと思った人とは安心して仕事ができますし、そこには信頼で結ばれたとても人間的な繋がりや気持ちが生まれることを、メディヴァで20数年に渡って実感してきました。

人間は多種多様、放置していたらおそらくバラバラに動くのが普通だと思いますが、だからこそ、理念を共有できて同じ方向を目指して連携できたときにその姿を美しいと感じるのだと思っています。
多種多様でありつつ、同じ方向を向いて一緒に進んでくれる仲間を求めて、これからも人間理解に努めていきたいと思っています。(岩崎克治)

筆者プロフィール
岩崎克治 Katsuji Iwasaki 株式会社メディヴァ取締役
大阪大学大学院 情報工学分野 修士課程修了。
マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントを経て、1997年に(株)インクス入社。ITによる高速金型事業の立上げ、クライアント企業の製品開発プロセス改革等に従事。2002年メディヴァに参画。

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