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2024/02/22/木

コラム

「自分で打席に立つ」という捉え方

私が新卒でコンサルティング会社に入ったときに、有名新聞社で経済記者をされていた方が、エディターとして勤務されていました。エディターとは、コンサルタントの作る提案書の構成や文章を一緒に考えたり、校正をしてくれる役割です。

何人かいたエディターの中で、その方は一番ベテランで近寄りがたい雰囲気もあり、新卒の私がその方と仕事をしたことはほとんどなかったのですが、ほんの少しの接点から、たまには話が出来る間柄になりました。

話が出来るといっても、ざっくばらんに話せるわけでもなく、割と厳しい雰囲気の方で、話の内容も硬くて、私は話すたびに緊張しました。

そうこうしているうちに私はこの会社を卒業し、小さなベンチャー企業に入りました。その方とは、たまに話をする間柄から、年賀状を毎年やり取りする間柄になりましたが、私の緊張感は変わらず、OB会でお会いしても突っ込んだ会話が出来るわけでもありませんでした。

そのベンチャー企業の中で私がスタートに携わった工場が日経新聞から表彰されたときに、お祝いのハガキをいただいたので、私からもハガキでお礼を書きました。その中に、「マッキンゼーで頭で学んだことが、最近ようやく身体で理解できてきたように思います」と書きました。

そうしたら、お返事のお返事が今度は封書で届きました。便箋3枚くらいの長いお手紙でしたが、そのなかに強く心に残った一節があります。趣旨を書くと、

自分は何十年も記者として、ビジネスについて書いてきたが、自分の手でビジネスをやったことが無い。例えるなら、自分でバットを握って打席に立ち、ボールを打ったことがない。空振り三振もしたことがない。今となってはそのことが心残りだ。

というようなことです。

どうしてそれほど深い関係でもない私に、このような突っ込んだ心情を吐露しようと思われたのか不思議に思いつつ、とても大事なことを伝えてもらったように思いました。私には新聞記者が打席に立っていないとは思えませんでしたし、おそらく私を励ますために敢えて書かれた部分もあったと推測します。ただ、何かしら普通なら伝えない心情を私に伝えて下さったことと、自分のやったことについて何かを思ってもらったことを、とても心強く感じました。

それ以来、小さくてもいいから自分で打席に立つことが大切だと思うようになりました。自分で打席に立っているか、立っていないかを明確に区別するのは難しいですが、当事者として自分の頭で考え、自分で行動し、結果も自分で受け止める、という意味だと思っています。

その方が私に伝えてくれたことは非常に個人的な心情であり、こういう場に書いてはいけないとこれまで思ってきましたが、その方が鬼籍に入られて何年も経ち、最近ではむしろ、伝えてもらったことを、私も誰かに伝えなければいけないような気持になっています。「心残りのないように、小さくてもいいから打席に立つことが大切だ」と。

(岩崎克治)

【過去ブログ発掘シリーズ】(初出2017年12月)

筆者プロフィール
岩崎克治 Katsuji Iwasaki 株式会社メディヴァ取締役
大阪大学大学院 情報工学分野 修士課程修了。
マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントを経て、1997年に(株)インクス入社。ITによる高速金型事業の立上げ、クライアント企業の製品開発プロセス改革等に従事。2002年メディヴァに参画。

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