2024/03/08/金

診療報酬改定

2024年度診療報酬改定(賃上げ編)

執筆・執行役員 柿木 哲也

概要 

昨今の物価高騰状況、産業界全体で高水準となる賃上げの状況を踏まえ、医療従事者の人材確保・定着に向けた賃上げの取組みが3つ実施されました。1つは、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げとして入院基本料や初再診料等の引き上げ。もう1つは病院、診療所、歯科診療所、訪問診療看護ステーションに勤務する看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職の賃上げ。こちらには新設のベースアップ評価料を基本料等の加算として設定されることになりました。さらに当ベースアップ評価料による賃上げについては、賃上げ促進税制の対象にもなっています。 

賃上げのポイント 

1.40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げ 

●入院基本料等の見直し 
入院料の引き上げと合わせ、①栄養管理体制の基準の明確化、②人生の最終段階における適切な意思決定支援の作成、③身体的拘束を最小化する体制の整備が求められます。 

●初再診料等の見直し 
賃上げの必要性と共に標準的な感染防止対策を日常的に講じることも踏まえ、初再診料等の引き上げが行われました。  

2.病院、診療所、歯科診療所、訪問診療看護ステーションに勤務する看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職の賃上げ 

●外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)
医師、事務以外の医療職について賃金(基本料等の毎月の手当)を引き上げる原資として、ベースアップ評価料(Ⅰ)が新設され、初再診・訪問診療と合わせて算定が可能になりました。 

●外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ) 
透析や検査が多い施設(≒初再診料の収益割当が少ない施設)等で、上記ベースアップ評価料(Ⅰ)では、賃上げの原資が少ない場合は、ベースアップ評価料(Ⅱ)の追加算定が可能に。対象は無床診療所のみとなります。

●入院ベースアップ評価料 
病院・有床診療所については入院基本料等と合わせて算定が可能です。 

3.賃上げ促進税制 

ベースアップ評価料による賃上げについても、賃上げ促進税制の税額控除対象となります。
医療機関・薬局の規模及び雇用者の給与等支給額の前年度比に応じて、所定の税額控除を受けられます。さらに、上乗せ要件(①教育訓練費の増加 ②子育てとの両立・女性活躍への支援)を達成することで、給与等支給額の増加額の最大45%の税額控除が可能です。 

おわりに 

産業界全体で高水準となる賃上げが進む一方、昨今の物価高騰状況で費用が増え、職員の賃上げまで手が回らない状況下にある医療機関は多いと思います。今改定での賃上げの対応は厳しい経営環境にある医療機関にとってはプラスの話となるでしょう。賃上げの加算は今改定の目玉ではあるので、加算取得に向けて積極的に検討を進めるべき項目です。 

ただし、賃上げの加算取得に向けてのスケジュールはタイトであることに留意いただきたいと思います。賃金引き上げの計画を作成→賃上げを実施→施設基準の届出という流れを令和6年6月までに対応する必要があり、翌年度から2年間は賃上げ状況報告も必要です。対応する内容が多いので、スケジュールを把握して進めていくことが求められます。 


執筆者

柿木 哲也
東京都出身。横浜市立大学商学部卒業。富士重工業(現SUBARU)にてスバル車の 商品企画、国内及び海外販売を担当する。その後、米コンサルティング会社ベリングポイント(現PWCコンサルティング)の戦略・業務グループにて、各種プロ ジェクトに従事。2008年1月よりメディヴァに参画。 一般病院、精神科病院の事業デューデリジェンス、新規事業計画策定、経営再生 計画策定、再生実務、診療所の開業及び経営支援など幅広い支援を行っている。