2017/09/30/土

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

内閣官房の自立支援介護プロジェクト受託と在宅医療・介護連携推進事業の推進

 今年は雨が続き、日照時間も少なく、短く涼しい夏でした。皆様はいかがお過ごしになられたでしょうか。近所の二子玉川で、8月の終わりに花火大会がありました。今年は直前まで晴れていたのに、いきなり暴風雨が襲い、河原で花火を待っていた人たちに落雷し、救急車が出動しました。
 隅田川の花火の日も暴風雨でした。あまりにも雨が続くので花火の日を8月から移動させることも検討されているようです。季節の風物も変わっていくのかもしれません。

 さて、メディヴァ内の大きなニュースを3つ。
 まず、おかげさまで大好評いただいていた「診療所経営の教科書」の改訂版が出ます。この本はデータが命なので、数字を全面的にアップデートしました。また、前回以降、診療所経営における重要性を増した「在宅医療」の分野を充実させています。専門書の出版社から出ているので値段が張るのは申し訳ないのですが、前の本を持ってらっしゃる方も是非お手に取って頂けると幸いです。

 2つ目は、内閣官房が進める「アジア健康構想」実現に向けた「自立支援に資する介護事業のアジア国際展開等に関する調査」を受託しました。
 昨年に続いて2年目となり、介護政策づくりに直結した活動になります。本調査のテーマは、介護の概念を「お世話」から「自立支援」に拡大することと、それを日本で学ぶ介護の技能実習制度の整備です。介護の技能実習制度は、今後明らかに人手不足になる介護業界への救いになる可能性があります。障壁となっている日本語試験も、試験内容にメスを入れることになりました。今回の調査では、自立支援介護を積極的に取り組んでいる事業者やそれを支援する優良なICTシステムの選定を行います。取り上げてほしいという事業者さんやICTメーカーさんがあれば、是非ご連絡ください。国に繋ぐお手伝いはさせて頂きます!

 3つ目にお知らせしたい内容として、NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク(以下、NPOケア市民)の八戸大会(10月8日、9日)におけるシンポジウムがあります。
 メディヴァでは、NPOケア市民の委託を受け、地域包括ケア・システムにおける在宅医療・介護連携推進事業の進捗状況について、全国1,741自治体に対して、郵送方式によるアンケート調査を実施し、213の自治体から回答を得ました。在宅医療・介護連携推進事業は、平成27年4月の介護保険法改正にて、地域支援事業の包括的支援事業に位置付けられ、平成30年4月にすべての市区町村で実施されることが求められています。しかし、厚生労働省の調査では、多くの自治体において事業案の検討・策定にとどまっていることがわかっており、このため、各自治体が抱える在宅医療介護連携推進事業における課題を抽出し、解決策を検討する必要性があると考えました。
 調査の結果、事業の進捗においては、「自治体内の事業専門部署の設置」、「評価指標の設定」、「外部事業者への委託」等が強く影響しており、各自治体に推奨されることがわかりました。また、医師会長自身が在宅医療を実践しているなど、医師会内での在宅医療に理解のあるメンバーが必要であることが示唆されました。また、半数以上の自治体が、「事業実施のためのノウハウの不足」と「医療介護資源不足」を課題ととらえていることが明らかとなりました。
 これらの課題解決に向けて、NPOケア市民の八戸大会では、横須賀市、新潟市等モデルとなりえる先進自治体を招き、有識者を交えて、在宅医療・介護連携推進事業の円滑な推進について議論し、地域包括ケア実現に必要な取組み等について検討します。本シンポジウムでは私が座長となり、企業・行政チームの村田マネージャーが調査結果を発表します。またランチョンでは、東急不動産の小室執行役員と共に、民間主導の地域包括ケア・システム作りの事例として、「世田谷中町プロジェクトの事例」を発表したり、メディヴァの医師兼コンサルタントの澤井先生が「多職種連携ICTシステムの”ファクト”と”導入成功のカギ”」を発表したり、と盛りだくさんになっています。八戸は遠いですが、ご都合がつく方は是非お運びください。

執筆:大石佳能子(株式会社メディヴァ代表取締役)