2017/10/02/月
医療・ヘルスケア事業の現場から
この記事では、各種統計データを独自の視点で分析し精神科医療の現状と将来についての洞察を得ることを目指します。今回は、「精神保健福祉資料」いわゆる「630調査」を取り上げます。
目次
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課が実施している、精神科病院、精神科診療所等、精神障害者社会復帰施設等、精神科デイ・ケア等、精神科訪問看護、都道府県等の関連事務の現況に関する資料です。
直近の調査結果は平成27年6月30日付けのものです(概算値)。
直近の回答率を見ますと、平成25年98.2%、平成26年97.3%、平成27年93.8%と低下傾向にあります。しかし、依然として90%超の高い回答率であり、精神科医療の現状を把握するのに有益なデータが収集されていますので、このデータを分析することで精神科医療の実像が浮き彫りにできると思います。
早速、データを見てみますが、留意点があります。精神科病院の全体観を把握するため、病院数、病床数等の推移を調べてみたいのですが、【図1】を見て下さい。H26年、H27年と病院数が激減しています。単科精神科病院がH25-H26で▲13件、H26-H27で▲39件と、明らかに異常値が出ています。
これは、回答施設数が減少しているためであり、注意が必要な点です。病院数、病床数等の推移については医療施設調査を見る必要があります。医療施設調査によれば、精神科病院数は【図2-1,2-2】のような結果となっており、H23年以降減少傾向にあることがわかります。
また、精神病床数も減少し続けていることがわかります【図3-1,3-2】。
(注: 図2,3いずれも「医療施設(動態)調査」(3年毎に実施)のデータ。H27の直近値があるため、H26-H27間のみ1年間の数値)
(稼働率)
「630調査」にもどり、稼働率をみてみます【図4】。
H23年以降、減少の一途を辿っています。H23-H27の4年間で2.6%減少しています。
精神科の施設数(病院数、病床数)が減少しているにもかかわらず、稼働率も低下している状況です。
これは、供給を上回るペースで需要の減少が進んでいることの現れと捉えられます。
従って、精神科病院および病床数の減少は、これからさらに進むことが予想されます。
今後も「630調査」と関連データをもとに、精神科の実態を分析して行きたいと思います。