2017/09/15/金

医療・ヘルスケア事業の現場から

アジアで日本の高齢者ケアを「ジャパン高齢者ケア産業ショーケース」報告│GLOBAL

メディヴァ 海外事業部 鈴木勝也

 メディヴァは2017年8月、ベトナム・ホーチミン市にて、JETRO主催『ジャパン高齢者ケア産業ショーケース』に出展しました。医療法人社団プラタナス、亀田グループ、東急不動産、そして弊社の共同事業として参加しました。

ジャパン高齢者ケア産業ショーケースについて
 本ショーケースは、ホーチミンで開催されたAPECの関連イベント「Investing in Healthy and Active Aging for Sustainable Growth (持続可能な成長のための健康長寿社会への投資)」の、サイドイベントです。

ここでは次のようなテーマで紹介されました。
1.高齢者医療・リハビリテーション
2.フレイル予防・機能回復ケア
3.人材育成
4.地域包括支援システム

 日本は他国に先駆けて高齢化が進展していることから、日本の高齢者ケア製品・サービスには多くの関心が寄せられました。私たちのテーマにしたのは、「4.地域包括支援システム」です。

モデルとして、
・自立支援を目指した通所介護「ぽじえじ」
・医療法人社団プラタナスによる、在宅診療や家庭医の仕組み
・亀田グループによる、各種介護事業や学校
・東急不動産による、高齢者施設
を組み合わせて目指す、地域包括ケアシステムのベストプラクティスを挙げながら、その仕組みや、海外展開しコンサルティングをしている事例も紹介しました。
 当日はAPECに参加する各国の保険局長や、ベトナムの病院関係者をはじめ、官民様々な立場で高齢化問題に関わるポリシーメーカー、有識者、実務家など、300名近くが来場されました。

急速に進むアジア諸国の高齢化
 日本は欧米に比べ、急速に高齢化が進んだと言われています。しかしアジア諸国は、それを上回るスピードで、より短期間のうちに高齢化が進んでいると考えられています。
 例えばベトナムは、世界の中で人口の高齢化がもっとも早く進んでいる10カ国のうちの一つです。推計によればベトナムは、高齢化率(総人口に対する65歳以上の高齢者人口の割合)が7%を超えた「高齢化社会」から、14%以上の「高齢社会」に移行するまでの所用年数が、20~22年しかかからないそうです。参考までに、スウェーデンは85年かけて高齢化社会から高齢社会へ移行。日本は1970年に7%を超え1994年に14%を超えました。移行には24年かかりました。
注目される、日本の高齢者向け施策
 急速に高齢化が進む国においては、高齢者制度やサービス、それらを支える介護やリハビリの人材育成のようなインフラが十分に整えられないまま、高齢化を迎えることになります。特にアジア諸国は、経済的な発展が十分に遂げられていない中での高齢化という、難しい状況にあります。
 そのような国にとって、「高齢者が可能な限り自立した生活を送れること」は非常に重要です。だからこそ日本ですでに行われている、予防やリハビリ、自立支援を目指す介護のあり方や、高齢者向け施策に対して、来場者の関心度は高く、私たちのブースにも、多くの方が足をとめ、色々な質問されました。
 高齢者が自立した生活を継続するためには、運動器の機能の維持も重要な要素です。そこで私たちのブースでは、啓蒙活動を兼ねた「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」の判定テストを行いました。体験していただいたのは、「立ち上がりテスト」と「2ステップテスト」です。
 ロコモティブシンドロームのリスク評価テストを体験していただくことで、「数年後の自分にこれができるかな?」と想像したり、「今でも難しい!」という感想を持つことで、自国の高齢者の状況や、予防の重要性を感じていただけたのではと思います。
 国によりサービスや施設の充足度、専門職の人数といった環境や、文化的な面での違いは確かにあります。しかしその中でも、日本の高齢者向けのサービスや制度、人材育成の仕組みは、これまでの反省を生かすことも含め、貢献できる部分が確かにあると考えています。
 それぞれの国の状況に応じ、工夫しつつ、可能な限り先を見据えた施策として、アジアの高齢化問題の解決の一助になれるよう、私たちも関わっていきたいと考えています。

執筆者:鈴木勝也 Katsuya SUZUKI
株式会社メディヴァ、コンサルタント。医療・介護コンサルティング事業部マネジャー。愛知県出身。名古屋大学大学院医学系研究科修了。理学療法士。ヘルスケア業界におけるサービス提供者と受け手の満足を両立し、誰もが質の高い医療・介護を受けることができる環境の実現を目指し、メディヴァに参画。医療機関や介護施設の運営支援、企業・行政に対するコンサルティングに従事。介護事業の設立・運営を行うとともに、アジアの高齢化問題に対する政策への関与や現地の事業者支援に取り組む。