2022/03/01/火
大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」
皆様、お元気にお過ごしでしょうか?あっという間に3月になりました。夜は寒いですが、日中は少し暖かい日差しを感じます。3回目の接種も進んできたことですし、オミクロン株もそろそろ収まることを期待しています。私自身は相変わらずほぼオンラインで仕事をしています。それにしても何故、会議でしゃべろうとする時に限ってピンポンが鳴るのかとか、家のWi-Fiは何故大事なミーティングに限って不安定になるのか。社外取締役や規制改革推進会議の委員をやっていると、私だけでなく周りでもこれら「オンライン・ミーティングあるある」は起こっているようです(笑)。
さて、今回のメルマガは前回に引き続き医療のDXについてです。前回、医療DXにより「人・智・時・空」を越え、著しく生産性と質が上がる可能性があることを述べました。反対に言うと、生産性や質が上がらない限り、医療DXは本領発揮が出来ていないことになります。
次に「人・智・時・空」を越える医療DXの事例を幾つか挙げてみます。(※開発途中の製品も含まれます。)
①株式会社プレシジョンの提供商品は「人」と「智」を越える例です。「今日の問診票」患者がタブレットで入力できる問診票を提供しています。お薬手帳や紹介状のOCR読み込みもでき、診療録作成から教科書検索までAIが支援しています。それだけであれば、他に類似のサービスがありますが、著名医師2000名の知見を組み込んだ診療マニュアル「CurrentDecisionSupport」とセットになっていることにより、見落とし、見逃しの防止支援を提供しています。ちなみに、創業社長の佐藤寿彦氏はメディヴァでインターンをして、そののちには社員として勤務した当社の医師兼コンサルタント第一号でもあります!
②PST株式会社のVOISFIAは、今まで客観的な評価が難しかった精神科領域において、患者の声を分析することにより精神疾患の有無を可視化した「智」を越える例です。患者が定型文を読み上げ、その声の波長を解析し、大量の音声サンプルデータから機械学習に基づき、疾患を判別します。オンライン診療と組み合わせることもでき、社会実装すればオンライン診療が対面診療を越える例として期待されます。
③株式会社CROSSSYNCの「IBSEN」はICUの専門医が開発した「時」を越える例です。専門医のカンと経験をナレッジ化し、バイタルデータ、目の開閉、動きをもとにリアルタイム24時間監視によりICU患者の重症化予測を行い、早期の治療介入を実現します。ベテランの医師、看護師が不在な時、不在な病院での活用が期待されます。
④株式会社ALMのJOINは有名な「空」を越える例です。救急医療、脳外疾患の画像を医師、医療者、救命救急隊と共有し、モバイル×クラウドでリアルタイムでの情報共有を実現します。2016年には医薬品医療機器等での「プログラム医療機器」として認証を受け、新機能・新技術の保険適用規定区分での保険診療の適用(脳卒中ケアユニット入院医療管理料の利用機器に指定)されました。現在、政府の後押しを受け、日本だけでなく世界に展開しつつあります。
以上、4つほど「人・智・時・空」を越える医療DXの事例を説明しました。これらは医療の質を上げるとともに、生産性、特に医師の働き方改革に寄与しています。一方、これらの機器は導入すればそれだけですぐ効果が出るわけではなく、業務改革やシフトの変更を伴います。メディヴァのコンサルティングでは、医療DXを促進するための業務改革に取り組んでいますが、今後、医療DX関連のイノベーションが進むにつれ、それを活用した業務や組織改革のニーズも高まると考えています。