2016/03/01/火

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

No.120 (2016/3/1)

━━ 皆様 こんにちは! ━━━━
 週末は晴れて温かく、東京マラソン日和の一日でした。私も佃大橋のたもとで応援しました。一転、週明けからは天気が崩れてきて寒いですね。皆様はいかがお過ごしでしょうか?
 さて、2年に一度、定例の診療報酬改定の概要がおおよそ明らかになりました。メディヴァでは、毎回、記事や講演で新しい診療報酬の内容や、医療機関に与える影響を解説させていただいています。当メルマガでも、数回に亘ってご説明を予定です。今回はまずは在宅医療の分野から。在宅医療を中心に活動している荒木のレポートをご覧ください。
前回、老人ホーム、サ高住、マンションに対する訪問診療の点数が4分の1へと大幅に切り下がり、その後緩和策として「毎日一人づつ訪問すれば高い点数」という非効率な緩和策が打ち出されました。
 それに比べれば、今回も厳しいことには変わりませんが、随分と合理的な点数になったと思います。
 細かい点数は、レポートに譲るとして、診療報酬の趣旨、方針を解釈すると、下記のようなことではないかと思います。
1.まず国全体の社会保障費は、これを抑えていかなくてはならない。 これは、医療費全体ではなく、入院、外来、在宅医療などの各分野 別にそれぞれ効率化が求められる。
2.前回の改定で定めた「毎日一人づつ訪問する緩和策」は、ただでさ え少ない在宅医の資源を更に非効率化するので、これは廃止する。
3.もともと、居宅であろうと、施設であろうと、重い患者と軽い患者が同 一報酬であることは、不公平であった。なので、重症度によって差を つけた。これにより重症な患者さんを中心に診ている医療機関が報 いられる形となる。
4.また軽い患者に対しても月2回訪問しなくてはならないことは、医療費 や医療資源の無駄遣いであり、患者にも負担が増える。また、僻地な どで、月2回訪問することが難しいケースも発生している。このため、 月1回の訪問診療を可能とした。 在宅医療に熱心なクリニックであれば、一時的に報酬減となるが、空い たキャパシティを他の患者に回すことにより、トータルでは収入増の可 能性がある。
5.外来応需の義務を負わない、在宅専門クリニックを認めた。ただ、サ 高住などに併設された専門クリニックを排するために、要件を厳しく設定している。

 前回の診療報酬改定以降、メディヴァでは在宅医療に熱心に取り組んでいる多くの医療機関とともに、現場のデータを厚労省保険局に届けました。「重症な患者を熱心に診ている在宅医療機関」が報いられる方向性づくりには寄与出来たのではないか、と思っています。「厚労省は現場を見ていない」とよく言われますが、個別に話をすると、現場への意識が高い方は多くいます。また、現場のファクトやデータを取りまとめた内容に関しては、それなりにきちんと反応してくれました。ただ、全体的な「社会保障費減」の中でどう折り合いをつけるのかと、入院、外来、在宅の「それぞれの部門での効率化」という原則が曲げられないのが、難しいところです。本来であれば、入院と在宅は医療費で比較すると、3対1なので、在宅の点数を上げて(少なくとも、キーブして)入院から施設や居宅への誘導を図ったほうが全体的な効率は上がります。
 また今回、ようやく認められた「在宅専門診療所」ですが、ハードルは非常に厳しく設定されています。特に納得がいかないのは、「施設比率」が決められていることです。施設であろうと、居宅であろうと、重症者が大半であれば、そこを専門に担当することは認められても良いのではないでしょうか。特にこれから、病床が足らない地域が増え、独居も増える中で、一人暮らしの重症者を集めて看る施設の必要性は増します。医療機関によっては、社会的なニーズに対応して、自ら作ることも考えるでしょう。そういう場合に、ペナルティを受けるべきではないと考えます。診療報酬の設計には、高齢者を支えるために今後どういう医療、介護体制が必要かという、ビジョンがさらに求められることでしょう。
なお、今回のレポートの二つ目は、海外事業部、介護事業部に所属する鈴木勝也による「外国人介護人材受け入れ」について、国の政策の進捗状況です。この分野もなかなか進んでいないのですが、ビジョンが最も必要な分野と考えています。また皆様のご意見をお聞かせください。
   (代表取締役 大石佳能子)    

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┃ ▼ 平成28年度診療報酬改定レポート(在宅医療編)
┃     在宅・企業チーム コンサルタント 荒木庸輔
┃ ▼ コンサルタントレポート
┃  「外国人介護人材受入に関する日本再興戦略」
┃     介護事業部・海外事業部 コンサルタント 鈴木勝也
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┃▼┃平成28年度診療報酬改定レポート(在宅医療編)  
┃ ┃      在宅・企業チーム コンサルタント 荒木庸輔
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 平成28年度診療報酬改定の答申が発表されました。在宅医療においては、在宅医療専門の医療機関の制度化や看取り実績、重症者の割合に応じた医学管理料のさらなる細分化などが図られました。
 今回は診療報酬改定の概要について述べさせていただきます。

  1. 重症度や訪問回数に応じて医学管理料を細分化。居宅でも軽症者 の多い医療機関は減収に  今回の改定のポイントとしてはまず、これまで画一的だった医学管理 料が、患者の居住場所だけでなく重症度や訪問回数によっても細分化 されたことが挙げられます。
     特定施設入居時等医学総合管理料は施設入居時等医学総合管理料 へ改名され、特定施設入居者と患者像が同じという理由から、新たに グループホームやサービス付高齢者向け住宅、特定施設以外の有料 老人ホームが対象に追加されました。さらに「同一建物居住者」は「単 一建物診療患者の人数」となり、これまでの「同一日に訪問診療を行う 人数」から「単一建物内で医学管理を行っている人数」へと定義が見直 されました。これにより4月以降はこれまでの個別訪問によるより高い 管理料の算定はできなくなります。
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    平成28年度診療報酬改定(在宅医療編) | 株式会社メディヴァ (mediva.co.jp)

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┃▼┃コンサルタントレポート
┃  ┃ 「外国人介護人材受入に関する日本再興戦略」
┃  ┃    介護事業部・海外事業部 コンサルタント 鈴木勝也
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 メディヴァのスタッフ達が日々仕事を進める中で気になっていることを 自由に述べていくリレー連載。今回は介護事業部と海外事業部に所属する鈴木勝也からのレポートです。
メディヴァ コンサルタントの紹介

 外国人を介護人材として受け入れる、という計画が2014年の日本再興戦略に記され、多くの介護事業者の関心を集めました。
 実現には、様々な制度の見直しなどが必要で、現時点(2016年2月)では、まだ受入の方針は決まっていませんが、外国人が介護現場で働く事の現状と、制度が改正された場合どのようになりそうか、ということを現在議論されている内容から整理したいと思います。
 現在、日本で働いている外国人は、以下の5つに分類されます。
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外国からの介護人材受入れに関する日本再興戦略