2022/02/16/水

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

医療はDXで変わる!(第2部:オンライン診療で浮いた36億時間は質を上げるか?)

皆様、さすが2月は寒いですね。オミクロン株も猛威を奮っていますし、できる限り屋内で過ごされている方は多いのでないでしょうか。メディヴァでは、家で暖かく過ごすための新たなお供として、「漢方」が流行っています。「漢方」と言っても、いわゆる「漢方薬」ではなく、枸杞の実(眼に良い)や黄耆(朝鮮人参の弱いの)などの漢方食材をお茶やスープにして飲んだり、運動、入浴をしたりとトータルなライフスタイルに漢方の「養生」という考え方を活用しています。体質が「虚」か「実」かよって、対応方法は異なるのですが、自分に合わせて選ぶのも楽しいです。食材は新大久保とかの中華食材店やネットで安く買えるので、是非お試しください。ご興味のある方はメディヴァまで!

さて、今回のメルマガは前回に引き続き医療のDXについてです。医療のDXというと、新聞とかで必ず例に出されるのはオンライン診療です。果たしてオンライン診療はどの程度新しい付加価値を創造している、もしくは効率化を達成しているのでしょうか?

医療界内にいるとオンライン診療がDXと言われてもピンとこないかもしれません。対面で診療することに比べれば、オンラインでの情報は限定的です。検査もできません。また特段手間が省ける訳ではなく、むしろ電波が悪く画像が乱れたり切れたりすることもあり、却って手間が増えるという印象ではないでしょうか。しかしながら患者にとってはどうでしょう?厚生労働省の社会医療診療行為別統計によると、1ヶ月に約1億人が外来通院しています。仮に外来に掛かるために使っている時間は移動時間を含めて3時間とすると、1億x12ヶ月x3時間で、年間36億時間(41万年)も外来通院に費やしています!仮に、これが30分に短縮出来るなら、30億時間(34万年)分の時間が浮くので、抜本的な効率化が図れたと言えるのではないでしょうか。更には、この3時間を費やすことが出来ないために通院できなかった患者を救うことが可能となります。

ただ、問題は現況のオンライン診療だけでは医療の質は上がらないことです。日本医師会はオンライン診療に対しては、あくまでも対面診療を補完するものである、として消極的な姿勢を貫いていますし、導入している医療機関も限定的です。実際、そういう観点からオンライン診療はイマイチと思っている医療者は多いです。

では何かあれば医療の質は上がるでしょうか?最近はセンサー技術が発達し、データが容易に取れるようになっています。例えばスマートウオッチでも心拍数、血中酸素濃度、心電図などが把握可能です。これらのデータを用いて、通院時の検査結果だけではなく日常生活のデータが取得でき、それを診療に用いることが出来たら?また、何か健康上危険な状態が把握もしくは予知出来て、アラートを鳴らすことが出来たら?これらによって医療の質は抜本的に上がるのではないでしょうか。しかし一方で、取得された莫大なデータを誰が解読し、処理し、判別するのかという問題も発生します。それを全て医師がやるとすると今よりもっと大変なことになってしまいます。これらのデータをプログラムやAIの助けを借りて効率的に使うことにより、質の高い医療を提供することが可能となります。AIを上手に活用することにより、医師の考えの抜け漏れを補完することもできるかもしれません。

医療はDXにより「人・智・時・空」を越えることが出来ると考えます。「人」とは、人手のことです。「智」とは頭の中にある知識です。「時」は時間で、「空」は場所です。オンライン診療は「空」は超えることができますが、それだけでは不十分で、[人・智・時」を越え、より質の高い医療を効率的に提供できるDXが求められます。次回は、具体事例を挙げながら深堀させてください。