2021/02/04/木

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

Apple Watchの心電図、血中酸素濃度測定機能が日本に上陸!

首都圏は、緊急事態宣言が3月7日まで延びてしまいましね。もう暫くは自粛・ステイホームが続きそうです。昨年来、メディヴァのコンサルタントの仕事は、ほぼオンラインに切り替わりました。クライアント先の病院ともzoomで面談しています。一方、再生支援先の事務長を担っている担当者は現場に出社して、医療職の皆様とこの危機を乗り切るべく頑張っています。
さて、全く話題は変わりますが、Apple Watchの心電図機能がアメリカで上市されてから約2年経って、ようやく日本でも使えるようになりました。私が座長を務める規制改革推進会議の医療介護WGでは、今年度の重点テーマとして、このようなSaMD(プログラム医療機器)の国外とのラグを減らすべく承認プロセスの緩和を求めています。
先日は参考人としてApple社の本社(米国)と日本支社の方もヒアリングにお招きしました。議事録はもうすぐ規制改革推進会議のHPでもご覧いただけるようになります。
そういうご縁もあり、(また自他とも認めるガジェット・オタクなので)、心電図アプリが解禁になったのに合わせて自分でも使ってみようとApple Watch 6を購入しました。これは心電図だけでなく、血中酸素濃度も測れます。(アプリの名称は、規制の関係で「血中酸素ウェルネス」という謎の名前になっています。)新型コロナ禍で血中酸素濃度測定器が手に入りにくくなっている中、役に立つかもしれないと思っています。
心電図と血中酸素ウェルネスの仕組みと機能についてすこし勉強もしたので、Apple Watchの公式HPも参照しながら解説します。
まず心電図。この機能は医療機器としての承認も取っています。腕を動かさず安静に保ち、横のポッチに右手の指を当てて30秒。Apple Watchに搭載されたアプリが電気心拍センサーを使って、心臓の鼓動と心拍リズムを記録し、心電図の波形を表します。またApple社独自のアルゴリズムで心房と心室が規則的に動いているか調べます。リズムが乱れている場合は、心房細動(不整脈の一種)が疑われます。その場合は「心房細動かも」という表示が出ることになっています。(幸い私はまだ、見たことは無いです。)心電図の波形はApple Watch上やiPhone上で確認することも、それをPDF化して医療機関で診てもらうこともできます。
やや専門的な話になりますが、心電図 アプリを、約 600 人の被験者による臨床試験でテストした結果、洞調律(心臓の正常なリズム)については特異度 99.6%、心房細動については感度 98.3% だったそうです。一方、Apple Watchで「心房細動かも」が出なかったからといって、大丈夫であることを保証するものではありません。一つには、「たまたま測った時に、不調が出なかった」から。もう一つは下記にあるとおり、機能上の理由です。
医療機関では、通常十二誘導心電図を使って、心臓の電気信号をさまざまな角度から記録し、12 個の波形を生成します。Apple Watchの心電図アプリは、単極誘導で12 個の波形のうち 1 つと似た波形を記録します。Apple Watch と、標準的な十二誘導心電図を比較した研究では、心電図 App による洞調律(心臓のリズム)や心房細動の結果は一致が見られていますが、やはり十二誘導心電図の方がより精度が高いことは確かです。また心臓発作など、心房細動以外の症状の特定には使えません。
このように医療機関で測られている情報より、限定的な状況、情報に基づき判断していることは確かなので、何か問題がありそうだったら医療機関に相談するのはmustだと考えられます。
次に、血中酸素ウェルネスについてです。こちらは医療機器としての認証を取っていません。そのため、血中酸素濃度という名前ではなく、血中酸素ウェルネスという名前になっています。医療用 (自己診断や医師への相談を含む) ではなく、あくまで一般的なフィットネスとウェルネスを目的としたものです。
血中酸素濃度とは、血中に取り込まれた酸素のレベル (血中酸素濃度) で、赤血球によって肺から全身に運ばれる酸素の割合のことです。ほとんどの人の血中酸素濃度は 95~99%ですが、95%以下になっても通常の生活を送れる人もいます。一方、 新型コロナに罹患して95%を切ると危険シグナルだと言われています。
Apple Watch 6 では、光学式心拍センサーで血中に取り込まれた酸素のレベルを測定する機能が追加されました。裏蓋のクリスタルから赤色と緑色の LED と赤外線 LED が手首を照射し、その反射光の量をフォトダイオードが読み取り、読み取ったデータから血液の色を計算します。この血液の色によって、明るい赤なら酸素量が多く、暗い赤なら少ないといったように、取り込まれた酸素のレベルがわかります。
Apple Watchで測った血中酸素濃度は、どうも低めに出るようです。人によっては 95%以下になる場合もあります。また、睡眠中に数値が少し低めにでますが、これは異常ではないそうです。私の場合は腕が極端に細いので、90%という数値が出たこともあります。再度腕にピッタリ押し付けるように測ると99%が出ました。
さて、心電図や血中酸素濃度以外にも、睡眠の質や歩幅など、いろいろな健康データがApple WatchやiPhoneによって測られ、モニタリングできるようになりました。アメリカでは心臓病等の患者さんの退院時にApple Watchを買ってもらい、その場で担当者がアプリをインストールする手伝いをし、使い方を説明するという流れも出てきました。日本でもオンライン診療に使えないかが検討されています。同時に、WatchやiPhoneからとれる各種情報を使った、新しい医療の在り方をメディヴァと各クリニックとで連携して考えていきたいと思います。また皆様に新しいサービスをご披露する機会もあるかと思いますので、今後ともよろしくお願いします。