2021/02/18/木

医療・ヘルスケア事業の現場から

IT導入のススメ

コンサルティング事業部 児玉史人

1.はじめに

昨今では、新型コロナウイルスの影響によりテレワーク・Web会議などが普及し、多くの業界で働き方が見直されております。また、それだけでなく業務効率化、コスト削減などの観点からもITの導入を図る企業が増えております。医療業界においても同様で、電子カルテ・情報ネットワーク、チャットツールなどの活用が進んでいる医療機関が増えてきました。

しかしながら、一方で従来のやり方から脱却できずにITの導入がなかなか思うようにできていない医療機関も数多くいらっしゃいます。特に紙ベースでのやり取りから抜け出せないところが多いようです。
今回のブログでは「IT導入のメリット」、「なぜITに苦手意識を持ってしまうのか」、「どうすれば苦手意識を克服できるのか」、それらについて触れたいと思います。

2.IT導入のメリット

まずはIT導入のメリットについて整理したいと思います。挙げられるメリットとして主だったものは以下が挙げられます。

(1)時間短縮
(2)正確性の向上
(3)人手不足の解消
(4)従業員のストレス軽減
(5)医療サービスの向上
(6)コストの削減
(7)スペースの節約

まず(1)はイメージが掴みやすいかと思います。例えば、Web会議ですと、移動や場所のセッティングの時間を省略でき、時間短縮に繋がります。また、電子カルテやオーダーリングシステムも、前回の処方内容をそのまま使えたり、紹介状を書くためのデータをカルテから持ってこられるなどによって時間短縮が可能です。

(2)については、一度こちらでプログラムを決めておけば、あとはコンピューターが自動で処理を行ってくれるので、ヒューマンエラーのリスクも軽減されます。特に、診療報酬の請求を行うレセプトとレセプトチェッカーでは、職人として医事課の代わりにより正確な算定を示してくれる場合もあります。

(3)、(4)については(2)と関連しますが、人が行おうとしていた分の作業をコンピューターが自動で行ってくれるので、人手不足の解消につながりますし、多くの人がストレスを抱えやすい単調作業をコンピューターに任せることにより、ストレス軽減にもつながります。電子カルテについては、入力や操作性次第で手間が増え、ストレスが増える場合もありますが、使いこなせば効果が見込めます。また、広義のシステムとして各種患者用のセンサーを導入し、タブレット等を用いて動画で病状説明や問診を行う事なども、今後の生産性向上には有効です。

そして、(1)~(4)が実現できれば医師やコメディカルスタッフは自身の専門の仕事に集中でき、患者と向き合う時間も増えることにより(5)の医療サービスの向上にも期待が出来ることとなります。

(6)については、システム導入によるコスト増も加味する必要がありますが、一方で人件費削減や用紙代削減などが当てはまります。また、Web会議を導入すれば移動に必要な交通費を削減することもできます。

(7)については、紙ですと保管の際にどうしてもスペースの確保が必要となりますが、電子ファイルの場合、基本的にはパソコン1台で保管・整理が可能です。

上記はあくまでも一例であり、その他にもIT導入により、スタッフ間でのコミュニケーション向上や外部への情報発信等も含め十分なメリットがあると考えられます。

3.なぜITに苦手意識を持ってしまうのか

では、そもそもなぜITに苦手意識を持ってしまうのでしょうか。経験上「なんとなく難しそう…」という先入観を持ってしまい、最初から逃げてしまうパターンが多いかと思います。この「難しそう…」と感じる理由について、私は以下の2点に原因があると考えております。

操作が多岐に渡り複雑になるケースが多い

1つ目は、やはり操作が複雑なことにあるかと思います。紙ベースの「業務」や「やりとり」は作業が限定的であることに対し、コンピューターには多くのコマンド、メニューがあります。その中から正解にたどり着くことに最初は時間がかかるケースはよくあります。

聞きなれない専門用語が多すぎる

2つ目は、ITには専門用語が多すぎることが挙げられるかと思います。プロバイダ、サーバー、メモリなど、特にカタカナ用語が多く、これらは普段コンピューターを使う人しか聞かない言葉です。中にはこれらの言葉を聞いただけで拒絶反応を起こす人もいるかと思います。

他にも理由はあると思いますが、周囲の話を聞いていると、主な理由としてはこの2つと、あとは導入コストがかかってしまうため、ITの導入を避けるケースが多く見受けられます。

4.どうすれば苦手意識を克服できるのか

では、どうすれば苦手意識を克服することができるのでしょうか?私個人の考え方にはなりますが、下記の通り実行できれば克服できるのではないでしょうか。

マニュアルを読むことから始めない

まず「マニュアルを読むことから始めない」ということです。ゲームで言うと説明書を読まずに、とりあえず始めてしまうということです。先述した通り、コンピューターのコマンド、メニューは複雑で、場合分けをしていくと入力パターンがあまりにも多すぎます。そのため、マニュアルも莫大な量となり、1つ1つ覚えようとすると日が暮れてしまいます。

それよりもまずは使い始め、途中で分からないことがあれば「マニュアルを見る」or「ネットで調べる」等して、必要な情報を引き出していった方が早く解決にたどり着く場面が多く感じます。それでも分からなければ開発元に問い合わせを行うことで効率化が図ります。上記を繰り返すことで、必要な操作方法を習得しコンピューターを使いこなせるようになっていきます。

あえてIT専門の辞書を使わない

次に、「IT専門用語を調べる時にIT専門の辞書は極力使わない」ということです。未知の専門用語が出てきて辞書で調べても、その説明文にもまた未知の専門用語が出てくる負のスパイラルが続きます。それよりも私は、身近なものに例えてもいいので、噛み砕いて理解することが大切だと考えています。

具体的なアプローチとしては、ネットで「○○とは 分かりやすく」と調べると、イメージしやすいような説明をしてくれるページが大抵ヒットします。知人に聞くときも、何かイメージしやすいものに例えてもらって説明をお願いしてみるのも良いかもしれません。(例えば、パソコンの「メモリ」は、いわば作業するデスクの広さを表している…など)

5.事例

ここではITスキルの超基本であるExcelとチャットツールを事例に挙げます。

Excelでは「関数」を使えば、複雑な計算や手間のかかる計算が簡単にできます。しかしながら、関数を覚えようにも、Excelに内蔵されている関数は膨大にあるので時間がかかってしまいます。それよりも作業していく中で必要な関数を調べて使っていくことで、関数を自分のモノにすることができます。

次にチャットツールについて挙げます。チャットツールはその名の通り「チャット」が主な用途になりますが、チャットだけでも「メンション機能」、「通話」、「ファイルの共有」など様々な機能があります。また、最近のチャットツールは「タスクリスト」、「カレンダーとの連携」など、多岐に渡る機能を持っています。それらも必要な機能だけ習得すれば十分ですが、使いこなせるようになれば「コミュニケーションの円滑化」、「業務の改善」が期待できます。もし、チャットツールの導入が初めてで、組織内に使い方を知っている人が誰もいない場合は、誰かが先駆者となって使い方を学ぶ必要があります。そこに不安を覚える方もいらっしゃるかと思います。ですが、間違ったメニューやボタンを選択しても取り返しのつかなくなることはそうそうありません。チャットツールの各機能に実際に触れてみて、どのようなものか実感しながら使っていくと、より使い慣れることができます。

6.最後に

IT導入に対するスタッフの苦手意識を克服するためには、何よりも最初から逃げずに挑戦することが大切であると考えます。ITは使っていくうちにやり方を習得して使いこなせるようになるものです。「知らないことが多くて当たり前」と割り切って、まずはとにかくやってみるべきかと思います。
そして、IT導入により経営改善、医療サービスの向上を目指してみてはいかがでしょうか。

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