2026/08/31/月
大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」
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皆さん、こんにちは。明日から9月です。
まだまだ暫くは暑いでしょうね。熊本で被災した方のお身体がとても心配です。
私は、この暑い中、斜視の手術をしました(両眼)。
メディヴァは自分の出産で医療機関に掛かった時の課題意識から創業しましたが、今回の手術では何を感じ、何か学んだのか、、、また、機会があれば別途共有させてください。
さて、今回は医療従事者には馴染み深い「医局制度」について。
日本の「医局制度」は1893年に帝国大学で始まり、研究・教育・診療を教授が統括するピラミッド型組織として発展しました。戦後〜1980年代は「医局の黄金期」とされ、関連病院への医師派遣によって地域医療を支える一方、学閥や閉鎖性、教授への権力集中などの弊害も生まれました。また研究へ偏重し、必ずしも臨床を学ぶベストな環境は構築されませんでした。一部では隠ぺい工作、パワハラ、アカハラが横行し、患者の権利や医師の働き方やキャリアは置いてきぼりにされていました。
2004年に新臨床研修制度が導入され、医師は「大学医局」に属さず市中病院で研修できるようになり、臨床教育に強みを持つ市中病院(亀田総合病院、虎ノ門病院、湘南鎌倉病院など)が「市中医局」として台頭しました。「大学医局」の力は急速に弱まり、いわゆる「医局崩壊」が起こります。
一方「市中医局」は臨床教育には長けて優れた医師を数多く輩出しましたが、地域病院への人事派遣の仕組みを持たず、医師紹介業(一般名としての「民間医局」)がその穴を埋める形で拡大しました。
「民間医局」が提示する勤務先候補は、自力では医師が集まりにくい病院が中心です。しかも商売なので、紹介料の高低によって病院を選別することもままあります。このため、医師にとって、その仕事が長期的なキャリア構築につながるかどうかは、本人のよほどの強い意志と運次第となります。また「民間医局」の紹介料が医療機関の経営を圧迫しているという問題もあります。規制が必要では、という議論が私が専門委員を務めていた「規制改革推進会議」でも出ましたが、民業圧迫と反対意見が出て実現しませんでした。
(余談ですが、特定の病院に勤務したい、その病院が募集している、というのを見た医師が直接応募ではなく、わざわざ「民間医局」を通して紹介してもらう、というケースをよく見ます。「民間医局」はどういう構造の業界か?そこを通すことが病院にとってどういう経営的な意味があるのか?紹介料が上乗せされるので採用される確率が減ることも含め、もう少し医師側も勉強して考えるようになってほしいと、残念に思います。)
こうした中、「大学医局」では臨床により力を入れ、パワハラ、アカハラを排し、リベラルな「大学医局」として運営するところも出ています。ただ大学医局全体としては、残念ながら以前のような求心力は持てず、キャリア支援も限定的です。
以上ご説明した各医局の一般的な特徴は以下の通りです。
大学医局:研究◎/臨床教育〇/キャリア支援△/地域医療支援〇
市中医局:研究△/臨床教育◎/キャリア支援△/地域医療支援✕
民間医局:研究✕/臨床教育✕/キャリア支援△/地域医療支援✕
いくつか補足説明をします。
『キャリア支援』に関しては、「大学医局」は変わらず、専門医取得、学位、留学、研究、関連病院での経験、ポストに就任については強力なキャリアパスを提供しています。ただ、近年は社会と医師自身のニーズも多様化し、それに応じた幅の広さや個別支援が必要になっていて、それに関しては対応できていないので、△としました。
ここにある『地域医療支援』の定義は、自組織の診療だけでなく、地域の複数医療機関に継続的に医師を供給・配置する機能をイメージしています。「市中医局」の多くは、地域医療そのものになっていますが、まったく関係の無い地域や病院に医師を出す機能やキャパシティは多くの場合ありません。
さて、私たちが作ろうとしているCCH総合診療医局は「シン・医局」として異なる特徴を持ちつつあるのではないか、と最近考えました。
CCH総診医局は一般社団法人コミュニティ&コミュニティホスピタル(CCH)協会を通じて展開している、複数のコミュニティホスピタル(地域密着型の中小病院)を臨床と教育の場とする総合診療医局です。
総合診療医の育成は、大学病院では症例が偏り難しいのですが、コミュニティホスピタルでは、外来・病棟・在宅・地域活動と、幅広い臨床経験が得られます。
CCH総診医局は教授や組織のためではなく、社会と医師個人のための医局を目指しています。一人ひとりの学びとキャリアを丁寧に支援する仕組みを持ち、臨床はもちろんのこと、リーダシップ、マネジメント、DX、カイゼンなど医師が独り立ちしたときに必要となることを学べるようプログラムを設計しています。また、地域活動、行政や企業との付き合い方、海外展開等も興味があれば触れる機会を提供しています。
CCH総診医局には専攻医だけでなく、婦人科・心臓血管外科など他科からの転向組もリカレント教育を受けています。他科の専門医の場合は、今で学んだことを活かしながら、「π」字型(総合診療×他科専門性×マネジメント等)人材を目指します。
総合診療医は「キャリアが見えにくい」と言われてきましたが、これからの日本で最も必要とされる領域である総合診療の医師に、コミュニティホスピタルの活動を通じて、明るいキャリアを提示しています。
学ぶ背景は多様で、「広く患者を診たい」、「地域に根ざしたい」、「実家の診療所を継ぎたい」、「将来病院を取得したい」など、個々の志向に合わせたキャリア支援を行っています。将来的に出身地での病院経営者になりたい場合は、取得支援や紹介も視野に入れています。
CCH医局の特徴は以下の通りです。
CCH医局:研究△/臨床教育◎/キャリア支援◎/地域医療支援〇
『研究』はまだ十分ではありませんが、地域活動を通じた公衆衛生・臨床研究の可能性は広がって、徐々にスタートしています。
『地域医療支援』は、「市中医局」と同様、コミュニティ・ホスピタルの存在自体が地域医療に資することも多いですが、今後は短期ローテーションやオンライン診療支援などの仕組みを整えながらへき地、準へき地の行政や病院と連携しながらの支援も計画しています。
現在、CCH総診医局には約40名の医師が所属し、開始4年で総合診療医局として上位に入る規模となりました。今後も「シン・医局」として思想と体制を磨き、社会に貢献していくことを目指しています。
