現場レポート

2025/03/31/月

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

「初インド!」行ってきました

先週火曜日から金曜日の早朝まで、インドに弾丸出張してきました。
メディヴァは以前よりインドで仕事をしています。インドの医療機関と富士フイルムの合弁で、世界中に展開予定のAI健診センターNURAの立上げを手伝っています。 
ただ、私自身は人生初インドです。メディヴァの仕事ではなく、Medical Excellence Japan (MEJ)の渋谷健司理事長の代理として、インドで開催されるNATHEALTHカンファレンスでしゃべってきました。


MEJは、日本の健康・医療の国際展開を推進するために、政府、特に経済産業省の肝いりで設立された一般社団です。主な活動はアウトバウンド(日本の医療技術、機器、サービス等を海外に展開するための支援)とインバウンド(外国人患者の受け入れ、医療ツーリズムの促進)を担っています。



厚労省、内閣官房、日本医師会等とも連携している準政府機関で、医療関係企業や病院が会員になっています。メディヴァは割と古くからの会員で、私は互選で理事を務め、一昨年、理事長が交代してからは、副理事長を仰せつかっています。
副理事長とはいえ、完全なボランティアなので、常時仕事がある訳ではなく、アドバイスをしたり、今回のように渋谷理事長の代理で国内外の会議に出席したりしています。


今回はNATHEALTHというインド国内の政府関係者、医療機関、ヘルスケア企業で構成される大規模団体のカンファレンスに出席しました。NATHEALTHはインド国内の医療アクセスと品質向上を推進することをミッションにしており、MEJにとっては非常に重要なパートナーで、MOU締結を検討しています。


また次の日は、インド産業の発展を目的とした伝統的のあるCII インド工業連盟にも訪問しました。こちらともMOU締結を検討しています。
米中関係が悪化する中、インドは日本にとって益々重要なパートナーになりつつあり、またインドの各団体は、政府にとっても重要な相手になります。渋谷理事長は昨年何度もインドに出かけ、インドのポテンシャルと日本の医療界にとっての重要性を説いて来られました。今回は、たまたま別の海外出張と重なり、私が代理で行くことになった次第です。


NATHEALTHカンファレンスのメインテーマは、インド政府が推進する「医療ツーリズムの強化」です。インドには公立病院もありますが、民間病院の活躍も著しいです。アジアの多くの国と同様に、公立病院は無料か低料金で低所得者向け、民間病院は高所得者向けで治療費は高額です。公立病院は医師や設備の数も質も十分ではありません。医師は公的病院と民間病院を掛け持ちすることができ、以前聞いた話だと給料だけもらって、公立病院に顔を出さない医師もいるそうです。
このような制度下で、民間病院は収益の確保のためにメディカルツーリズムに力を入れています。提供価値は「高品質な医療をリーズナブルな価格で」です。特に医療費が高いアメリカと比べると差は顕著で、アメリカだと10万ドル掛かる心臓バイパス手術が5~7000ドルで受けられるとのこと。


患者は近隣の南アジア国(バングラディッシュ、ネパール、スリランカ等)、中東(アラブ、サウジ等)、アフリカ(ケニア、ナイジェリア等)、旧ソ連(カザフスタン、アゼルバイジャン等)、東南アジア(ミャンマー、インドネシア等)、欧米(アメリカ、イギリス等)から訪れます。腫瘍や心臓病、腎移植等の深刻な疾患だけでなく、美容形成、歯科治療も人気です。
ただ、近年最大の患者供給国だったバングラディッシュとの関係が悪くなり、新たな供給国を探さなくてはいけない、もっと外貨を稼ぎたい、タイや韓国に後れを取っているなどの理由によりインド全体でメディカルツーリズムに力を入れています。


インドには28の州と8つの連邦直轄領があり、それぞれが殆ど独立国家のように法体系から言語、習慣まで異なっています。医療政策もそれぞれ違うので、国全体で統一した動きをするのは非常に困難とのこと。NATHEALTHのカンファレンスは統一した動きの促進を目指して開催されました。
インドはそもそも、日本とは異なり、統一した動きは重視しない国民性ではないか、と推測しています。日本のメディカルツーリズムは課題が多く、何故このテーマで日本から登壇者を呼ぶのか、という疑問の答えは、日本なら国全体を上げて粛々と動いているだろう、という美しい誤解?に基づいているのかもしれません。
せっかく日本から行ったので、日本の課題はさておき、日本の医療とMEJの宣伝に務めました。


日本の強みは、標準化された保険医療制度、質の良い医療プロフェッショナルと最先端のメディカルサイエンスにあります。外国人が日本の医療に抱くイメージは最先端テクノロジーで、「売り」になるのは、重粒子線・陽子線、IPS、ゲノム、肝細胞等の最先端治療です。また、日本の発明である「人間ドック」と日本の健康的な食生活を組み合わせた予防医療やトータルウエルネスもポテンシャルの高い分野です。


これらを促進すべく、また課題である医療ビザ取得の手間や時間、保健医療と混在するプロセスなどを解決すべくMEJは厚労省、経産省、外務省等と連携しています。MEJは産官学が連携して作った組織であり、そのような組織があること自体が日本の一つの強みと言っても過言ではないと考えます。
私の登壇は一番最後だったので、開始時は既に1時間押していました。(ここら辺が、いかにも南アジア、、、。)その頃になると聴衆も減っているかと思ったのですが、全然そのようなことはなく、熱心に聞いていただいたのは有難かったです。

さて、最後にインド全般への感想です。

出国前に随分と脅されていました。「シャワーでは絶対口を開けるな」、「目も開けるな」、「食器はアルコールで拭いてから使え」、「夜は出歩くな」、「野良ワンコは可愛いかもしれないが、狂犬病だと思え」等々。それに比べると随分と良いところでした。ご飯は美味しいし、人も親切。宿もキレイ。交通渋滞もそう酷くない。


ただ、確かに旧市街(オールドデリー)に行くと無秩序に建ったバラック、路上生活者、正体不明なものを山盛り売っているマーケット、細い道を人をかき分けて走るバイク、、。正しくインド!という風景でした。野良ワンコは新市街(ニューデリー)にも、いたるところに居て、丸々太っているのは誰かが餌付けしているのでしょうか?野良牛も街中あちこちを闊歩して、交通渋滞を起こしていました。

よく考えたら、私はもっとすごいところに行っています。天安門事件直後の中国。スーチーさんが力を持ち始めた頃のミャンマー。野良豚が街中を闊歩するペルー。未だ以って高級ホテルで茶色い水が出るモンゴル。それに比べたら2025年のインド恐れるに足らないかもしれません。


今回は2泊しかしない弾丸出張でした。2泊だけでも少しお腹は緩くなったので、初回はこんなものでいいかな、と思っています。
ちなみに、、、お腹を壊した原因は多分「氷」です。インドにいる間は気を付けていたのですが、帰りのラウンジでジントニックを頼んだら氷が入っていました。「うっ」と思ったのですが、アルコールで消毒される?と思って、溶ける前に一気に飲みました。それでもダメだったようです。次回は、、、ジンをもう少し濃くしてもらおうか、と、、。