現場レポート

2024/12/25/水

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

カザフスタン医師研修とメディヴァの一年

2024年も残り一週間となりました。あっと言う間の一年でした。1年が短いのは、歳のせいとも思いますが、年々忙しくなっているからのような気もします。
例えば今月はカザフスタンから37人の総合診療医が研修に来ていました。急に決まって、カザフ側とのやりとりは夜中まで。

ついでなので、カザフスタンのご紹介を。
カザフスタンは世界で7番目に国土が広く、日本の約6倍。人口は2000万人で日本の約6分の1です。医師の数は1万数千名で、日本の25分の1。
そのうち8割は総合診療医で、1医師あたり1700名を担当する登録制をとっています。

資源が豊富な、スタン国の中でも有数のお金持ち国なので、総合診療医に掛かるのは全額公費。専門医の数は少ないですが、ガンの疑いがあるとファストトラックに乗って、10日ばかりで検査→治療へと進みます。
国土が広いので、オンライン診療は当然普及し、ドクターヘリだけでなく、ドクタージェットも飛びます。日本のオンライン診療の規制等の話をしたら、きっと呆れられるでしょう。

研修は、同国最大の都市、アルマトイ保健局からの依頼です。旧ソ連時代はアルマアタといって、WHOのプライマリケア宣言があったところで、プライマリケアの聖地みたいなとこらしいです。訪日させたいと決まったあと、アルマトイ保健局からいろんな大学や病院に手紙を書いて、ファックスを送ったけど、誰からも返事がなかったそう、、。(ありげですが、お気の毒、、。)
最終的には日本の外務省経由でMedical Excellence Japanを通じて、うちにたどり着きました。

今回、豊田地域医療センター、東京科学大学を始め、多くの大学、病院、施設に受け入れていただきました。(講師の皆様には大感謝です。)
若いからか、全体的にキャピキャピしていて、元気な感じ。熱心で、質問もあれや、これやいろんなものが出ます。一方、富士フイルムを訪問した時は、女医さんが多いせいか、医療機器そっちのけで化粧品に目の色を変えたり、社内売店で爆買いしたり。

一方、どうもかなりシビアな研修でもあったようで、修了試験をしたそう。
カザフ側の希望により修了証を出しました。37枚の修了証とそれぞれの付属資料、入国と出国書類にサインと押印が大変でした。

最終日には、各研修のビデオクリップを作って、学びをプレゼンしてくれました。各セッションの後に記念品と感謝状を渡していただき、国歌やカザフの愛の歌、日本の『さくらさくら』を歌ってくれたのはかなり感動ものでした。
なぜ、その総合診療の聖地アルマティから日本に学びに来たのか未だ謎ですが、、まずはめでたし、めでたし、ということで?

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さて、年末のお話を。
メディヴァでは全社忘年会に合わせて、「無人島」賞を表彰しています。メディヴァは、「患者視点の医療改革」をミッションとして、社員はそのミッションを実現すべく、それぞれが自分の作りたい世界観(事業)を作ることを推奨しています。そのプロセスを社内では「無人島に街を創る」と呼んでいます。

無人島に流れ着いて、そこでまず自分で魚を採って自活することを覚えます(コンサル能力の取得)。生活できるようになると、自分はどういう街を創りたいかを考え(事業構想)、街を創り始めます(事業創造)。街の形が見えてきたら、仲間を無人島に呼び集めます(リーダーシップ)。そして皆で街づくりに勤しみ、どんどん街が出来ていきます(組織運営)。

「無人島」賞は、正確には「無人島に街を」賞ですが、毎年各マネージャーからの推薦を得て、取締役で審査します。数は年によって異なりますが、今年は厳選5か所にしました。「無人島」に新しい街を創った場合も、既に創った街を更に発展させた場合も受賞対象となります。

今年の受賞は下記になりました。

  • コミュニティ&コミュニティホスピタルのDX化プロジェクト
    中小病院における電子カルテ普及率は5割にも満たず、DX化は進んでいません。この現状に風穴をあけるべくクラウド型の電子カルテシステムを構築し、パイロット病院に実装しました。まだ街ができ始めたばかりですが、今後の展開が期待されます。
  • 日本の介護が国境を越えたプロジェクト
    日本の介護には諸外国から大きく期待されていますが、実際は海外で展開することは非常に難しいです。本プロジェクトはベトナムで介護研修を行うというものでしたが、介護機器の輸入からしてハードルが高かったのを、粘り強く対応し、研修室の開設にこぎつけました。ベトナム人を対象とした研修も大いに盛り上がっています。
  • 社内外への理念発信プロジェクト
    社内報でメディヴァの文化を発信し、理念浸透を促進しました。社長からの発信、部門紹介、ヒト紹介、社史等の様々なテーマを取材し、ポータルサイトでまとめて、メディヴァの文化、理解を深めるサイトの構築、運営を行いました。
    また「人のさいご」という、人が最期どのように命を閉じていくのかを、本人を読める本にまとめ上げました。自費出版でありながら、半年で4000部以上販売し、直木賞作家の書評に取り上げられ、唯一無二の本として評判を得ました。
  • バックオフィスのDX化プロジェクト
    人事評価、勤怠、入社手続き、有給管理、年末調整等各種のハックオフィス業務をDX化し、メディヴァだけでなくグループ内医療機関の効率化、質の向上を実現しました。すでにあるメディヴァという「無人島の街」を発展させた貢献が評価されました。
  • 大賞:健診センター「イーク」のインフラ基盤構築プロジェクト
    女性向けの健診センター「イーク」は、丸の内、表参道、有楽町、紀尾井町の4か所で年間5万人以上を受け入れています。来年は渋谷にも分院が出来ます。
    各院にまたがるシステムをリプレイスして、「無人島の街」を大きく発展させるインフラを作りました。移行期間中、健診業務への影響を最小化し、やり遂げました。3年に及ぶ準備と現場力を活かし、最後までやり遂げるGRITも効いたプロジェクトです。
    イークは今年、コネクトセンターも開設しています。システムを統合し、AI等の新規ツールを導入し、健診のバックオフィス業務(営業・契約、予約、事前・結果発送、請求等)機能を4院から集約し、運営の効率化と質の向上に貢献しました。クライアント健診機関からも関心が寄せられる、健診事務機能のモデルとなりました。

忘年会では以上の5つの「無人島賞」と永年勤続者を表彰し、昇格者を発表しました。来年、2025年はメディヴァ創業四半世紀の年です。来年も新たな「無人島の街」を皆で創りますので、どうか宜しくお願いします。