2022/11/15/火

医療・ヘルスケア事業の現場から

地域連携室における効果的な電話営業の始め方

コンサルタント 石川昂志

1.はじめに

病院経営において、紹介患者の獲得は重要なテーマの一つです。これまで紹介患者獲得のために、紹介元を訪問し、営業活動を行っていた医療機関も多いと思いますが、コロナ禍ではそれが難しくなっています。資料の郵送のみ、または全く営業活動ができなくなっているという医療機関も多いのではないでしょうか。

対面の営業活動以外の方法としては、電話、FAX、資料郵送、メール、SNSの活用などがあり、それぞれ下記のようなメリット、デメリットがあります。

病院の主な営業活動とそれぞれの特徴

メールやSNSの活用は効率が良い反面、メールアドレスを把握しきれていない、医療機関がSNSから情報収集することはまだまだ浸透していないなどの課題があります。

一方で、電話営業に関しては、相手の時間を拘束するものの、どの医療機関に対しても簡単に始めることができ、相手から直接ニーズなどを聞き取ることもできます。

また、医療機関ではまだまだFAXを使用する文化が残っているため、電話営業とFAXを組み合わせることで、効率的な営業活動を行うことが可能となります。

今回は直接訪問ができない状況における、電話営業の進め方についてご紹介します。

2.電話営業を始める前の準備

電話営業をする際も、直接訪問する際と同様に、事前準備が非常に重要となります。電話営業を始める前には事前準備として考えておくべきことが2つあります。

電話する用件の検討

電話をかける際には、まず電話をかける用件について検討する必要があります。相手も日々の業務で忙しい中、時間を取って話を聞いてもらうためには、相手に話を聞く必要があると感じてもらうことが重要です。新しい取り組みなどの重要なお知らせは、電話をかける際の良い用件となりますが、頻繁にはあるわけではありません。

電話の用件に関しては、上記以外にも、例えば、「新しく〇〇に関するパンフレットを作成したので、これから送らせてもらいたい。時間のある時に見てほしいので電話した」、「以前◯◯についてFAXしたが、なかなか周知できていないため、再度各施設に案内している」などの簡単な用件でも十分聞いてもらうことができます。

トークスクリプトの作成

電話での営業は対面での営業と比較して、長く話し込むことが難しく、話しているときの相手の表情なども分かりません。そのため、話したいことを整理できていないと、伝えたいことを十分に伝えられないまま終わってしまう可能性もあります。

そこで、事前準備として、電話の用件や、伝えたいこと、聞きたいことなど、どのような流れで話を進めていくのか、トークスクリプトを作成しておくと、スムーズな流れで電話営業を進めることができます。

一度トークスクリプトを作成すれば、あとは同じ内容で電話営業を進めていくことができるので、効率も高めることができます。また、同じ質問を様々な相手に聞き取ることで、自院がどのように思われているのか分析することができます。

電話営業のトークスクリプト例

3.電話営業に加えて実施した方が良いこと

電話営業だけでも一定の効果が期待できますが、下記2点を併せて実施することで、より電話営業の効果を高めることができます。

電話後の送付物の作成

資料を送付するだけでは、見られずに捨てられてしまうことや、見てほしい相手に見てもらえていないことも多いと思います。

送付した資料を見てもらうためにも、電話営業は有効です。電話の際に、「この後資料も送付させていただくので、お手すきの時にご確認いただきたいです」と一言加えておくことで、資料を見てもらう確率を高めることができます。

Zoomなどの遠隔会議システムを使用したオンライン面談の依頼

電話営業に加え、Zoomなどを使用したオンラインでのアポイントを取得できると、時間を取って相手のニーズを確認することができ、非常に有効です。オンラインのアポイントについては少しハードルが高く、頻繁に取得できるものではありません。しかし、電話の最後に、「もし差し支えなければ、今後の連携のために、オンラインで、困りごとなどをお聞かせいただけないでしょうか」と確認してみると、一定数、オンラインのアポイント取得に繋がる可能性があるので、確認してみる価値はあると思います。

オンラインでのアポイントが取得できた場合には、可能な限り、医師にも参加してもらうことも重要です。医師から直接自院の強み等を話してもらうことで、より深い話し込みができ、相手から印象に残るアポイントにすることができます。  

4.電話営業による効果

弊社支援先において、介護系施設に対する地域包括ケア病床の電話営業を開始したところ、接触回数の増加に繋がり、電話営業、オンライン面談を実施した一部施設から複数回の紹介患者の獲得にも繋がっています。

接触回数に関しては、コロナ禍に入り、全く営業活動ができていない状況でしたが、電話営業活動を開始したところ、2か月半で100軒以上の施設に電話営業を実施することができました。コロナ前に直接訪問による面談頻度としては1日1軒程度でしたが、電話営業では、1日2軒程度の営業活動ができるようになっています。また、一部の施設では、 オンライン面談にもつながっています。

5.終わりに

コロナウイルスの影響が長引いており、従来通りの自由な営業活動がいつ再開できるかは不透明な状況が続いています。このような状況下においても、電話営業はコストをかけずに始められる取り組みです。直接訪問ができない中でも、継続して紹介患者を獲得していくためには、電話営業等で継続的に紹介元にアプローチすることが重要だと考えます。

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