2023/12/12/火

医療・ヘルスケア事業の現場から

診療報酬改定の影響と対策(外来編)

コンサルタント 正者忠範

1.2024年はトリプル改定&医療介護計画の惑星直列大改定

来年(2024年)は惑星直列大改定とよばれ、診療報酬改定、介護報酬改定、障害福祉サービスのトリプル改定に加え、第8次医療計画、第9期介護保険事業計画等が同時にスタートする年となっております。

診療報酬改定は、先日「6月1日スタート」と決定したことを始め、様々な改定が行われます。 本稿では「外来診療」について、2025年を見据えどのようになっていくのか、中央社会保険医療協議会(以後中医協)での議論も踏まえつつ診療報酬改定の予測を行いました。

2.中央社会保険医療協議会(中医協)

本稿作成時点(2023年12月)で、診療報酬改定の本丸である中医協では、様々な事柄が話し合われています。医療DXや働き方改革についても議論されており、そこに重きを置いているのが見て取れます。

3.医療DXとオンライン診療

医療DXに関する診療報酬改定の方向性

医療DXでは、全国医療情報プラットフォームの構築や電子カルテ情報の標準化を如何に具体的に進めるかということ、診療報酬改定DXとして共通算定モジュール導入と診療報酬改定の施行時期の後ろ倒しを行うことの意味、電子処方箋の普及と活用方法について、サイバーセキュリティ対策の強化、医療DXの診療報酬における評価のあり方などが挙げられています。

オンライン診療の現状と展望

2022年の診療報酬改定にて、従来の施設基準が必要な「オンライン診療料」が名前を変え、「情報通信機器を用いた初診料/再診料」となり、コロナ禍特例初診(214点)より少し高い点数(251点)を算定出来ることとなりました。2023年7月現在で約8,500の医療機関でこの届出がなされています。このいわゆるオンライン診療は、中医協でも継続しての議論となっており、「初診時の睡眠薬処方なでの不適切事例」「へき地や在宅でのDtoPwithN」「離島、へき地におけるオンライン診療の展開」などが話し合われており、なかでも「へき地におけるオンライン診療」については、先日石川県七尾市で郵便局を利用したオンライン診療の実証実験が始まっております。医療機関が少ない地域で郵便局を利用したオンライン診療が出来るようになれば、高齢者の受診機会を逸することなく医療を提供できることとなり、とても意義のあることだと考えられますので、ぜひ進めて頂きたいです。

また、睡眠時無呼吸症候群のCPAP療法をオンラインで算定してはどうか、という議論も進んでいます。こちらも新型コロナウイルス感染症の特例で算定は出来ていたのですが、本年5月8日以降は算定不可となっています。CPAP療法を行っている患者さんは比較的多忙な方が多いため、月1回の受診を忘れてしまう方も多いようです。自分の都合のよい時間で受診できるオンラインでの診療が可能になれば、治療成績も上がることを期待できるのではないでしょうか。

4.かかりつけ医機能

生活習慣病管理料に関する議論

また、かかりつけ医機能についても医療法の改正を含め話しあわれています。その中でも中医協では、「生活習慣病管理料」についての議論が盛んです。生活習慣病管理料は糖尿病、高血圧症、脂質異常症を主病等する患者に算定しますが、前回の診療報酬改定で投薬が包括から外れ、少し点数も高くなっています。とは言え、「療養計画作成が手間」「自己負担があがることの説明が面倒」等の理由で算定している医療機関が少ないのが現状です。算定している医療機関では、糖尿病患者に眼科受診を勧めて診診連携を図っているところもあり、患者にとってもメリットはありそうです。この生活習慣病管理料を算定していると「外来データ提出加算(50点/月1回)」が算定出来ます。他にも在宅時医学総合管理料、疾患別リハビリテーション料を算定しているところで加算が取れます。先述の自己負担増にはなりますが、検討してみてはいかがでしょうか。支援先の用賀アーバンクリニックでも検討しており、栄養相談や簡単な運動指導(フレイル予防含む)を合わせて提供するべく準備を進めています。

かかりつけ医機能の推進

また、政府の「骨太の方針2023」でもかかりつけ医機能は触れられています。第4章37ページに「かかりつけ医機能が発揮される制度整備の実効性を伴う着実な推進」という一文があります。2021年に発布されたいわゆる「医師の働き方改革」にも関連するところですが、多忙を極める大病院の医師の業務を軽減するために、なるべく外来患者は開業医(かかりつけ医)に診て頂き、検査や手術が必要な症例のみ大病院に紹介するという流れを作るべく、紹介受診重点医療機関の選定や、病院における逆紹介推進などに、一部、前回改定で評価されたところもありますが、次回診療報酬改定でも手厚くされるものと見ています。

かかりつけ医から紹介状を持参せずに受診すると特別な料金が必要となります。料金徴収の件だけではないかと思いますが、紹介状なしでの受診は減少傾向が顕著とのデータも出ています。今後もこの動きは加速するでしょうから、日頃から病院との関係作り(病診連携)も必須と考えられます。

さらに、医療と介護(医師と介護支援専門員)との連携をかかりつけ医機能に関する評価の要件とすることも検討されておりますし、調剤薬局薬剤師もかかりつけ医との連携を推進することが重要との文言も中医協資料にはあります。薬価はまた下がることが予想されておりますので、院外薬局にとっては手痛くなることが予想されます。

5.まとめ

財政制度審議会の建議に「診療所の極めて良好な経営状況を踏まえ、診療所の報酬単価を引き下げること等により、現場従事者の処遇改善等の課題に対応しつつ診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当」との記載があり、厳しい改定となることが予想されます。新型コロナウイルス感染症の補助金があったので持ちこたえていた医療機関もありそうで、期間限定で算定出来ていた特例も終了または減点されているものも多く、なかなか苦しい判断を迫られるかもしれません。 そこで生き残って行くために、秀でた武器を持つ必要がありそうです。

執筆者

正者 忠範
株式会社メディヴァ コンサルティング事業部コンサルタント。用賀アーバンクリニック事務次長。医療福祉連携士。東京都出身。駒澤大学経済学部経済学科卒業。在学時より非常勤職員として、二次救急病院で勤務。卒業後常勤となり、受付・総務・医療相談等多岐にわたり従事する。法人関連の介護老人保健施設に異動し、介護保険の業務にも携わる。別法人の病院での経験。現場経験を生かし、患者満足度・職員満足度の高い職場を作って行くことを目標としている。

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