2023/12/28/木
医療・ヘルスケア事業の現場から
コンサルタント 正者忠範
目次
来年(2024年)は惑星直列大改訂とよばれ、診療報酬改定、介護報酬改定、障害福祉サービスのトリプル改定に加え、第8次医療計画、第9期介護保険事業計画等が同時にスタートする年となっております。
診療報酬改定は、先日の中医協で「6月1日スタート」と決定したことを始め、様々な改定が行われます。
その中でも、今回は「地域連携」について、2025年を見据え、どのようになっていくのか、政府の「骨太の方針2023」を踏まえ、医療福祉連携士でもある筆者が考察してみます。
前段として、地域医療連携という言葉が出てきたのは2000年頃でしょうか。当時「急性期病院加算」という点数が制定され、紹介状を介した病病連携/病診連携が盛んになりました。その管理部門として「地域医療連携室」が設置されていきます。
その後、2006年には紹介状に関する点数が削除され、新たに「退院支援」にかかる点数が付きました。そうなると、連携室に看護師を配置するところも増えてきました。2008年頃からは、地域全体を包括するようなネットワーク作りが始まり、各地域に実務者会が出てきます。いまでは、後述しますが行政や地域も巻き込んだ連携作りが必須となってきています。
「骨太の方針2023」の正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針2023加速する新しい資本主義〜未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現〜」と言い、本年は6月16日に閣議決定されました。2001年、当時の宮澤喜一財務相が内閣府に設置された経済財政諮問会議の議論を「骨太」と表現したことから、骨太の方針と呼ばれるようになっています。基本策を諮問会議で、具体策を財務省で決めることから、骨や軸がしっかりしている様を名前に込めたとされております。
骨太の方針に記載されていることが、翌年以降に政策として推し進められることになります。「少子化対策・こども政策の抜本強化」「国際環境変化への対応」「包摂社会の実現」など5章からなりたっており、医療パートは、第4章「中長期の経済財政運営」の中に記載があります。その内容から診療報酬改定の内容を読み取れるものとなっており、前回の診療報酬改定があった2022年の骨太の方針の32ページに「医療・介護分野でのDXを含む技術革新を通じたサービスの効率化・質の向上を図る」 という文言があり、「情報通信機器を用いた診療」が点数化されました。
骨太の方針2023の第4章37ページに「1人当たりの医療費の地域差半減に向けて、都道府県が地域の実情に応じて地域差がある医療への対応などの医療費適正化に取り組み、引き続き都道府県の責務の明確化に関し必要な法制上の措置を含め地域医療構想を推進」という一文があります。地域医療構想とは、将来人口推計をもとに2025年に必要となる病床数(病床の必要量)を4つの医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとに推計した上で、地域の医療関係者の協議を通じて病床の機能分化と連携を進め、効率的な医療提供体制を実現する取組みです。これにより、各地域では「地域医療構想調整会議」を開催し、関係者の協議を通じて病床の機能分化と連携を進めていますが、その連携をさらに推進されることが見て取れます。
また、同じ37ページに「かかりつけ医機能が発揮される制度整備の実効性を伴う着実な推進」という一文より、かかりつけ医機能がさらに推進されることが読み取れます。2021年に発布されたいわゆる「医師の働き方改革」にも関連するところですが、多忙を極める大病院の医師の業務を軽減するために、なるべく外来患者は開業医(かかりつけ医)に診て頂き、検査や手術が必要な症例のみ大病院に紹介するという流れを作るべく、紹介受診重点医療機関の選定や、病院における逆紹介推進などに、一部、前回改定(2022年)で評価されたところもありますが、今度の診療報酬改定でもさらに評価されるものと考えられます。
次に、39ページには、「当面直面する地域包括ケアシステムの更なる推進のための医療・介護・障害サービスの連携等の課題とともに、以上に掲げた医療・介護分野の課題について効果的・効率的に対応する観点から検討を行う」とあり、医療、介護に加え、障害サービスとの連携が図られます。先述いたしましたが、2024年は診療報酬改定、介護報酬改定、障害福祉サービスのトリプル改定となりますので、それぞれに呼応した連携について、評価されるものと考えます。
前回2022年改定からの違いはどうでしょうか。新しく「こころの連携指導料」や新型コロナウイルス感染症による動きから「感染対策向上加算」の点数が制定されました。いずれも、病院(急性期、回復期等)、診療所のみならず、行政機関(保健所、医師会)等ともきちんと連携をしてください、という点数の設定でした。次回改定にも新興感染症の点数が記載されることは間違いありませんので、行政との連携はさらに重要になると考えております。新型コロナウイルス感染症が5類になるまでは、毎日感染者数を保健所に報告するという業務がありましたが、こういう細かいことにも点数が付くようになると現場としては非常に有り難いのですが、どうでしょうか。
骨太の方針2023から地域医療連携を見てきました。
前回の骨太の方針でも、31ページに「質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築するため、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の国民目線での改革を進めること」ということがかかれており、上記のように、今後もその路線を継続するものと考えられます。
コロナ禍で出来なかった対面での協議会も始まっています。これを機に、しっかり「顔の見える連携」、さらにその先の深い関係作りができるといい医療が提供できそうです。