2023/09/21/木

医療・ヘルスケア事業の現場から

医師兼コンサルタントの強み

コンサルタント 羽川直宏 

1. はじめに

近年、医療界における課題は複雑化し、多岐にわたっています。画一的なコンサルティングの手法では、真に現場の声を取り入れ、実効性のある解決策を提供することが難しく、新たな価値の創造も限界に達しています。

その限界を打破するため、当社では、ビジネスや公共政策の視点を持ちつつ、医療現場への深い洞察力と実行力を兼ね備えた「医師兼コンサルタント」が活躍しています。

現在、筆者を含め4名の医師兼コンサルタントが在籍しており、「戦略立案・実行支援系」と「事業創出系」の2つタイプに分けることができます。

当社の医師兼コンサルタントは、医業経験を持っているだけでなく、現在も医業・診療をしながらコンサルタントとしても働いているという点で、他社に類を見ません。この記事では、「戦略立案・実行支援系」の医師兼コンサルタントの強みやその価値について、紹介したいと思います。

2. 医師兼コンサルタントの強み

戦略立案・実行支援系の医師兼コンサルタントは、文字通り、医師としての専門知識や経験、コンサルタントとしての能力を兼ね備えており、特に次の4つの特徴があります。

当然、医師でないコンサルタントでも、ヒアリングなどから現状を理解することは可能ですが、職員へのヒアリングだけでは見えない、一緒に働いてるからこそ見える点の理解が、医師兼コンサルタントの方が断然しやすいのが強みです。

また、医学的潮流等のキャッチアップについても、限られた短い時間の中で行うことができ、それらの知見をスピーディーにプロジェクトチーム内で共有することができます。結果として、プロジェクトチーム内での仮説の精度が向上し、現場に即した分析を短い時間で実施可能です。

また、現実的なアクションプランや提案が可能であり、クライアントである医療機関の医師やその他の医療職の方々との協業がスムーズになります。

3. 一般の医師との違い

さらに、一般の医師との違いとして、次の2つの特徴が挙げられます。


当然、一般の医師の中にも、これらの特徴を備えている方もいらっしゃいますが、我々医師兼コンサルタントも、これらを強みとして活かせるように、日々意識して業務に臨んでいます。

4. 実例

数ある事例の中から、医師兼コンサルタントの特徴がわかる4つの事例を、簡単にご紹介します。

1.病院経営改善支援における循環器内科・心臓血管外科の戦略立案の事例

戦略立案のための分析は、MDC分類ごとに行うことが一般的ですが、その方法は実際の臨床には即しておらず、分析結果がクライアント側の腑に落ちるまでに、時間と労力を必要とします。

そこで、循環器診療を、虚血性心疾患、不整脈、弁膜症、心不全、大動脈疾患などに分けた上で、それぞれの潮流を医学文献をもとにスピーディーにまとめました。また、クライアントの事務職、医療職の両方に理解していただけるような解説資料を作成しました。

それらをもとに、さらなるデータ分析を進め、クライアントの強み・弱みを把握し、ディスカッションすることで、クライアントが違和感を感じることなく、臨床に即した戦略を立案することができました。

2.救急医療の提供体制に関する簡易調査の事例

救急医でもある医師兼コンサルタントが受入不応需事案の分析を行い、知識と経験をもとにして「この事案はこうしたら受入ることができる」「この事案は●●だから本来は受入るべきだ」といった解釈(現場の方にとっては”耳が痛い”内容…)を加えることで、より深みのある提案につなげることができました。

また、現場の看護師が抱える心的ストレスがクリティカルな影響を与えていることに早期から気づくことで、その背景や原因を探り、経営面とスタッフ面の両方に配慮した提言を、短期間で行うことができました。

3.競合となる基幹病院建設を背景にした中期経営計画立案の事例

将来、近隣に大規模な基幹病院が建設されることになり、それによる救急医療の影響度分析と、戦略立案を行いました。具体的には、関係する消防機関から、これまでの救急搬送事案のデータを提供していただき、救急医の視点で分析することで、基幹病院誕生後に救急搬送依頼がどのように変化するかをシミュレートしました。それをもとに、クライアントで選択しうる救急医療戦略を規模別に複数提案し、検討していただくことができました。

4.在宅医療の実行支援から政策提言を行った事例

在宅医兼コンサルタントが、実行支援を兼ねた在宅医療を行う中で、介護施設の看護師による医療行為に制約があり、それによって入居者へ至適な医療が提供されていないという課題があることを痛感しました。そこで、実態調査を行い、看護師の医療行為拡充について、内閣府の規制改革推進会議で提言しました。

5.病院救急部門の運営サポートの事例

そして、筆者が担当している事業では、クライアントである病院において、救急医として働きつつ、立案した戦略の実行支援を行っております。

5. 最後に

このように、当社の医師兼コンサルタントは、「患者視点の医療改革」の原動力となっています。

今後も、医師兼コンサルタントの強みを活かし、クライアントと共に、社会課題に挑み、新たな価値を創造して参ります。

一味違ったコンサルティングをお求めの際は、お気軽にお声掛けください。ご相談、お待ちしております。