2023/06/01/木

医療・ヘルスケア事業の現場から

新型コロナウイルス感染症の感染症分類変更に伴う診療体制の変更事例

コンサルタント 加藤 真道

1.はじめに

本稿では、クリニックにおける新型コロナウイルス感染症の感染症分類変更に伴う診療体制の変更事例について報告します。感染症の分類変更は医療機関に大きな影響を与える要素であり、適切な対応が求められます。クリニックの事例を通じて、診療体制の変更がどのように行われたか、またその結果と課題について報告します。 

2.背景

当院は家庭医として地域の医療を支える都市型クリニックです。以前は新型コロナウイルス感染症対策として、発熱外来を時間帯や患者数を制限して開設し、その時間帯は風邪様症状を持つ患者のみを受け入れる体制を取っていました。しかし、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に位置付けが変更されることになり、診療体制の見直しを迫られることとなりました。 

3.診療体制の変更とその結果

新型コロナウイルス感染症の感染症分類変更に伴う診療体制の変更において、以下の取り組みを行いました。 

1. 発熱外来の撤廃 

従来の発熱外来による制限を解除し、診療時間中はいかなる患者でも受診できる体制としました。これにより、風邪様症状患者が受診しやすい環境を整えました。 

2. 予約診療枠の増加 

感染リスクが高くなる待合室の密集を回避するため、予約診療枠を増加しました。患者は予約時間に合わせて診察を受けることができ、待ち時間の短縮と待合室の混雑緩和の効果を狙い、既存の非感染患者が不安なく来院できる環境を整えました。 

3. 隔離基準の設定 

非感染者の感染リスクを低下させるため、感染患者の隔離基準を3段階に分け、それぞれのリスク患者に対する隔離場所を定めました。咳が止まらない、嘔吐してしまったなど、他患者が不安になるような患者をしっかりと隔離することで、感染リスクの低下に加えて、非感染患者の不安感の低減ができるようにしました。 

診療体制の変更により、感染症患者と非感染症患者を同一建物で対応することが可能となりました。来院した風邪様症状患者からは「診てくれてよかった」という感謝の言葉を頂くこともありました。また、定期通院患者の離れも見られず、むしろ軽症の風邪様症状患者の来院が増えており、現在の一日患者数は新型コロナウイルス流行以前の患者数を超える来院数となっています。 

4. 課題と今後の展望

現行の診療体制は、冬の感染症のピーク時に対応するには不十分であり、さらなる待合滞留の低減や予約枠のフレキシブルな利用など、まだまだ対策の検討が必要と考えています。 

本事例が他の医療機関にとっても参考となれば幸いです。