2024/06/28/金
事例紹介
【執筆】コンサルタント 塩澤/【監修】シニアマネージャー 林佑樹
目次
背景:
2024年度診療報酬改定により、糖尿病、脂質異常症、高血圧の3疾病の「生活習慣病管理料」算定が収益維持のために必須となり、対象患者の療養計画書作成と署名取得が必要となる。
課題:
●医療従事者の療養計画書に関わる業務負担の増大
●常勤非常勤に関わらず、限られた時間の中で患者様に納得いただく医療サービスの提供
解決策:
電子カルテを活用し、患者特性に応じた療養計画書のテンプレート自動作成ツールを開発
結果:
●医療従事者が療養計画書に関わる業務時間を、患者一人あたり約10分から約3分に短縮
●患者特性に応じた療養計画書テンプレートの使用で、限られた時間の中で医療の質を向上
2024年度診療報酬改定では、高血圧、糖尿病、脂質異常症の生活習慣病3疾患が特定疾患療養管理料算定の対象から除外されました。特定疾患管理料の225点と、外来管理加算52点、特定疾患処方管理加算Ⅱ 66点の計「343点」が算定不可となり、現状の運用を継続すると、例えば生活習慣病3疾患の患者が月に1,000人に来院する医療機関では、年間約4100万円の減収となってしまいます。そのため、収益維持のために現状の運用から「生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)」への切り替えが求められ、オペレーションに新たに対象患者の療養計画書作成と患者の署名取得が必要となります。
今回は、弊社が経営支援を行っている内科系のクリニックにて、生活習慣病管理料算定へ効果的に切り替えた事例をご紹介します。
生活習慣病管理料算定は収益維持のために行っているにもかかわらず、診察室の回転率低下や医療従事者の業務時間延長によるコスト増加が発生してしまうと、生活習慣病管理料に移行する意味がなくなります。一方、業務の効率化を図りすぎて療養計画に納得が得られず、患者から署名が取得できなかった場合、生活習慣病管理料の算定ができません。課題は以下の2点となります。
①療養計画書をシステムなど使用せず紙のまま運用した場合 ②療養計画書作成ツールを使用した場合 ③電子カルテ上で療養計画書の自動作成ツールを使用した場合 の3パターンで既存業務と療養計画書に関わる業務の整理を行いました。
【参考】既存業務フロー
パターン別に業務整理の結果、電子カルテ上で療養計画書の自動作成ツールを使用した場合、医療従事者の療養計画書に関わる業務負担軽減、かつ常勤非常勤に関わらず誰でも短時間でガイドラインと患者の特性(疾患、年齢など)に基づいた均質化された医療を提供することができると考え、弊社では電子カルテ上で療養計画書の自動作成ツールを開発し、6月より実装しました。
本支援を行うことで、医療従事者が療養計画書に関わる業務時間を、患者一人あたり約10分から約3分に短縮でき、現在は療養計画書に関わる業務に慣れてきたため、さらに時間短縮できています。また、限られた時間でも患者の特性に応じた療養計画書を作成することができているため、患者に納得いただいたうえで署名をいただくことができています。
今後は業務の効率化だけではなく、患者がより自身の疾患を理解・管理し、健康になっていただくために、疾患や年齢だけではない患者の特性を細分化し、テンプレートのパターン数の増加と患者健康情報をより詳細に管理していくツールを開発し、医療者の業務負担の軽減と医療の質の向上を目指します。
今回は、オペレーション設計とシステム開発による、生活習慣病管理料移行による業務負担増加を改善した事例をご紹介しました。弊社では、単にシステムを導入するだけでなく、現場と患者視点の双方を重視したデジタルトランスフォーメーションすることで、医療従事者にとっても患者にとっても良い医療を実現させています。
監修
林 佑樹
上智大学経済学部卒業。新卒で大手企業向け基幹システム開発企業に勤務。従業員規模1万人以上の企業向けにITシステムの提案営業からプロジェクト規模数十名程度のプロジェクト管理を行う。地域医療に興味を持ち、2013年よりメディヴァに参画。人生100年時代における医療介護モデルづくりを担当。地域医療を担う医療機関のコンサルティングを行いながら、国内外の医療介護のITサービス開発を行う。ウェラブル端末やIoT機器等を活用した医療者と患者の新しい関わり方や次世代に即した医療モデル開発を担当。