2023/04/28/金

事例紹介

紹介会社を効果的に活用し、希望通りの医師採用へ

コンサルタント 皆元裕樹

今回の事例のポイント

課題
地方にある有床診療所。継承目的で手術が可能な40代前後の整形外科医を探し、紹介会社を活用していたが、採用がなかなか進まなかった。

解決策
苦戦していた理由をヒアリングした結果から、以下の採用条件の見直しを実施。
●地域特性を踏まえた勤務条件へ変更
●近隣と同水準の給与へ見直し
●医師側の需要を意識した採用条件を譲歩
●クリニックのミッション・ビジョンを明記

結果
4名の30代~50代の整形外科医の紹介につながった。 

地方ならではの要因で、整形外科医の採用に苦戦

今回は、中枢都市から車で1時間ほどの距離に位置する手術可能な整形外科の有床診療所での事例です。理事長が高齢なこともあり、継承目的で手術が可能な40代前後の整形外科医を探しているということで、相談を受けました。  採用に苦戦していた理由をヒアリングしたところ、採用条件に原因があることが判明しました。具体的な原因は以下3点です。

①地域特性の課題
前述のとおり、ご相談のあった医療機関は地方にあり、同地域で勤務を希望する医師が少ない状況でした。
②地域の給与水準との乖離
当初は勤務中の内科医の給与を参考に設定していましたが、近隣の整形外科医の給与と比較すると安価であり、適切な給与になっていませんでした。
③医師のキャリア特性との乖離
地域の高齢化率、人口の減少率が高く、手術を要する整形外科の患者が少ない地域でした。一方、整形外科医は多くの手術を経験し、スキルアップを目指す必要があるため、大学病院などの手術件数が多い医療機関に所属する医師が多い領域です。
特に今回の採用対象である40代前後の医師は手術を積極的に経験する時期のため、クライアントが設定した採用条件と整形外科医のキャリア特性に乖離が生じていました。

地域特性・需要を調査し、採用条件を見直し

上記の原因に対して以下の施策を実行したところ、複数の整形外科医の紹介につながりました。

①地域特性を踏まえた採用条件
近隣の紹介会社に整形外科医が勤務先に求める働き方などの条件を確認した結果、今回の地域では「勤務日数」や「当直の有無」などのプライベートと仕事の両立を希望する医師が多いとわかりました。クライアントと協議のうえ、勤務条件を変更。週4日以下の勤務も可能にしました。
②近隣と同水準の給与
近隣の医療機関の求人サイトや紹介会社の担当者に確認し、同水準の給与を設定しました。
③医師側の需要を意識し、採用条件を譲歩
手術が必須条件というクライアントに対して、地域の特性(高齢化率、人口減少率が高く、手術の需要が減少傾向にある)が、医師側の需要(クリニックで手術を希望する医師はごく少数)とマッチしていないことを説明し、手術を採用条件から除外しました。
+α早期退職を防ぐために
今回のケースでは、クライアントが明確なミッション・ビジョンを有していました。そこに共感できない場合は入社後、定着しない可能性が高まるため、採用条件にクライアントが重要と考える「クリニックのミッション・ビジョン」、「期待する経営への参加度合い」を明記しました。

紹介会社活用のポイント

ここまで実際に実践した内容を紹介しましたが、紹介会社の活用が不十分で医師の採用に至っていないケースがあります。今回の事例とこれまでの筆者の経験も踏まえ、紹介会社活用時のポイントを整理しました。

採用条件設定時のポイント

基本項目(年収、経歴、臨床スキルなど)と自院特有の項目を検討する
採用条件を詳細に設定するほど自院にマッチした医師像に近づき、定着の可能性が高まります。

譲歩可能な採用条件を検討する
採用条件を詳細にすると定着の可能性は高まりますが、候補医師数は減少します。そのため紹介が増えない場合は自院が最も重視するポイントを検討しつつ、譲歩できる条件とできない条件を明確にすることが重要です。

紹介会社コミュニケーションのポイント

紹介会社のサイトを確認する
採用条件送付後も社内手続きの過程等で紹介会社のサイトに情報が掲載されないことがあります。採用条件送付後は紹介会社のサイトを確認し、情報が掲載されていない場合は、紹介会社に直接連絡し、掲載するように依頼しましょう。

紹介会社の担当者に定期的に連絡する
採用条件の送付だけでは採用の緊急度が伝わらず、医師の登録があっても、同様の条件を設定している医療機関がある場合はそちらに紹介される可能性があります。特に4月の転職に向けての登録が増える10月、11月に連絡することで、条件から若干外れていても紹介してもらえる可能性があるので、担当者には定期的に連絡することが重要です。

病院紹介の機会を活用する
基本的に医師への情報提供は紹介会社から実施するため、担当者には自院の特徴を理解してもらう必要があります。紹介会社によっては社内向けの病院説明会を開催してくれるケースがあるので、積極的に活用しましょう。

紹介料率のアップを検討する
先にご紹介した施策を実行しても紹介が来ない場合の最終手段を紹介します。その方法は紹介料率のアップです。通常、医師採用時に年収の20~30%程度を紹介料として紹介会社に支払いますが、紹介料率をアップすることで社内における紹介の優先順位を上げることが可能です。ただし、紹介料率を上げる場合、高額の紹介料を支払うことになりますので、採用の緊急性なども加味しつつ、検討が必要です。

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