2025/03/14/金
寄稿:白衣のバックパッカー放浪記
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目次
ヨーロッパと言っても、そのカバーされる範囲は恐ろしく広いように感じる。ヨーロッパを旅しようと思った時にまず考えなくてはならないことはその旅路を決めることだ。とりあえず一番安くヨーロッパ入りできそうなミュンヘン便だけを予約してみたが、そこから先どうやって進むべきかが定まらない。白衣のバックパッカー放浪記にはアンケート機能をつけてもらっているので、ひとまず読んでみると北欧という単語が目立っていた。確かにミュンヘンから北上していくとフィンランドに辿り着きやすそうだなということは地図を見れば明白だったので、まずは北欧を目指すことにした。
通常夏休みにヨーロッパ旅行へ行こうとすると行き帰りの日数を使ってしまうので、行けても3、4日程度だろう。実際、今まで行ったことがあるヨーロッパの国はベルギーとマルタの2つで、この時も2週間かかった。しかし、今回は比較的時間を取ることができたので、陸続きに連続して旅することができる。旅費も時間も節約できるのは長期旅行者のメリットだと言える。
それから「時間がかかって簡単には行けなさそうなところ」も旅先に入れられることもメリットだろう。そう思いながら地図を見ていると不意にグリーンランドで目が止まった。「グリーンランド…流石に今を逃すと次はいつになるか分からない」と思い、勢いでグリーンランドに行くことを決めた。結果的にヨーロッパでの旅路はルートはミュンヘンからフィンランドを目指し、フィンランドからスカンジナビア半島を西に向かってグリーンランドを目指すこととなった。
数日後、ミュンヘン便でドイツに入国した。ミュンヘン空港は中心地から30km程離れた場所にある、周りに大きな建物がないこざっぱりしたした印象の空港だった。トランジット以外での初ドイツ入国だけにすごく気分が高まるかと思いきや、どことなく真新しい感じはない。空港周辺ということもあるけど、看板が英語で記載されているのでとりあえず市内に行くためのSバーンという電車には乗ることができそうだ。
ミュンヘン国際空港
市内に着いたらさらにさっぱりした感じを受けた。確かにヨーロッパっぽいレンガ造りの建物はあるのだが、大きなビルはなく大きな商店街などもミュンヘン中央駅付近には見当たらないのであった。「明日はプラハに移動するし、ミュンヘンはとりあえず“経由”だから何もなくていいか」と理由をつけてミュンヘンに期待していなかったと自分に言い聞かせてみる。
BMWとかバイエルン・ミュンヘンとか日本でも聞き馴染みがあるくらいだから、すごい栄えた街を想像していただけにどこか勝手に裏切られたような気持ちになった。「とりあえず宿に向かうしかない、荷物を降ろしてしまおう」。宿につけばまた気分が変わるだろうと宿の部屋に通されると、部屋はかなり暗い。その暗さに引っ張られて、少し暗い気持ちになる。ロッカーの鍵も東南アジアでは見たことがないタイプの鍵で、反時計回りに回転する金属がついていて、それを回して自前の南京錠をかけるようだ。微妙に自分の知っていることとか期待からズレたものばかりに当たってしまい、なんとなく幸先が悪い感じがある。何かいいことはないかなと出かけてみることにした。
「基本英語で行けるやろ」と思っていたが、街に出てみると看板がドイツ語のものばかりになってきていることに気づいた。とりあえず何がおすすめかドイツ居住歴のある友達に聞いてみた。すると 「Weißwurstを食べるべし」と返事があった。おすすめそのものが全く読めないという状況で、人生で初めて読まなくてはならないドイツ語となった。とりあえずコピペして調べてみると「白いソーセージ」のことで「ヴァイスヴルスト」と読むらしい。しかも何やら皮を剥いて食べるとのこと。これは食べなくてはと確信して、市街地で店を探すことにした。
しかしどこで食べたらいいのかよく分からない。メニューを見て回っても、Weißwurstの文字が見当たらない。探し方が悪いだけなのかもしれないが、とうとう空腹に負けてしまって、良さげなレストランに入り、ソーセージとビールを飲んだ。空腹だったので美味しいのはそうだが、日本のライオンビールで食べるものと違いがあまり分からない。ただ、ちょっとしたレストランだけど周りの人はみんなビールとソーセージを口に運んでいる。想像通りのドイツレストランの光景に少し希望が出てきた。
「明日午前10時には旅立たなくてはならないから、とりあえず明日の朝がラストチャンスだな」と思い、宿で情報を集めることにした。看板はドイツ語でもスタッフはどこに言っても英語で会話ができるので、言語的には今のところ助かっていた。「Weißwurstが食べたのだけど、どこにいけばいいかな?」「マリエン広場の方に歩いていけば、多分見つかると思う。大きな道を真っ直ぐにいけば辿り着くよ」と教えてくれたので、翌朝駆け込んで、リベンジを果たそうと決意して就寝した。
翌朝、少し早めに起きてマリエン広場を目指す。大きな通りを進むとノイウハウザーという賑やかな通りにでた。「ミュンヘンはこの辺りが栄えているのかもな」と思わせる街並みで、高級ブランドのブティックも並んでいる。少し期待が持てる通りにきたことで安心できたが、いかんせん朝早いので開店している店が少ない。それでもRischartというカフェを見つけ、「Weißwurstはありますか?」と聞くと「もちろん」とのことで、ようやくお目当てにしてミュンヘンの最終地点であるWeißwurstに出会うことができた。
硬めの大きなプレッツェルとお湯を張ったボールの中に白いソーセージを入れて持ってきてくれた。店員が食べ方を指南してくれる訳だが、本当に皮を剥いて食べるらしい。丸い直径2cmはありそうな太めのソーセージの表面はお湯上げされたばかりでツルツルしていた。ナイフでソーセージの長軸方向に割線を入れて、ナイフとフォークで剥離していくが当然のように滑ってしまい、ズボンで受け止める。朝からズボンにWeißwurstの形をした染みができてしまって居た堪れなくなる。
それでも皮を剥き進めて食べてみると、クセがなくうま味が感じられてとても美味しいことが分かった。プレッツェルの方はかなり塩味が効いている。ソーセージと食べるとちょうどいい具合だ。移動前に酒を飲むのもどうかなと思い、カプチーノを啜りながら優雅なヨーロッパ旅最初の朝を過ごすことができた。ミュンヘンに来て良かったと思う瞬間が得られたことが嬉しい。時間が限られているので目と鼻の先にある広場にはいかずに宿に帰って荷物を持ち出した。
念願のWeißwurst。ハニーマスタードをつけて食べる
ミュンヘン中央駅横にあるバス停に向かう。全てはWeißwurstのためと時間がかからないように昨日のうちに下見に行ってから迷うことなく着くことができた。私はバス停に無事着くことができたが、バス自体が時間通りにつかないことが分かった。2時間の遅延、フランクフルトから出発したバスはどういう訳だか遅れているらしい。周りの人に確認してみるが「遅れてるらしいね〜」くらいでよくあることらしい。
外気温は高くはないので外で待つのは困らないけど、プラハでの時間が少なくなってしまうのは困る。周りを見渡すと若いバックパッカーだらけだ。日本で大型バスのバス停に行ってもバックパッカーっぽい若い人はあまりみない。サラリーマンか高齢者ツアーのどちらかをみることが多い。ヨーロッパはたくさん国があるから“バックパックしがい”は確かにあるなと感じる。東南アジアでは東南アジア人バックパッカーにはあまり出くわさなかった。日本だったら新幹線かレンタカーを借りて出かけてしまう。大型バスで移動するのは文化なのかもなと思いながら気長にバスを待っていた。
ミュンヘン中央駅のバスターミナル
次回は3月28日(金)となります。