RECRUIT BLOG
2024/11/26/火
寄稿:メディヴァの歴史
さまざまな人たちと会うなかで、一つのキーワードが頭から離れなくなった。「個性あふれる手作り感」。新しいアイデアを掲げて「この指とまれ」と言い出した人のもとに意欲ある面々が集まり、いくつもの苦難を乗り越えて無人島に新しい街が生まれてきた。メディヴァ、プラタナスという組織の違いも医療職と事務職の垣根も、ときには国境まで軽やかに越える人材や風土が育まれ、創業時の瑞々しさが25年目の今も残っている。
そこには独自の採用や人事評価が一役買っているように見える。では、そうした仕組みが機能し、メディヴァが躍動感を保っている要因は何なのか、そして意図したものなのか知りたいところだ。
創業当初から採用を担当してきた岩崎克治取締役に聞くと、「メディヴァの理念に共感し、やりたいことを実現しようとする人が集結していることが要因だと思う」との回答が返ってきた。誰にも大切にしている思いを自分の力で実現したい欲求があり、そこへ向かうときに最も力が出るというのだ。
創業間もない2004年頃、プラタナスでのクリニックの複数開業やメディヴァへの業務の依頼が重なって増員が必要となり、前職で経験があった岩崎さんが担当することになった。「当初はどんな人をどう採用すれば良いのか分かりませんでした。普通のやり方では無名のベンチャーに人が集まるはずもないですし」と振り返る。いくら事業計画を作っても、人がいなければ絵に描いた餅だと痛感させられた。
辿り着いた答えは「万人にアピールするのではなく、ここに実現したいことがあると強く思う人に入ってもらう」ことだった。先にも紹介した『意味のあることを自分の力で実現したい』という思いに訴えることで優秀な人材は集まると考えた。自社サイトや、求人広告で理念や会社のこと、メディヴァが医療界で実現したいことなどを懸命に発信し、マッチする人に刺さることで相手から見付けてもらう戦略である。
04年と05年にはそれぞれ45人ほどを採用したが、岩崎さん一人で回した。いつも100枚の履歴書を携えて飛び回り、開業前のクリニックの片隅にキャンプ用のテーブルや椅子を持ち込んで、現在は取締役の白根真さんと一緒に面接もした。当時の話はどこを切り取っても手作り感満載である。
06年に小川尚子さんが採用チーム最初のメンバーとして入社したのを皮切りに、採用にあたる社員は増え、現在は9人世帯である。23年度にはメディヴァと子会社のシーズ・ワンで64名、それ以外で115人を採るなど大忙しだが、自社サイトや外部SNS、求人サイトで「マッチする人に刺さる」情報の発信は一貫して最重要な任務である。
今では、医療コンサルでのメディヴァの知名度は上がり、様々な経歴の志願者が会社の門をたたいてくれるが、選考をくぐり抜ける人は数%に過ぎない。「先方がメディヴァにやりたいことを見つけ、こちらも仲間として一緒にやりたい、と双方がマッチする確率は高くない。その人の本質を1時間程度で見極めるのは至難の技です」と話す岩崎さんにとって面接は真剣勝負である。必死に取り組み試行錯誤していく中で、社員の間には鉄板の「あるあるネタ」がいくつも生まれた。
まず、長丁場であること。
「何よりお腹が空いた。10時スタートでお昼近くまでかかった」「面接後に採用担当者から『長かったけど、大丈夫でしたか』と聞かれた」
さらには張り詰めた緊張感。
「終始、『あなたは何ができる人なのか』というトーン。よく採用してもらえた」「あなたの課題はこういうことではないかと、ど真ん中ストレートを投げ込まれた」
「履歴書をもとに折々の進路選択について、なぜそれを選んだのかを尋ねられた」という声もあった。医療・介護の世界を志すきっかけとなった体験や、本当にやりたかったことを思い出して涙を流す人も出る。岩崎さんによれば「大事な選択や出来事、自分の価値観、本当に大切なことなどを振り返ることで琴線に触れることも多い」とのこと。「まるでカウンセリングを受けているようだった」という感想もよく聞く。
一方では志願者に会社の理念や仕組みを説くスタイルも。
「メディヴァの紹介の比重が大きかった。比率は、会社紹介1:志望動機や医療介護への考え方1:経歴1:雑談1」「医療業界の問題について、講演を聞きに行った感覚だった」。ここには、こちらから語りかけて反応を見極める狙いもあるのではないか。
「ご縁がない人の方が多いが、その方達にプラスになることを常に考えている。一緒に真の価値観を発見したり、外から見えることをフィードバックしたり。悩みの相談に乗ることもあります」。就活生に悪評高い圧迫面接ではなく、受験する側の考えに真正面から向き合った結果が、さまざまな逸話となって後輩に伝えられているようだ。「個性が強い、でも素敵な面接」というのは、ある中堅社員が漏らした感想だ。
この関門の先にマネージャーや役員との面接が待ち構えているが、一次面接とは趣が異なることも少なくない。仕事内容を理解してもらったり、経験値を吟味したり、マネージャーとの相性を見極めたりと、面接ごとに目的が設定される。
「社長面接だ」と身構えたところ、最初に大石さんに言われたのは「聞きたいことは何。なんでも答えますよ」。大いに面食らったという幹部社員の証言もある。社長に会って人柄を感じてもらえれば入社意欲が高まるし、社長から仕事に対する考え方、疑問に対する回答を聞けば、これ以上の納得感はないという戦略か。
採りたいのは「目的に向かう人」「effective(効果的)な人」である。前者は働く姿勢や意欲を問うている。「仕事において、自己保身や失敗への言い訳などを抜きに純粋に目的に向かえる人は滅多にいない」という岩崎さんが、創業当初から、信頼して背中を預けられる仲間を求めてきての実感である。後者は備わった能力や果たすべき機能を問うている。与えられた仕事を見栄え良くこなすのではなく「本当に意味のあることを実現できる」能力を探ることになる。
硬軟両様の面接もそうした視点で見ると納得できる。それでも「effective」という表現は分かりにくい。そこで、今年4月の入職者研修で岩崎さんが持ち出した例え話を紹介しておこう。車で言えばEffectiveの対極にあるのは「めちゃくちゃスタイリングがカッコよくて馬力・トルクもすごいんだけど、燃費が悪く安定性も低く、故障ばかり。目立つからよく速度違反で捕まるようなクルマ」だそうである。
入社後の人事や評価については次回に取り上げることにする。
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(お知らせ)
文中にも紹介した採用チームの初代メンバー小川尚子さんは、残念ながら11月6日に亡くなられました。今日の採用システムが確立する過程を知る方だけにお話を伺いたいと思い、岩崎さんに仲立ちをお願いした矢先の訃報でした。5月までは普段通りに仕事をされていましたが、検査で異常が発見された後、5ヶ月で病気が一気に進行してしまいました。
2年前に小川さんが部門内のアンケートに回答された「採用の仕事の実感」を岩崎さんから教えていただきました。溌剌と仕事をされてきた日々の思いが込められています。岩崎さんの了解を得て故人が残されたメッセージを再録します。
〈採用の仕事をしていると、様々な人や場面に出会いますが、本音を言ってもらえないこともかなりあって、そこに慣れるまでは大変でした。
例えば「御社が第一志望で他は受けていません」と言っていた人があっさり他社に内定したので辞退したいと言ってこられることもあります。(中略)
少し人間不信のような感覚を持つこともありましたが、皆さんそれだけ懸命に転職活動をしていらっしゃるのだろうと受け止めるようになりました。
少し寂しくも感じますが、それでも入職された方々が活躍されている姿を見た時に頑張って良かったと感じるし、社員として会社の側だけに立つのではなく、候補者と会社の間をうまく取り持って、お互いに満足のいく採用活動のサポートが出来た時はこの仕事をしていて良かったと感じます。
「小川さんが担当だったから入社を決めました」と言っていただけることもあり、そういう時には本当に嬉しいと感じます。〉
心からご冥福をお祈りいたします。