2019/06/06/木

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

高齢者は新技術に興味津々

6月に入り、一気に暑くなりましたね。今年は来週あたりから梅雨でしょうか。1年ほど前からゴルフを始めたので、週末に雨降ると困ります。とは言いつつ、そんなには回ってないんですけどね、、、。

さて、メディヴァでは慶応大学のメディアデザイン研究科(KMD)という大学院と共同で、新しいテクノロジーを用いて高齢者が住みやすい世界を作っていくのかを研究しています。コンセプトは「ぽじえじ」(Positive Aging)で、うちで展開しているデイサービスと同じ名前ですが、「いくつになっても自分らしく、楽しむ」ことを意味した造語です。(私が名付けました。)

KMDで研究しているのは、VR、AR、ロボットやハプティックという振動や感覚を伝える技術です。学生さんがこれらの技術を使って作った試作品を高齢者住宅や地域に持ち込んで、高齢者にトライしてもらいます。この大学院の学生は半分が留学生なので、アメリカ人、中国人等多彩です。日本語が堪能な人もいますし、カタコトの人もいます。

実際トライアルして驚いたのは、高齢者の反応です。トライして下さる方の中には認知症の方も、車いすの方もいます。高齢者は新技術に興味がないのでは?とか、VRのようなものは危ないのではないか?と心配したのでが、実際は驚くほど興味をもってくれました。
しかも、大人し目のものではなく、危険な感じのものほどウケたんですね。

最もウケたものは、VR眼鏡を掛けて首や体に感覚を伝える器具をつけて上を向くと、あたかもシャワーに入っているような感じになる器械。これは当初、上を向くし、仮想現実だし、危ないから封印しようという意見も出ていたほど。車いすのおばあちゃんが、杖をついたおじいちゃんを誘って、列が出来ていました。これ以外にも、山の中を歩く画像と共に、落ち葉を踏み分けるような触感が伝わる映像や、タップダンスを踊る映像に合わせて地面に振動が伝わるものなのが、好評でした。

一方、思い出の中に住むネコを撫でると鳴いてくれる手作り絵本とか、自分の過去や好きなものを振り返るものも好評でした。何であったか、何が好きか、どうしたいかを高齢者自身が語るきっかけになりました。留学生と流ちょうに英語で会話する高齢者も出てきて、施設の介護士さんも、ご利用者の新たな一面に触れてびっくり、という場面もありました。

良く考えてみれば、自分たちも今も年をとってもハラハラ、ドキドキしたいじゃないですか。今の高齢者もそうなんだ!と無意識に引いていた心の境界線を知った気がします。このような技術をどう社会実装するのか、引き続き研究しますので、またご報告させてください。