2019/04/11/木
大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」
今年は暖かくなったり、寒くなったりで不思議な春ですね。4月の初めに山形に旅行に行った息子は雪に遭遇していました。寒暖の差が激しいと体調を崩される方が多いですが、桜の花が長持ちするのがいいところでしょうか。
さて、今回は最近学んだことを共有させて頂きます。
以前より「夜間介護は、欧州では50対1、日本は15対1」と介護の生産性について述べてきました。1人で50人を看るのと、15人を看るのでは3倍の差があります。この差はどこから来るのか?一つの要因は見守りセンサー等のICTやテクノロジーの活用でした。もう一つは、適切なアセスメントと言われていましたが、先日排泄コントロールについて具体的な話を聞きました。(食事中には、読まないでください。)
夜間に介護職が巡回して行う仕事に、排泄チェックとオムツ交換があります。排尿・排便していて、明け方まで放置するのは本人にとって気持ち悪く、体にも良くありません。これを防ぐため、頻回に巡回し、オムツを開け、必要があれば交換をします。
しかしながら、実は排便はきちんとしたアセスメントと介入によりコントロールすることができます。排便回数や状態をアセスメントシートに基づき、チェックし、何が問題かを特定します。そもそも夜中に寝ている間に排便することは不自然で、下剤が効きすぎているなど介入方法の問題が推測されます。きちんと排便できるよう、食事、水分、運動によって適切な腸内フローラ状況を作るようにします。 また排尿に関しては、適切なオムツの使用によって交換回数を減らすことが出来ます。
そもそも欧米と日本では、オムツの形状や使い方が大きく異なるそうです。日本は、漏れを防ぎ、交換を容易にするように、複数枚のオムツを重ね着します。精神病院とかでは、驚異の8枚重ねなどがあるそうです。高齢者のお尻のあたりがモコモコしているのは、オムツで膨れ上がっているから。男性の場合は、更に陰部を三角に畳んだオムツで巻きます。(巻かれている場面を想像すると、男性の方は衝撃を受けますね、、、。)
北欧製のオムツは、腰にベルトのようなもので止めて、前に回したオムツが一枚。もしくはそれに加えて、パッドのようなものが追加で1枚。さらに簡単な場合は、一枚を当てて、薄い専用パンツを履きます。少ない枚数でも漏れないよう、高性能になっているようです。またいずれも、トイレに誘導した時、簡単に外せて自力で排泄できます。
さて、気になる交換回数ですが、まず適切な排泄コントロールと高吸収オムツを使うことにより、交換回数は7回から3回に減りました。夜間の交換はゼロです。これなら、夜間の介護人員も減らせるし、本人も熟睡できます。コストは、北欧のが当然高いのですが、使用枚数が減るのと、交換にかかる人件費や廃棄費を比べると却って下がることもあるそうです。
生産性やコストもさることながら、設計思想の差が最も気になりました。日本のオムツは、寝ている方の交換を容易にする前提です。北欧は自立してもらい、トイレに誘導する前提で作っています。私が要介護になるまでに、北欧型が広く普及するといいのですが、、、。皆様はどう思われます?
執筆:大石佳能子(株式会社メディヴァ代表取締役)