2020/10/13/火

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

オンライン診療の患者メリットは年間30億時間!

一気に寒くなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
私は、最近やたらセミナー、講演が多くて大変なことになっています。テーマは、全部バラバラ。規制改革、医療DX、オンライン診療、健康経営、コロナ禍の医療機関経営、医療業界のあり方、私の軌跡、等々。元々、講演屋さんじゃないので、お役に立つならと受けてますが、さす、さすが泣きそう。
しかも、規制改革推進会議の2期目が始まりました。総理が替わって、やおらマジに。
テーマとしては、オンライン診療の恒久化と、プログラム医療機器の承認報酬、等々。
ところで、オンライン診療絡みで気になったことがあります。
オンライン診療で、医療現場は「効率化」しません。なので、オンライン診療を普及させるだけで「国民医療費が下がる」ことはありません。
先日の講演会で質問を受けたのと、規制改革推進会議の事務局とやりとりをしていて、一般的に思われていることと、医療現場の実感の差を感じました。
実際のところ、オンライン診療は医療現場にとって手間は増えて、効率は落ちます。
対面診療ならば「次の患者さん~」と呼べば、次々に診ることができます。オンライン機器などをセットする必要もありません。
オンライン診療を実際やってみると、
・患者さんを呼び出しても応答無しだったり、
・照明が暗くてよく見えなかったり
・患者さん側のWi-Fiが弱かったり、、、
トラブルはそこそこあります。
普通の診療だったら5~10分で終わるものが、15~30分掛かることも。
ざっくりいうと2~3倍時間が掛かる感覚です。
医療機関は固定費型の事業です。施設費、機材費、人件費が重たく、稼働率と単価が命。
現場の先生が、オンライン診療を嫌がるのは、まずは報酬が安いから。
コロナの緊急措置前は、対面の半分でした。
緊急措置下でも、70~80%。 
効率が悪い上に、単価も安い。最悪ですね。
オンライン診療で医療現場のコストが下がることはなく、むしろ効率と単価が落ちることにより、上がってしまいます。
このため、「オンライン診療が普及」→「コストが下がる」→「国民医療費が下がる」、、は幻想。
※オンライン診療の方が、対面より単価が低いから、国民医療費が下がる、、というのは長期的には医療機関を潰すので、別の話とします。
では、オンライン診療は意味がないのか?
そうは言っていません。
実は患者さん側は、とても効率化します。
診察を受けるために時間を掛けて来院し、待合室に座り、終わったら会計、薬を待ち、また帰る。
この時間を大幅に短縮します。その時間を仕事や家事や育児に向けることができます。
厚生労働省の社会医療診療行為別統計によると、1ヶ月に約1億人が外来に掛かっています。
仮に外来に掛かるために使っている時間を3時間とすると、1億x12ヶ月x3時間で、年間36億時間(41万年)も外来診療に費やしてます!
仮に、これが30分に短縮出来るなら、、、30億時間(34万年)分の時間が浮きます。
医療機関の効率が落ちるのをカバーするには単価を上げること。
国全体の生産性を上げるために、オンライン診療の診療報酬を対面の倍に上げて、経済誘導してもいいんじゃないでしょうか?
皆さまはどう思われます?またご意見頂けると幸いです。