2022/03/16/水

医療・ヘルスケア事業の現場から

2022年度診療報酬・オンライン診療に関して ~初診時の流れ~

~はじめに~

2022年4月の診療報酬改定にむけ、本コラム執筆時の3月上旬時点で短冊・答申などが出そろい、おおよその改定内容がみえてきた。今回は、その中で外来におけるオンライン診療について、特に初診からの流れを中心に述べたいと思う。

オンライン診療は、オンライン診療料として2018年度診療報酬改定で新設された。しかし、初診対面要件や、医療機関と患者の距離要件、対面診療とくらべ低い点数設定などのため、算定はあまり進まなかった。その後、2020年度診療報酬改定において、様々な管理料が設定されたが、やはりその点数が対面診療の管理料と比較し、高くないことなどから、オンライン診療料の届出医療機関は伸び悩んだ。

しかし、コロナ禍になり、初診対面要件などの規制が緩和され、オンライン診療が一気に進んだ。ここで診療報酬上のオンライン診療を定義すると、2022年3月時点でコロナ禍における規制が緩和されたオンライン診療とオンライン診療“料”を算定するオンライン診療は別のもととなる。簡単に整理をすると下記となる。

 

(2022年度改定前)オンライン診療の分類

(特例下のオンライン診療)
コロナ禍で規制が緩和されたオンライン診療

「特例」における電話やICTツールを使用した診療。初診から電話やICTツールを使用した診療が可能。初診料・再診料等を算定。
初診料214点、再診料(電話等再診料)73点
(従来のオンライン診療)
オンライン診療”料”を算定するオンライン診療
オンライン診療料を算定するICTツールを使用した診療(電話は不可)。厚生局に届出が必要で、初診は対面で実施する等の要件あり。
オンライン診療料71点

2022年度改定では、このうちオンライン診療料が初診料等に組み込まれる形となる。

~オンライン診療料が廃止され、初診料等に再編~

2022年度改定では、オンライン診療料という名称が廃止され、情報通信機器を用いた場合の診療として初診料等に組み込まれ、それぞれ下記の名称となる。

  • 初診料(情報通信機器を用いた場合)251点
  • 再診料(情報通信機器を用いた場合) 73 点
  • 外来診療料(情報通信機器を用いた場合)73点

初診料に関して、点数は特例下のオンライン診療での初診料と比較し、214点→251点となった(再診料および外来診療料は対面での診察と同等程度の点数)。また、管理料に関しても、「情報通信機器を用いた場合」として、多くの項目に組み込まれた(下記参照)。

 2022年度改定で「情報通信機器を用いた場合」が設定される管理料
名称 (点数)特定疾患療養管理料:196点・128点・76点(225点・147点・87点)
小児科療養指導料:235点(270点)てんかん指導料:218点(250点)
難病外来指導管理料:235点(270点)
糖尿病透析予防指導管理料:305点(350点)
ウイルス疾患指導料:209点・287点(240点・330点)
皮膚科特定疾患指導管理料:218点・87点(250点・100点)
小児悪性腫瘍患者指導管理料:479点(550点)
がん性疼痛緩和指導管理料:174点(200点)
がん患者指導管理料:174点・261点・435点(200点・300点・500点)
外来緩和ケア管理料:252 点(290点)
移植後患者指導管理料:261点(300点)
腎代替療法指導管理料:435点(500点)
乳幼児育児栄養指導料:113点(130点)
療養・就労両立支援指導料:348点・696点(400点・800点)
がん治療連携計画策定料2:261点(300点)
外来がん患者在宅連携指導料:435点(500点)
肝炎インターフェロン治療計画料:609点(700点)
薬剤総合評価調整管理料:218点(250点)              
*括弧内は対面診療実施時の点数

なお、採血の検査等が包括されている管理料(地域包括診療料や生活習慣病管理料等)や精神、救急などに関しての管理料は、対面による診療を前提としているため、これらの管理料の対象外となった。

今回の改定における点数は、中医協の公益裁定等を経て、対面診療における点数の87%程度に設定された。これにより、点数が低いためオンライン診療を実施していなかった医療機関は、その参入が進む可能性があると思われる。

注意点としては、この情報通信機器を用いた初診料・同再診料・同外来診療料を算定する際は、厚生局への届出が必要となるため、留意して頂きたい。

~オンラインによる初診までのフロー~

ここからは混同をさけるため、2022年度改定で設定されたオンライン診療(初診料(情報通信機器を用いた場合)・同再診料等)について、「2022年度改定オンライン診療」と記載する。

【本文における名称定義】

  • 特例下のオンライン診療:コロナ禍で規制が緩和されたオンライン診療
  • 2022年度改定オンライン診療:2022年度改定で新設された初診料(情報通信機器を用いた場合)を算定するオンライン診療
  • 従来のオンライン診療:2020年度改定のオンライン診療料を算定するオンライン診療

はじめに、2022年度改定オンライン診療の診療報酬上の要件を確認すると、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」というワードが多く記載されている。この指針は厚労省で作成されたオンライン診療実施に際して、遵守すべき指針であるが、2022年1月に最新のものが発出されているため、2022年改定オンライン診療を検討されている医療機関は必ず目を通して頂きたい(2022年3月時点)。

2022年度改定オンライン診療では、初診からオンラインでの診療を実施するにあたり、初回受診時の流れが整理され、結果として特例下のオンライン診療や従来のオンライン診療と異なる要件となった。基本的な流れを示す。

【2022年度改定オンライン診療の初診における流れ】

①患者合意

2022年度改定オンライン診療を実施するにあたり、事前に患者-医師間の信頼関係の構築等を目的として、以下の項目を説明した上で、合意を形成することが必要になる。

【事前の合意にあたっての説明事項】

  • 触診等を行うことができない等の理由により、オンライン診療で得られる
    情報は限られていることから、対面診療を組み合わせる必要があること
  • オンライン診療を実施する都度、医師がオンライン診療の実施の可否を
    判断すること
  • 「診療計画」(後述)に含まれる事項

説明事項は上記の3つになるが、後述する(ウ)の「診療計画」には9項目の記載が求められているため、実質にはさらに多くの項目の同意が必要となる。
また、この合意形成の実施の仕方は、やや解釈が難しい点がある。指針上には「患者がオンライン診療を希望する旨を明示的に確認すること」とあり、指針にかかるQ&Aには「留意事項の説明がなされた文書等を用いて患者がオンライン診療を希望する旨を書面(電子データを含む。)において署名等をしてもらうこと」とある。そのため、患者側からの署名等が必要となるが、直筆での署名ではオンラインの意味がなくなるため、医療機関にオンライン診療の予約を取る際、HP上での説明事項の提示と同意欄をクリックすることで要件を満たす、などの方法が考えられるが、今後の疑義解釈を待ちたい。ただし、いずれにせよ特例下のオンライン診療実施にあたり、電話で予約を受け付けていた医療機関は、「署名等をしてもらうこと」が困難になるため、HPの改修などが必要となる。

②診療前相談

オンライン診療は基本的にかかりつけ医による実施が求められているが、2022年度改定オンライン診療では、受診歴のない患者に対しての初診からのオンライン診療実施について整理された。単純化すると、受診歴のない患者に対して、

  • 他院からの診療情報提供書など必要な医学的情報(*)があれば、初診からオンラインでの診療可能
  • 必要な医学的情報(*)がない場合、患者-医師間で診療前相談を実施し、その結果医師が可能と判断した場合は、オンラインでの診療可能
    (*)過去の診療録、診療情報提供書、健康診断結果、地域医療情報ネットワーク、お薬手帳、Personal Health Record等

③診療計画

要件上、2022年度改定オンライン診療の実施前に必要な手続きの最後は診療計画の説明と同意となる。診療計画は安全性の担保及び質の確保・向上や、利便性の向上を図る観点から、医師-患者間のルールについて記載されたものであり、医師はこの診療計画を患者に説明し、患者の同意を得る必要がある。その内容は指針で定められており、全部で9項目となっている。

【診療計画の内容】

  • 具体的な診療内容(疾病名、治療内容等)
  • オンライン診療と直接の対面診療、検査の組み合わせに関する事項(頻度やタイミング等)
  • 診療時間に関する事項(予約制等)
  • 使用する情報通信機器等
  • オンライン診療を行わないと判断する条件と、条件に該当した場合に直接の対面診療に切り替える旨(情報通信環境の障害等によりオンライン診療を行うことができなくなる場合を含む。)
  • 触診等ができないこと等により得られる情報が限られることを踏まえ、患者が診察に対し積極的に協力する必要がある旨
  • 急病急変時の対応方針(自らが対応できない疾患等の場合は、対応できる医療機関の明示)
  • 複数の医師がオンライン診療を実施する予定がある場合は、その医師の氏名及びどのような場合にどの医師がオンライン診療を行うかの明示
  • 情報漏洩等のリスクを踏まえて、セキュリティリスクに関する責任の範囲及びそのとぎれがないこと等の明示

 

診療計画作成の留意点としては、急変時の対応方針を記載する際、対応する医療機関名を明示する必要があるため、実務的にはある程度、患者住所地に応じた医療機関名の記載が必要と考えられるが、実際にどのような形が認められるか疑義解釈等を待ちたいと思う。

またオンライン診療に関わる医師は全員、診療計画に記載する必要があるため、複数名の医師(非常勤含む)により2022年改定オンライン診療を実施する場合は、診療計画策定の際に注意が必要となる。

2022年度改定オンライン診療における初診からの流れは以上になるが、あらためて診療報酬上はその他にも多くの要件が設定されているため、もし検討されている場合は、診療報酬上の要件だけでなく、指針にも必ず目を通して頂きたい。

診療計画作成の留意点としては、急変時の対応方針を記載する際、対応する医療機関名を明示する必要があるため、実務的にはある程度、患者住所地に応じた医療機関名の記載が必要と考えられるが、実際にどのような形が認められるか疑義解釈等を待ちたいと思う。

またオンライン診療に関わる医師は全員、診療計画に記載する必要があるため、複数名の医師(非常勤含む)により2022年改定オンライン診療を実施する場合は、診療計画策定の際に注意が必要となる。

2022年度改定オンライン診療における初診からの流れは以上になるが、あらためて診療報酬上はその他にも多くの要件が設定されているため、もし検討されている場合は、診療報酬上の要件だけでなく、指針にも必ず目を通して頂きたい。

医師兼コンサルタント
久富護